あーヤダヤダ
――朝
「んあ〜っ」
おそらく地球の時間で言えば、六時半ぐらいか? 差し込む朝日の中、俺は目覚めた。
え〜っと、確か今は地球で言えば七月半ばなんだっけ?
つーコトは、もっと日が長いハズなんだよな。でも実際は、春分秋分よりちょい短いぐらい?
やっぱ赤道直下っぽい気もしないでもない。
まっ、それはそーとして……
「ヲイ……」
俺の目の前にある、下着に包まれた尻。そしてそこから突き出た尻尾。俺に背を向け、身体を丸めている様だ。
頭隠してというか何というか。
とりあえずテキトーに触ってみる。
……うむ、相変わらずいい感触だ。適度な張りと柔らかさ。やっぱしエスリーンの身体は胸よりも尻だよな。
「やあ、おはよう」
と、その尻……の持ち主の声。
「おはよう。リラか」
「ああ。昨日は迷惑かけた」
と、彼女はモゾモゾと体の位置を入れ替え、布団から顔を出す。
「お……おう」
どー答えりゃいーんだか。
「ちょっとした意趣返しのつもりだったが……少々やり過ぎてしまったな」
「ま、まぁ……無理に身体を洗った俺も悪かったよ。あそこまで嫌がってるとは思いもしなかったからな」
「昔はそうでもなかったのだが……エスリーンに洗われた時、溺れかけてしまってね。それから水は駄目なんだ」
「あー、そーだったか。そりゃスマン」
トラウマまでとは思わなんだ。
「気にする事はないさ。それより……ここを叩かれていたな」
彼女の舌が俺の頰を優しく舐める。
……いや、ちっと痛いって。
まっ、好意は無駄にするつもりはない。
……でもやっぱし痛ェ。
「ところで、話し合いはまとまったのか?」
「まぁ、何とかね。まだ色々問題は山積みだけどね」
「そーなんか……」
ま、まぁ……ナンとか解決できりゃいーケド。
「解決できるかは君次第なんだがな」
「そ、そーナン?」
ヒジョーにヤなヨカンがするんだが。
まっ、それはそーと。
「でもさー、ナンでエスリーンにリラのコト伏せとけって言ったのさ?」
今まで気になっていた事を聞いてみる。
「ああ、あの時エスリーンは君に幾らか好意を寄せていた様なのでね。私はあまり表に出ない方がいいと思ったのさ」
「そ、そーなん?」
「ああ。あの子は恥ずかしがり屋なので、私がいると心を押し殺してしまうだろうしね。が、思いの外進展が遅かったので、しびれを切らしてしまったが……」
「そりゃ会って数日だしな」
「ふむ、そうか。ヒトでも出会ってすぐに、というのもいるのではないか?」
「まーそりゃね。でも少数派だろ?」
……多分。この世界ではどーか知らんけど。
「なるほど。ヒトというのは面倒臭い生き物なのだな」
「……そーかも」
本能のままに生きるっつーのもシンプルでいいのかもしれんがな。
と、彼女は俺に身体を押し付けてくる。
……撫でろと申すか。
とりあえず、腹のあたりを撫でてやる。
つかコイツ、寝間着着てねェ。肌触りのいい肌の感触が伝わってくる。
「そう、そこをもっと」
「……ハイハイ」
彼女は満足げな吐息を漏らした。ちっと色っぽい。
ついつい襲いかかりたく……いや、ガマン。
それよりも、だ。
「あのスノリゴスターモドキの事だけどさ、どう思う?」
「ふむ……そういえば、また例の騎士団顧問が関わっているのだったな」
「ああ。そしてそれをフィルズ・ロスタミに与えた、と。間違いなく両者はつながっている。そして、何らかの目的で、騎士団顧問はフィルズ・ロスタミを操っていた訳だ」
「操る、か」
「ああ。今我々が集めている食材。その四品目のうち二つにヤツが関わっていた訳だが……それらは、呪術によく使われるモノなのだよ」
「! ……そうなのか」
まさか、と思うが……フィルズ・ロスタミは呪術に使う材料を集めていたのではなかろうか? そして、その結果がヤツのあの姿なのか!?
いや、まさか……
「それは分からんさ。だが、警戒しておいた方が良いだろうな」
「そうだな……。ところでさ、あの大熊亭に食材持ってってダイジョーブなん?」
まさかとは思うが、呪術なんかを……って、あのおっさん、そんなスキル持ってなかったか。
まぁ、あのアカシックレコードはイマイチ信用できんケド……
「大丈夫だろう。あれらの食材は、滋養や魔素が豊富に含まれている。故に、食材としても有用なのさ」
「へぇ……そーなんか」
「君が食べた“ラジュフォンの黒灰汁漬け”なども、そうしたモノさ」
「あー、そういうコトか」
オーム蛇漬けの酒なんかもそーナンだろーな。
「おそらくフィルズ・ロスタミは、そうした素材を入手し易くする為に大熊亭へ接近したのだろう」
「あー、ナルホド。あの森なんかは一応許可証がいるワケだしな。で、競合する狩人何かを殺して素材を独占しようとしたってワケか」
「そう。そして資金の確保もな。ああした呪術の素材は闇市で取引されることが多いからな」
「ふ〜む」
色々ヤバいモノを扱うみたいだしな。当然カネはかかるか。
「かつてはこの近辺に跋扈していた盗賊団が、そうしたモノの供給源になっていた様だがな。しかし、ある日を境に姿を消してしまった」
「ナルホドね〜」
人身売買もしてたんだっけ? 攫った人間から呪術の素材を“確保”していたのかもしれんか……。
あーヤダヤダ。そーいう連中と関わりたくねェな。
「ああ、そうだ……」
「ン? まだ何か?」
「ここも頼む」
「お、おう……」
彼女は俺に背中を押し付けてくる。
まっ、いーや。しばし彼女の感触を楽しませてもらおう。
後でエスリーンに殴られるかもしれんケド……




