気が変わらんうちに退散だ
――大通り
大熊亭を出た俺とエスリーンは連れ立って歩いていた。
「ふぅ……意外とイケるな。アレも」
蒸し焼き肉の味は鶏肉っぽかったな。
あー、そういやワニって鶏肉みたいな味がするんだっけ。一応アレもワニの一種だろうからトーゼンか。
それに……あの肝。
わざわざ俺みたいのを雇ってまで手に入れてるだけあって、効果はバツグンだった。
身体の奥から力が湧いてくるようだ。ここ二日の狩りの疲れなんかカル〜く吹っ飛んじまった。
『ああ。あの効果は素晴らしい。毎日でも食べに行きたいぐらいだ』
と、リラも言う。
やっぱし使い魔だけあって、ああいう“力”をもった料理には好反応か。一方、宿主のエスリーンの顔はビミョーに暗いがな……
「……どーしたよ」
「あの……子供の頃、ああいう料理を食べさせられた事があって、それ以来ちょっと……」
「あー……」
『そんな事もあったな』
こっちもトラウマか。レバーの類は確かに子供にとっちゃ少しイヤな味だったかもしれん。俺だってレバニラ食べられるようになったのは、中学に入ってからだしな……
つかリラよ。知ってたんならもうちっと早く言ってくれや。
やっぱし分離手段は早く探した方がいーかもな。
そして俺達は大通りへと向かうと、市場や雑貨屋で狩りに必要な道具を揃える。
買い回る間、この前蛮刀を研ぎ直してもらった店で鉾と斧も研ぎ直してもらった。
槍術と斧術ものスキルも獲得したワケだしな。存分に使わせてもらおう。
それが終わると、再び酔いどれ牛に足を向けた。
「まだ用があるの?」
と、エスリーン。
「ああ。今回の狩場はこの街から離れた場所だしな。荷車を引いてくれる牛か馬か何かを借りれる様に手配してもらおうかと思ってさ」
さすがに砂漠地帯で大八車を引いて歩くのはホネだ。いくら人外レベルの体力を持ってたとしてもな……。
「なるほど。でも、ソースケって馬みたいな動物を扱えるの?」
「いや……だから、扱える人間も一緒に雇おうと思ってさ」
その手のスキルはまだ持っちゃいねェ。やっぱし馬術とか動物扱いに関するスキルも必要だよな〜。いずれとっておこう。
「いい考えだとは思うけど……あそこで見つかるの?」
やっぱそー思うよな。まー、有望な人材は新興のギルドに行っちまっているワケだが……。
「一応目星はついてる」
スキル持ちはいた。しかも、うってつけの人物だ。後は、借りる事が出来るかだ。それと、牛か馬なんかを調達出来るか。
「え? ……そうなの? まさか、あの連中じゃあ……」
エスリーンは眉をひそめた。
あのゴロツキ1号から5号じゃねーよ。アイツら、そんなスキル微塵も持ってなかったしな。
「まぁ、着いてのお楽しみ、かな?」
「何よー、意地悪」
エスリーンが頰を膨らませた。
うーむ、やっぱし彼女が一番可愛いかな?
本人に言うとまた怒られそーだが。
――酔いどれ牛
「おう、どうした? さっきのベーコン、すぐには食えないぜ?」
カウンターで出迎えたハルジーは怪訝な顔をする。
燻製仕立てのベーコンはまだ煙臭いらしいからな。また今度食わせてもらおう。
しかし、今回の目的は違う。
「いや、ちっとね。人を都合してもらいたいんだ」
「ほう?」
身を乗り出すおっさん。
一応仕事の話だからか。
「馬か何かを扱える人をね。出来れば、明日から三日か四日ほど。今回、南の乾燥地帯に行くから、流石に荷車を手で引いてくのは難しいだろーしね」
「ふむ……」
ハルジーは考え込んだ。
ココで本題だ。
「もしかしてだけど……息子さんも扱えるんじゃないかい?」
試しに聞いて見る。
スキルはチェック済みだ。それなりに高いスキルは持ってるよーだ。
後は、俺達に付き合う時間があるかと、本人の意思だが……
「確かにそうだが……」
眉間に皺を寄せるハルジー。
「連れて行ってください」
と、背後から声がかかった。
目的の人物、ハルジーの息子のアーミルだ。
「どうした? 急に……」
ハルジーは驚いた様に息子を見る。
「大熊亭の事なら、是非僕を連れて行ってください」
「俺は構わんけど……いいの?」
チラとハルジーを見る。
「う〜む、店番がな。いや、あの子の事なら……」
ナニやらブツブツ言ってんな。
「今の時間だと、他に探すのもホネだしさ。息子さん借りるぜ」
「お……おう」
とっさに返答するハルジー。
ついうっかり言っちまったってカオだな。
けど、撤回するヒマはねェぜ?
「牛とかを借りれる所はあるん? 早い所話をつけときたいんだ。今からいいかい?」
「ええ。すぐ準備します! 父さん、すいません」
「決まりだな! じゃ、借りてくぜ!」
考えるヒマを与えず一気に畳み掛けてやる。
「あ……ああ、気をつけてな」
気圧されたよーな返事をするハルジー。
ヨシヨシ。おっさんの気が変わらんうちに退散だ。
――大通り
「どこか荷役の家畜を借りれるところってあるん?」
歩きながらアーミルに問う。
「ええ。畜産の組合に行けば大丈夫ですよ」
「そんなんあるんだ……」
畜産ギルド、ね。農協の類ナンかな? あー、もしかしたらグラームのおっさんも所属してるかもな。
「ええ。あちらの建物です。輓獣も手配してもらえます」
彼が指差す先には、煉瓦造りの立派な建物があった。
この地域の主要産業の一つである畜産を統括するギルドだけあるのかもな。
にしても、輓獣……荷役用の動物か。
さて、どんなんがいるかねぇ?
俺は期待と不安半ばでその建物へと足を向けた。
――ギルド内
手続きを終え、しばし待たされる。
そして、一頭の獣がアーミルに連れられ、俺たちの前に引き出された。
地球の動物の中で一番似ているのはラクダだろう。コブは一つだから、ヒトコブラクダか。だが……デカイ。肩高2.5mを超えてんじゃなかろーか?
実物は動物園で見たっきりだが、こんなにデカかったっけ?
「これを借りる事ができました。かなり力があるので、もしイモムシやサソリを沢山狩っても持って帰れますよ」
アーミルは嬉しそーだ。
ってコトは当たりってワケか。
「ソースケさんがここのメンバーを助けてくれたそうなので、喜んで貸してくれましたよ」
おー、グラームのおっさんの件か。「情けは人のナントヤラ」って奴かね。
おっしゃ。
コレでがっつり獲物を持って帰るぜ。




