表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/212

そんな殺生な〜

――金の鸚鵡亭

 アーミルと別れた俺達は宿へと戻る。


「おかえりなさいー」


 宿の主人、シャーリアが出迎えてくれる。


「もう少しで夕食の準備が整いますんで、しばらくしたら降りて来てください」


 ふむ。飯を食ったら身体を洗い、そして明日の準備だな。



――夕食後

 腹が膨れた後は、入浴だ。

 またタライの湯で身体を洗い、そして拭く。

 いや〜、さっぱりした。

 特に仕事とかしなくても、身体は汚れる訳だしな。

 さて、部屋に戻り……

 って、まだエスリーンが身体を洗い終えてねェ。どーやらまたリラが抵抗してるよーだ。


「俺は行くぜ。早く上がれよ〜」


 声をかけてみる。


「わ、分かってるわよ! もうっ! おとなしくしなさい!」


 ナニやらまたリラとモメてるよーだ。

 女同士の争いに巻きこまれたらロクなコトになンねぇ。

 とっとと逃げよ〜〜



――部屋

 さて、メモの整理だ。

 メモった紙に穴を開け、紐で閉じる。

 う〜む、ルーズリーフみたいなモンがないから一々メンドい。

 どっかの鍛冶屋にでも頼んで裁断機と穴開け機でも作ってもらうか?

 いや……

 単純に穴開けるだけなら皮用のポンチでもいいか。

 その辺は帰ってからだな。



 しばらくすると、エスリーンが戻って来た。

 かなり疲れ切った顔だ。


「どーしたよ?」

「リラがまた抵抗するのよね……。何とかならないのかしら?」


 エスリーンが言う。

 が、俺にどーすれと? ナンなら俺が洗ってやってもいーんだゼ?


「それはイヤ」

『ソースケの洗い方は雑だと思う』


 ……と、きたモンだ。

 まっ、そーだよな。この間はちっと別のコトに気を取られすぎた。

 それはそーと。

 俺とエスリーン、そしてリラで明日の予定を話し合う事にした。


「狩場はどちらかといえばリシュートに近い所だ。なんで、まず明日はリシュートへ行き、向こうで宿を取ろうと思う」

「そうね。でも、あの荷車を置く場所のある宿じゃないといけないわね」


 場合によっちゃ、馬車で旅する貴族とかキャラバンなんかが泊まる様な大きな宿でないとマズいか。祈りの小径亭にはそんなスペースがあったかどうか。


「リシュートは交易都市だし、そういうモノを置く場所も沢山あるわよ。ラクダはあっちの畜産組合で世話してもらえばいい訳だし」


 と、エスリーン。

 それもそーか。

 ここは一般の旅人用の宿だが、アルタワールにも隊商用の宿がある。そういう所ならば大八車を預かってもらえるワケだ。

 まぁ、俺の場合はエスリーンの事もあるし、何より旧ベルガント邸の件もあってここを動かなかった訳だが。


「じゃあ、その辺はあっちに行ってからで。とりあえず、獲物の出現場所だが……」


 以前大サソリと遭遇したのが2ラン半辺りの所だった。おそらく大サソリはその辺りからリシュート近郊にかけて。巨大イモムシは2ラン〜4ラン近辺のところに出没するらしい。

 初日はまずリシュートに向かい、宿を探す、と。

 途中で獲物と遭遇し、捕獲した場合はその保管場所も必要だがな。

 そして、1日から最大三日ほど狩りを行い、そして狩りを終えた日の翌日にアルタワールへ帰還する、と。

 正直あまりリシュートに長居はしたくない。

 アルセス聖堂騎士団やらトゥラミシュやら、注意を要するコトが多すぎるからな。

 後は……問題の騎士団顧問だな。

 この手の食材を狩る際に、常にちらつくその影。果たしてヤツが俺達の事を認識しているか分からねェが、注意は必要だ。

 姫巫女候補であるエスリーンなんかは格好の獲物だろうからな。

 とりあえず、極力接触する人間は絞ったほうがいいだろう。

 後は……アーミルの人脈だ。

 傭兵ギルド絡みでリシュートへは何度か行った事があるらしいしな。



 ……とりあえず、こんなトコロか。

 後は……


「なあ、エスリーン」

「何?」


 わずかに引く彼女。


「なぁ、ヤらし……」


 アレ食ってからというもの、なんと言うか……色々持て余してこのままじゃ眠れそーにねェ。


「……ごふっ!?」


 鳩尾に一撃。そんな殺生な〜。


「お……おぉ……、別に臭いモノ食ってねぇゼ?」


 前は臭いって言われて拒否られたんだしな。


「そっ、それは……」


 口ごもるエスリーン。

 気がかわっちまった? 前は『いいよ』って言ってくれたのに。

 う〜む、あの日に、無理してでもシときゃ良かった?


「って、ちょっと、リラ!」


 と、エスリーンが戸惑った声をあげる。


「……ン?」


 何やら彼女の右手が上着を脱ごうとし、左手がそれを抑えている。


「なぁ、いったい何やって……」


 ……って、リラか!

 どうやら彼女がエスリーンの右半身を乗っ取ったらしい。


『さあ、ソースケ。私が抑えているうちに……』

「ちょっ……この裏切り者!」

『何を言うのかね? 君だって一度は彼を受け入れる決意をしたのだろう? そう言う意味では、裏切ったのは君ではないのかね?』

「そっ、それは……」


 動揺するエスリーン。

 と、その左手が上着にかかると、一気に脱ぎ捨てた。


「えっ……」


 呆然とする彼女。

 どうやら動揺したスキに、リラがほぼ全身を掌握したようだな。

 気がつけば、エスリーンは下着一枚となってしまった。


「あ……あの……あまり、見ないで」


 涙目のエスリーン。


『さあ、ソースケ。今こそ思いを遂げたまえ』


 彼女は俺に抱きつき、唇を重ね……

 が、その直後、


『……何!?』

「ンげっ!」


 アッパー気味に振り抜かれた左手が、俺の顎を綺麗に打ち抜いていた。

 そんなんアリかよ〜

 そして、俺の意識が闇に沈む直前、


「もう……ソースケったら。迫るのならもうちょっと……」


 そんな声が聞こえた気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ