イナカモンどころか蛮族扱いかよ!
――ガルンタール街道
草原を伸びてゆく道を、俺達は歩いて行く。前回と違うのは、アーミルがいることだ。
そして、荷物を引くラクダも。
それに、前は逃避行だったが、今は仕事だ。
まぁ、ちっとは気楽か。
そして、現在。
歩き始めて一時間半ほどか。草木がまばらとなり、代わって荒れた大地が顔をのぞかせる場所も少なくない。
次第に気温も上昇している。歩いているだけでも汗だくだ。
まぁ……なにもしなければ、だが。
俺達はマントをまとい、その中を風魔法で空気を循環させ、暑さをしのいでいる。
「コレ……いいですね」
と、アーミル。
彼も黒魔術は使えるが、まだこういった魔法を使えるほど修練は積んでいないそーだ。
にしても……ラクダは平然としてやがる。やっぱしこの世界でも、ラクダは砂漠の生き物なのか。
つか、もしかしてコイツはラクダによく似た生物なのかもしれん。エスリーンら異界人も地球の人類と似て非なる存在だったりして?
いや……それもオカシイ。
確かにこの世界には魔物や魔獣がいるものの、地球とよく似た生物も多数生息する。
人間の他にも、牛や馬、犬や猫、ネズミ……。
果たして偶然、ここまで似通ったものが二つの並行する世界に生まれるってコトがありうるんだろーか?
そりゃ確率はゼロじゃないだろーさ。
でも……まず有りえんよな。
どちらかがどちらかをコピーしたか……それとも、連れて来たか。
俺のような転移者が居り、そして転移者排除を行うアルセス聖堂騎士団が存在する。
おそらく過去、何らかの事情で地球からこっちへと転移して来たと考えるのが妥当なのかもしれん。
自称造物主はこの世界を“造った”と称しているが、正直どこまでがヤツのオリジナルなんだか……
「ねぇ、ソースケ。どうしたの? さっきから黙ってて……」
「ン? ああ、スマン。ちっと考え事をね」
エスリーンの声。とりあえず、笑ってみせる。
「それはそーと……」
アーミルに視線を向けた。
「一つ聞きたい。アルタワールにある二つの傭兵ギルドって……仲悪いんじゃねェの?」
「ああ、それは……」
一瞬アーミルは考え込むようなそぶりをした。
「仲がいい、とまではいえませんけど、そこまでお互い敵視していませんよ。……というか、あっちはこちらを歯牙にかけてない部分もありますけど……」
「そ、そーか」
まー、仕方がねーか。
「それに……元々分裂した経緯のこともありますしね」
「へ? 分裂?」
てっきり向こうのギルドは新しく設立されたモンだと思ってたが……
「ええ。本来は、元からあったうちのギルドが組織変更して“戦士の館”に加盟するはずだったんです。しかし、そうもいかない事情がありまして……」
「……事情?」
「ええ。“戦士の館”に加盟するには、問題のある構成員が多かったんです」
「あ〜、もしかして、あのゴロツキ一号から五号」
流石にあの連中はあっちのギルドにゃ入れんだろーな。
「ま、まぁ……彼らではないですが、大体そんな感じです。うちの父は、多少実力や素行に問題があっても、傭兵として働きたいという者は採用してたんです。しかしそれが、足かせとなってしまいました。向こうはその辺に一定以上の質を求めてきたんです」
「な〜るほど」
確かに“戦士の館”の連中って、いかにもな荒くれはいないモンな。俺が見た範囲内だと。
「ですが、父は彼らを見捨てることはできず、“戦士の館”への加盟をためらったんです。ですが、大多数の傭兵は加盟を望んでいました。なので、加盟を望む傭兵には、新たなギルドの設立を勧め、自分は古いギルドに残ったんです」
「な〜るほど。そう考えると、俺にとっても恩人だな。ギルドに加入できなかった場合、ヘタすりゃのたれ死んでたかもしれないしね」
「そうなんですか? ソースケさん程の腕があれば、向こうのギルドでも……」
「いや、紹介状もなかったしね……」
「ああ、そうでしたか。向こうじゃ紹介状は必須ですし」
カネ次第で雇用主を裏切るよーな輩とかを入れたら、組織の信用にも関わるからな。戦場じゃ生死に直結するワケで。
にしても……アカシックレコードに登録されてねぇってコトはどーいうワケなんだろうな?
「ああ、そーいえば、“戦士の館”って、いつ設立されたんだ?」
確かゲームにゃそんな組織は存在しなかった。
……つか、よく考えりゃ古い方の傭兵ギルドとかも出てこなかったか。ストーリーに関わらない部分だから割愛されたんかね?
「設立は……魔王戦役が終わってしばらくしてからです。勇者ヴァルスラーナの仲間の一人、戦士アレオスが関わっていたとされています」
「いきなり大物が来たか……」
思わず呟く。
まさか勇者の仲間が関わってたとはな。
しかし、アーミルは妙な顔をした。
「あの……失礼ですが、ソースケさんってどちらのご出身です?」
「……えっ? いや……」
しまった。もしかしてジョーシキだった? 俺、またやっちまったのか。クソッ、ナンて役に立たねェアカシックレコードなんだ!
ま、八つ当たりしてもしょーがねェけどよ〜。
「あの……実はソースケ、辺境の出身みたいで……その、この辺りのことは詳しくないの」
と、エスリーン。イナカモンどころか蛮族扱いかよ! まっ、仕方ないケドね……
「ああ、そうだったんですか……」
何とも言えない顔をするアーミル。笑いたきゃ笑えよぉ……。
と、とにかく気を取り直して、だ。
「っつーコトは、本部はリーマスにあるん?」
戦士アレオスは故郷リーマスへ帰ったと聞いたが。
「いえ、エルズミスです。今はその弟子その弟子であるヴェルディーンが後を継いでいます」
「ヴェルディーン?」
知らん名が出て来たな。
「姫巫女エルリアーナ様の近衛部隊隊長を務めているそうよ」
と、エスリーン。
「へぇ……」
ま〜たエルズミスの関係者か。
傭兵ギルド上層部とコネを作るのも考えものか?
いや……今はそこまで考える必要も無いだろう。
ひとつ頭を振ると、俺は前に向き直る。
荒地を伸びていく街道。
その先には、目的地リシュートがある。




