色々動き出しそーな予感
――しばし後
朝食を食べ、身支度を整える。
そして俺達はシャーリアに見送られて宿を出た。
とりあえずしばらくリシュートに滞在するコトは伝えてある。
さて、仕事だ。気分は切り替えんとね。ヘンに悩んでも、ミスすんのがオチだ。そーいうのは、夜になってからでいい。
――大通り
宿を出た途端に声がかかる。
「おはようございます」
見知った顔。アーミルだ。
「やあ、おはよう。スマン、待たしちまった?」
「いえ、大丈夫ですよ。それより……行きましょう」
「いいケド……あっちは?」
「え?」
俺が指差す先。
そこには大熊亭店主ダムロンの娘、マリーカ。
「あ……あの……」
キョドるアーミル。
「いや……いーから行ってやんなよ」
軽く肩を押してやる。
が……フラつき、倒れこむ。
それをマリーカが支えた。
あ〜、ナンかあのおっさんが不安がってる原因が分かった気がする。
そして俺達は彼女とともに旧ベルガント邸へと向かい、大八車と猟具を持ち出す。そして次に向かう先は、畜産ギルドだ。
そこであの巨大ラクダを大八車につなぐ。
しばらくギルド前の通りを歩いてみたが、大丈夫そうだ。
が……問題は、このラクダの気性だ。
ラクダの気性は荒いため、慣れたアーミル以外は身体に触れさせない。
まぁ、コイツの管理はアーミルに任せときゃいーだろう。
それでも一応、扱い方は見て覚えとかんとね。
用意が整ったら、いよいよ出発だ。
ラクダとともに、南門へと向かう。
そこで簡単な通関手続きを行う必要がある。
と、通関待ちの列の中に、メンドーなヤツがいた。
聖堂騎士団のヤツだ。
二十代後半の、中堅どころといったあたりか。左遷騎士と、先日俺に声をかけた騎士との間ぐらいの地位かもな。
幸いなコトに、知らない顔ではある。
……俺が覚えてないだけかもしれんが。もしかしたら、先日この門で行き合った連中の中にいたのかもしれん。
流石に俺の顔を覚えちゃいないだろう。
……そう思いたい。
が、とりあえず目立たんようにせんとな。念のため。一応マントのフードを被っておく。並んでいる中にもそうしてるヒトもいるからダイジョーブだろう。
「……なぁ、アーミル。あのヒト、知ってる?」
「いえ? ……もしかしてお知り合いですか?」
アーミルの言葉にも、かすかに不快さがにじむ。
ヤッパ嫌われてんだな、あの連中。
「いや、俺も知らんのだけどさ。ナンか最近あの連中の動きがせわしなくね? ナンかあったんかいねェ?」
「そういえばそうですね。この間もここで揉めてたっていいますし……」
あー、俺達がこの街に戻ってきた日の話ね。噂になってんだ。
「ああ、その現場に俺達もいたよ」
「そうなんですか!?」
アーミルは驚いて声をあげる。
「ちょっ……声がデカいって」
「ああっ、すいません」
フードの端からそっとヤツを覗き見る。
ウゲッ、こっち見やがった。
……ケド、すぐに視線を逸らしたな。
あ〜ヤレヤレ。
思わず一つ、息を吐く。
「すいませんでした」
平謝りなアーミル。
「いいって。そーいうコトぐらいだれでもあるしね」
まぁ、バレんかったしナ。
「ギルドの方にも、そのあたりの情報ねぇの?」
声を潜め、アーミルに問う。
「チラホラとは入ってますけど、あまりはっきりとした情報はないです。それに……あまり人には言えないですよ。これは」
「あー、そうか」
守秘義務もあるしな。
「……行ったみたいよ」
と、エスリーン。
……よし。
「ベルガント邸の前の売主も殺されたって聞いたし……最近ブッソウなんかねぇ?」
「ええ……。この辺りから盗賊連中がいなくなってからずっと平穏だったんですけどね」
「そっか〜」
と、そこで俺達の順番が回ってくる。
衛兵に書類を示し……
と、衛兵が俺達を見た。
ン? 俺? いや、違うな。
「やあ、アーミルか。今日は何の用だい?」
「ああ、彼らが大熊亭の食材を調達に行くんで、その手伝いさ」
アーミルと衛兵はにこやかに話している。
あれ? この門の警護はもう一つの傭兵ギルド、“戦士の館”に委託されてるんじゃなかったっけ?
「知り合い?」
アーミルに聞いてみる。
「ええ。修行時代の友人ですよ。イーラムといいます」
そ、そーなん? てっきり構成員同士仲が悪いかと思ってたんだけど。
「イーラムだ。よろしく」
「ソースケです。よろしく。こちらはエスリーン」
「よろしく」
挨拶を交わす。
ふむ。
身長は俺よりちょい高いぐらい? 細身だが、かなり筋肉質っぽい。能力的にもこれと言って大きな欠点はなく、戦闘関連のスキルも結構高めだ。何っつーか、人材の層の厚さの差を感じるな……。
まぁ、俺達の方のギルドにこんなんがゴロゴロいたら、この世界に来た直後の俺なんか、雇ってくれんだろーケドね。
「ン? ソースケといえば、そっちのギルドの有望株か。そういえばこの間、スノリゴスターに襲われた羊飼いを助けたとかいう話だったな」
へー、あの一件で、俺の名前はそれなりに広まったんかな?
「ああ、あの話っすか。正直冷や汗モノだったですよ」
テキトーに謙遜しとく。
ドヤ顔するのもアレだし、かといって過剰に謙遜しすぎるのもナンだし。
「とか言いつつ、五頭仕留めたと聞いたがな。まぁ、そっちにそういう人材が入ったという事は、我々もうかうかとしてられんな」
「お手柔らかに頼むよ。正直彼以外には、ね」
と、アーミル。
う〜む、ギルドのメンバー、あの五人の他には会った事ないんだが……やっぱアレなん?
そうする間に手続きは終わった。
詰所を出、門をくぐる。
「アーミル、彼女が手を振ってるぜ」
ちらと振り合えると、門のそばに立ち、手を振るマリーカ。
「あ、ちょっとすいません」
アーミルは振り返り、手を振る。
彼女は俺達を見送るつもりだろう。
おそらく、見えなくなるまでずっと。
さて……二度目のリシュートか。
ナニか色々動き出しそーな予感もする。
さて、どーなるかはワカランけど、前に進むしかねェ。
俺達はリシュートに向かい、ガルンタール街道を南へと歩き始めた。




