戻って来ちまったか
――食後
「ふぅ……美味かった」
大サソリがこれほど美味くなるとはな。結構お高いカニとかエビとかの料理に匹敵する味じゃねーかな?
ま、そんなモンほとんど食べたコトねーケド……。
「ありがとうございます。これが取り柄のようなものですし」
謙遜するアーミル。
いや、動物の扱いとか色々あるだろーがよ。体力関連のステイタスはアレだけどさ。
……どっちかっつーと、婿より嫁に向いたタイプかもしれん。
『ふむ。君は男もいけるクチなのか』
ヲイ。リラよ、そーいうコト言うのは止めてくれぃ。って、エスリーンはフクザツなカオで俺を見てやがるし。
と、とにかく、だ。片付けたらリシュートに向かおう。
頼まれた食材のコトを考えなきゃな。明日明後日と狩をしなきゃならんワケだし。
それよりもまず、大八車を置く場所を確保せんといかんしな。
まーでも、アーミルがいるおかげで、今回の遠出は色々楽になりそーだな。
やっぱ仲間っていいねぇ。学校の友人とかは、ある意味馴れ合ってるだけみたいなモンだし、命を預けられる様な相手じゃねェからな……。
――そして、約二時間後
遠方にリシュートの城壁と緑の森がかすかに見える。そして、天蛇の塔も。
……戻って来ちまったか。
チラとエスリーンを見る。
やはり複雑な思いを抱いているのか、やや伏し目がちだ。
だが今回の目的は、狩りだ。大サソリとイモムシを狩るだけ狩って帰ればいい。
……あ、そーいやヤツがナンか言ってたな。
まーそれは時間があったらでいーや。
と、その時、
「……ン?」
黒い影が大地を駆け抜けていった。
「え? アレ?」
鳥? にしちゃデカいよな。しかも、かなりのスピードだ。
上を見上げる。が、ただ空があるだけだ。対応の周囲には雲すらねェ。
「今のは一体?」
思わず呟いた。
「“影の鳥”よ」
と、エスリーン。
「……何ソレ」
「大昔、龍を食らうという巨鳥が神々と戦って破れ、異界に放逐されたという伝説があるわ。あれは、その巨鳥がこの世に残した影と言われてるの」
「へぇ……そーなんだ」
巨鳥、ね。地球の神話では、ガルーダとかロック鳥とかいるな。まぁ、ゲームで知った知識だが……。あとは、アルなんたらとかいうデカい鳥が、数百万年前にいたんだっけ?
「……子供でも知ってるおとぎ話よ?」
と、エスリーン。
「う……む」
ハイハイ、俺はどーせ蛮族ですよ、と。
そんな話、あのゲーム内では聞かなかったからな〜。まー、ストーリに直接関係ない話だからか。
にしても……蛮族扱いは納得いかん。俺が異界人であるコトを、エスリーンに明かすべきかどーか……。
待て。“異界”に追放? ってコトは、地球へ? でもあんなバカでかい鳥なんていねーぜ?
ああやって現れてるってコトは、まだ生きてるってワケだしな。
って、“異界”は地球に限ったワケじゃないか。他にも異世界はあるかもしれんしな。
「ああ、そうだ。確か聖堂騎士団の連中が異界人狩りをしてただろ? あれって、その世界からやって来るんかな?」
とりあえず話を振ってみる。
「そんなの分からないわよ。狩られた人達が本当に異界人だったかどうかすら不明なのに」
「そ、そうなんだ……」
う〜む。てっきり確証があってやってるんかと思ったが。魔女狩りと一緒かい。
「異界人の事に興味があるんですか?」
と、アーミル。
「まぁ、ね。あーいう連中が狩ろうとしている異界人って、どーいうヤツなんか気になるじゃん?」
「なるほど……」
アーミルは一瞬考え込んだようなそぶりを見せる。が、すぐに顔を上げ、俺を見た。
「これは……あまり話してはいけない事なのですが、どうやら実際に相当数の異界人がこの地に来ている様なのです」
「えっ、そうなの!?」
驚くエスリーン。
「……なるほど」
まぁ、異界人の俺がここにいる以上、そーいう輩は沢山いるのかもな。一人見つけたら百人ぐらいはいるとか?
「ええ。魔王を倒した勇者一行に、異界人が混ざっていたという話も聞きました」
「え? ……誰、それ」
勇者とか、通常のメンツじゃねーよな。仲間はある程度出自がはっきりしていたワケだし。
あるとすれば、謎の五人目か。
『この世界の秩序の外にある存在』とか言われてたっけか?
実在したんか。
「“戦士の館”で聞いた噂ですよ。魔王戦役の最終局面で勇者一行に加わった人物がいたとか。彼はセルギア神殿に現れたそうですが、そこは時折異界へと繋がる門が開くとか」
「そ、そうなんだ」
俺もそこに転移してきたワケで……やっぱしそいつも異界人か。
「その人物が、“戦士の館”の設立に関わったと噂されています。あくまでも、噂ですが」
「ふむ……」
だとすれば、アカシックレコードに“戦士の館”についての情報が登録されていない理由が説明出来るな。おそらく異界人はこの世界の運命律に囚われていないから、データベースから漏れちまっているんだ。そしてそいつが関わった“戦士の館”も……。
「……ソースケ、何か気になることでもあるの?」
と、エスリーン。
うーむ、どう説明すべきか?
「いや、そんな連中がこの世界に沢山やってきたら、どうなっちまうのかな、と」
「神魔王バルドスの時と同じ事が起きるのかもしれないわ」
「神魔王バルドス、か。何が起きたん?」
確かイナゴかナンかの化身だっけ? その辺のコトについてはよくワカラン。後で検索かけとこ。
つか、色々ボロ出しすぎだろ、俺。異界人ネタなのに。
「遥かな昔、異界から魔神がやってきて、この世界を混乱に陥れたということがあったらしいの。魔神はこの世界の運命律を狂わせてしまう存在。死すべき人が死なず、死んではならない人が死んだ。その結果、地上には不死者が溢れた……」
「え? ちょっ、そーなっちまうのか?」
まさか、死ぬべき運命にないフィルズ・ロスタミ殺っちまった!? マズくね?
『まぁ、あれぐらいなら良いんではないかな?』
『……アバウトだな、リラ』
『猫にしては几帳面な方だと思っているのだがな』
『そ、そうか……』
……などとイラん雑談を念話でする。
「聴いてる?」
「オウ。もちろんだぜ」
「そう……」
疑い深い目を向けてくるエスリーン。
でも、聴いていたのは事実だしな。
「ならいいけど。その後、バルドスは天空神アルジェダートによって時空の彼方に封じられたらしいの。そこが、セルキア神殿」
「え? あそこ!?」
俺がこの世界に降り立った場所だ。
「それ以降、時折異界人があそこに降り立つ事があったらしいの。だからアルセス聖堂騎士団はそこに近いアルタワールに拠点の一つを置いたそうよ。でも、そんなに頻繁に異界人なんて来るのかしら? もしかしたら、寄付を募る口実なのかもしれないわね」
「あ〜、そうかもしれんな」
テキトーに合わせとこう。
にしても、セルキア神殿か。
俺が降り立った場所。そして、つい最近姫巫女が勇者と出会った場所。更には“五人目”が出現した場所。
もう一度行って、調べるべきかもしれんな。
ン? そういえば、夢で何か……思い出せん。一体何があったんだろうか?
……そう考えてる間に、城壁が近づいて来た。




