サービス悪ィな
――リシュート市街
門をくぐり、大通りを歩く。
まずは大八車を置ける宿を探すコトだ。当然、獲物が乗った状態で、だ。
そのあとはこっちの畜産ギルドでラクダを預かってもらうつもりだ。
「まずは“祈りの小径亭”へ行ってみるか?」
一度泊まったことのある場所なら安心できる。たまには違った宿にとも思うのだが、今の状況を考えると、な。
「そうね。コレを置く場所があれば良いのだけど」
う〜ん、あそこの前の道狭いし、正直望み薄だな。場合によっちゃ他の宿紹介してもらうか、それとも荷車を預かってもらえる場所探すか。
「“祈りの小径亭”、ですか?」
「ああ。知ってるん?」
「傭兵仲間から聞いたことがありますよ。良い宿だそうですね」
「割と知ってる人いるんだな……」
ふむ……あまり有名になりすぎるのも考えものか。あの騎士団がいる限りはな。
……まぁいいか。今の所はさ。
「じゃあ行こうぜ」
俺達は“祈りの小径亭”へと歩を進めた。
――祈りの小径亭
「いらっしゃい〜。あら、エスリーンじゃない? それに、ソースケ君も」
扉を開けると、ティシアさんが出迎えてくれた。
「戻って来たの?」
「うん。今日は仕事で」
と、エスリーン。
「仕事?」
「ソースケと組んで傭兵やってるの」
「傭兵を……」
ティシアさんは、少し顔をしかめた。危ない仕事だしな〜。
「傭兵っつっても、今のところはほとんど便利屋ですよ。家掃除とか、猫探しとか……」
言っててちっと悲しくなった。
まー、エスリーンを危険に晒すよーな仕事じゃねェからいいか。本来は、だが。
「そ、そうなの?」
視線をそらすティシアさん。
聞いちゃいけないこと聞いたってカンジか。
まっ、いいケドさ〜。
「と、ところで、今日はここで泊まっていくの? 部屋に空きはあるわよ?」
「ええ、それなんですが……ちょっといいですか?」
外へと彼女を招く。
「え? 荷車?」
そこには、ラクダに引かせた大八車と、手綱を引くアーミルがいる。
う〜む、狭い路地にコレはちとメイワクだったか。通行人が横を抜けるのは少々窮屈そうだ。まぁ、人通りは少ないケドさ。
「コレ、置く場所あります?」
「そうね……裏に使っていない蔵があるから、そこに置けば良いわ」
「へぇ……そうなんですか」
前の時は蔵なんて気付かんかったな。まぁ、裏になんか回ったりとかしてないしな。
「あ、でも、実は今回の仕事ってのは狩りなんです。大サソリとかを調達する仕事で。荷物を乗せたままでも良いですかね」
ナマモノだしな。場合によっちゃアウトかもしれん。
「あまり臭うものとかじゃなきゃ大丈夫よ」
「ありがとうございます!」
「正直、ここは難しいと思ってたんで、ラッキーだ。
さて、そうと決まれば移動だ。
長時間ここに置いとくワケにもいかんしな。
――裏庭
細い曲がりくねった路地を通り、宿の裏手へと回る。
「こっちよ」
と、蔵の前でティシアさんが手招きしていた。
隣にはおっさん。彼女の旦那で、店の主人だ。
口ひげが似合う、割と渋いおっさんだ。
「ここに入れると良いわ。ラクダは他で預かってもらわないといけないけど」
「ええ、大丈夫ですよ。畜産ギルドに頼むつもりです」
と、アーミル。
「それが一番安心ね」
そしてティシアさんは俺に向き直る。
「……この人は?」
「“アルタワール傭兵斡旋所”のアーミルって人です。今回、ラクダのコトを頼んでます」
「アーミルです、よろしく」
「よろしくね。この町に寄る機会があれば、ウチに泊まっていってね」
「はい。喜んで」
と、そこで旦那がティシアさんに耳打ちする。
「あー、そうか……」
ちっと困った顔の彼女。なんかマズいコトでも?
「あー、ゴメンね。部屋なんだけど……一つしか空いてないの。三人は泊まれるけど……どうする?」
「それなら、僕は他を探しますよ」
と、アーミル。
ふ〜む……。でも、せっかく一緒に来たんだしな。
「三人で泊まるか? まぁ、たまにゃ良いんじゃね?」
「え、ええ……いいけど」
少し当惑した顔のエスリーン。
『ふ〜む。しばらくお預けか』
……リラよ。真っ先に考えるのは、ソレか。
「いいんですか?」
「まぁ、仲間だしね。親睦を深めるのも良いんじゃね?」
「そう。……でも、不道徳なコトしちゃダメよ」
不道徳なコトってなんスか、ティシアさん……。
――大通り
畜産ギルドでラクダを預けると俺達は通りをぶらつく。
「そうだ。少し寄りたいところがあるんですが……いいですか?」
「ああ。……どこ?」
「この街のギルドに顔を出しておきたいんです」
「ああ、そうか」
一応ナワバリみたいなモンがあるんかな? そこで活動するなら挨拶入れといたほうがいいよな。多分。
「俺たちも行って置いたほうがいいか」
「ええ。そうですね。この町でも傭兵として活動する場合、何かと便宜を図ってもらえます」
「なるほど〜」
おっしゃ。それなら行かない理由はねェ。
「じゃ、いくか」
俺達はアーミルについて歩き出す。
――しばし後
俺たちの前に現れたのは、煉瓦造りの堅牢そうな建物だ。ここがこの街の傭兵ギルドか。
アーミルに連れられ、門へと向かう。
そこには、武装した衛兵が立っている。
ふ〜む。やっぱし各スキルのレベルが高いな。
やっぱしそういうトコロに弱いの置いといちゃイカンよな。まぁ、ゴロツキ5は見た目はともかくな……。
まぁ、門番じゃねーケド。
と、考えてる間にアーミルは中へと通された。俺とエスリーンもそれに続く。
建物の中に入ると、そこはちょっとしたホールになっていた。
壁には武器やら肖像画が飾ってある。武勲をあげた構成員の絵や武器などらしい。
奥にはカウンターが見える。あそこが受付なんかねぇ?
でも、座っているのはおっさんだ。あー、カワイイ女の子じゃねーのかよ。
ちとザンネン。
戦闘系のスキルは持ってるケド低レベルだ。むしろ、交渉とかのスキルが高いから、事務員として雇われてるんだろーな。
そこでアーミルはおっさんと言葉を交わした。どうやら旧知らしい。
と、おっさんが奥へと引っ込んだ。
と、しばらくしたら戻って来る。
チッ、代わりに女の子が来るとかねーのかよ。サービス悪ィな。
……って、そーいう場所じゃねーか。
「じゃあ、行きましょう」
アーミルが俺達を招く。
そしてホールの沖にある扉を抜け、さらに廊下をゆく。
「こちらへ」
アーミルが足を止めた。そこには、一つの扉。重厚な作りで、この建物内の他の扉とは明らかに作りが違う。
って、コレ、偉いさんのいる場所じゃね? いいの?
「ええ。大丈夫です。さぁ……」
アーミルが扉をノック。
と、中から『どうぞ』という声がする?
え? 女の人の声?
「じゃあ、入りましょう」
そう言うと、アーミルは扉を開けた。




