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オラ知んね

――天蛇の塔

 騎士団一行と俺は、各部屋を探しつつ、塔を進んでいく。

 しかし、アーミルは見当たらない。

 う〜む、一通り部屋は探してるハズなんだがな。

 そうする間に、俺達は最上階へと到達しちまった。

 そして目の前の扉をくぐれば、ラスディンの研究室だ。

 ここが最後。つまり、この部屋の中にアーミルと、彼を操っているヤツがいるハズだが……。

 騎士団一行のリーダー格が扉を開いた。


「……!」


 しかしそこには誰もいない。


「バカな!? ヤツは一体? どこに隠れた!」


 騎士団は部屋を見回わし、アーミルを探し始めた。

 おい、無造作に家具ひっくり返すなや。

 とはいえ変にとがめたりすると、“混乱”の効果が切れちまう可能性があるしな。

 仕方なく俺も探すフリをする。無論、荒っぽいコトはせんがな。

 と、騎士の一人が納戸を開ける。そこはもうナニも入ってなかった気がするが……ン?

 納戸の奥の壁が何かヘンだ。

 前は気付かなかったが、何か歪んでる。

 つか、騎士団連中が家捜しした時にテキトーにモノを突っ込んだか何かで、壁が痛んでるのか? ナンかブチ当てたよーな凹みもあるし。

 近づき、中を覗く。

 ナニやら壁に隙間が見える。

 って、この奥にも空間があるよーナンだが。……そーいや間取りからして、何らかの空間があってもよさそーナンだよナ。

 まー、隙間の向こうは真っ暗なトコロからして、人が入るよーな場所じゃねぇよナ。開けちゃってもいーか。もしかして、ヘソクリの類が入ってたりとか?

 とりあえずさっきの騎士に手伝ってもらい、壁をはがす。

 と……


「!」


 そこには全高2mほどの巨大な円筒形の水槽が鎮座していた。

 水槽を液体が満たしている。そしてその中に浮かぶ、一つの影。


「コイツは……」


 何らかの生物の標本らしい。しかし、通常の野生生物じゃない。むしろ、魔物の類だろう。それもあのスノリゴスター強化型と似ている。おそらく製作者は同じだろーナ。やはり騎士団顧問がフィルズ・ロスタミを使い、この塔を襲わせたのか!?


「どうした?」


 先刻の騎士が問うて来る。


「いや……ずいぶんグロい化け物だな、と」

「ああ。……昔はこの辺りでこんなヤツが出没したって話だな。二十年ぐらいか前の話だ。その標本じゃないか?」

「なるほど……」


 そんなんがいたんか、この辺に。二十年前っつーコトは、魔王戦役勃発前か。


「おい、何してる! 早くヤツを探せ」


 別の騎士の声。


「ああ、スマン」


 俺は慌てて探すフリを再開した。チッ、アレの“識別”は隙を見てやるしかねェか。


「……ン?」


 一瞬視界の隅で何かが動いた気がするが……気のせいか? どうも水槽の中っぽいが……

 確認すべきか?

 そう思った直後、また外で音がする。そして、何やら声も。


「サムエル隊長が来られたか。何としてでもヤツを探し出さねばな」


 と、窓の外をのぞいた騎士の一人が言う。

 うげっ、増援かよ。ナンとかうまいコトそっちにも“混乱”をかけれりゃいいが……


「なぁ、もしかして、途中の部屋に潜んでるとかいうコトは無いか? あんな感じの隠し部屋とかあってさ」


 騎士の一人に問うてみる。


「そうかもしれんな。……ジョエル、モーシュ! もう一度下の部屋を確認してくれ!」

「ハッ!」

「了解!」


 答えると、二人の騎士が階段を降りていった。

 あ〜、俺が行くつもりだったんだがな。で、途中でサムエル隊長とやらを待ち伏せして“混乱”をかける予定が……

 ま、いいや。何とかなるだろう。



――しばし後

 そして階段を上がって来る人影三つ。

 ……来たな。

 俺はさりげなく扉の脇に立つ。

 そして、三人が入って来た直後……


「“混乱”!」


 ……どうだ?

 三人の騎士は、虚ろな目で周囲を見回す。

 そして、俺を見……

 ゲッ……コイツ、俺を見とがめた騎士じゃねーか。それに、後ろにいるのはバラハとヒラムかよ!

 まぁ薄暗いから気づかれんだろう。


「お疲れ様です、隊長!」


 動揺を顔に出さない様に気をつけつつ、挨拶。


「ウム、ご苦労」


 サムエルは答え、部屋の中央へと進み……

 上手くいった?

 へへっ、コレで一安心。

 と、ヤツはもう一度俺を見た。


「む? そういえば、貴様……」


 うげっ!? バレた?


「セルキア神殿に現れた異界人!」

「……へ?」


 ななななナンでンなコトまでバレてんだよ!


「エヴノ隊長の仇!」


 へ? エヴノ? 誰だよソレ。

 つか、そう叫んだバラハは逃げ腰になってやがる。

 ……あー、異界人討伐に失敗したとかいう元隊長だっけ? 確か前回こっちに来た時にその名前を聞いたな。一度失敗して魔物に改造されちまったんだっけか。


「そして姫巫女エルリアーナを拐かした外道!」

「へ? ……って、オイ! 俺じゃねぇよ!」


 ナンでそーなる? 今連れてるのはエスリーンだよ! 姫巫女の資格はあるケド別人だ! もう予想外すぎる展開でナニがナンだか……。

 どーいうワケか、“勇者”と俺を混同してるみてェだな。

 つか、ドンだけ恨み買ってんだ、勇者とやらよ……。


「そうか。貴様が賊だったとはな。丁度い。ここで斬り捨ててくれる」


 先遣部隊のリーダー格が憎々しげに俺を見、剣を抜いた。


「オイオイ……」


 捕縛するんじゃねーのかよ。

 ……仕方ねェ。

 俺もまたサーベルを抜いた。

 刀身がカンテラの光を浴び、まばゆい光を放つ。


「まさか……あれが、聖剣クルトエルカ!? エヴノ隊長から奪ったという……」


 それを見て、騎士達は後退った。


「へ? そーなん?」


 思わず問い返す。

 確かクルトエルカって、勇者ヴァルスの父イルムザールが持ってたヤツだろ? ナンで聖堂騎士団のヤツなんぞが持ってんのさ? ま、コイツら叩きのめした後、聞き出しゃいーゲドな。つかさ……


「ケドこれ曲刀だべ? アンタらのいう聖剣とは違くね?」


 確かゲームのグラじゃ剣だったモンな。や、ホントはどーか知らんケドな。


「……と、とにかくだ。コヤツは賊! 即刻斬り捨ててしまえ!」


 しばしの硬直の後、サムエルが剣を抜き、部下に指示を出した。

 ちょっ、結局そーなんのかよ!

 強烈な殺気。手加減出来そーにねェ。

 クソッ!


「先に手ェ出したンはアンタらだかんな! 死んでも化けて出んなよ!」


 斬りかかってくる騎士に、逆袈裟の一撃。

 血飛沫。そして、絶叫。

 ヤな感触だ。だがここで躊躇ったら、俺もアーミルも死んじまう。


「おぉっ!」


 横から斬りかかってくる騎士。

 剣を跳ね上げて身体を泳がせ、空いた胴に一撃。倒れるヤツに一つ目をくれると、刀身の血を振り払う。


「くっ……」


 ヤツらは幾らか怯んだ様だ。

 勇者サンよ。何者だか知らんが、威を借るぜ?


「へっ、アンタらはあのエヴノとやらより強いんかい? クク……楽しみだな。さあ、死合おうじゃねぇか」


 サーベルを構え、見得を切る。

 無論ハッタリだ。これで引いてくれりゃあ……


「斬れ! 斬り捨てろ! こやつを斬らねば、我らの未来は無い!」


 サムエルが剣を振りかざし、叫んだ。

 えっ、ちょっ……って、逆効果かよ! カンベンしてくれや〜。

 斬りかかってくる騎士達の剣をバックステップでかわす。

 そして、


「“雷陣”!」


 雷系の範囲魔法をぶちかましてやる。


「ぬぅ!」

「ぐあぁっ!?」


 騎士達の絶叫。

 ヤツらは次々と倒れ臥す。

 これで隙が出来たか?

 俺は脱出すべく、階段の方へ……


「“光弾”!」


 チッ! 上手いコト魔法の攻撃範囲から逃れてたヤツがいたか!

 サーベルで迫る光の弾丸を次々に斬り払い……


「ぐおっ!?」

「ぎゃあぁ!」


 って、味方にもヒットしとるがな。オイオイ。

 つか、そのうち一発があの巨大な水槽にぶち当たる。そしてガラスが砕け……。

 あ〜あ……オラ知んね。

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