やましいコトは……
――宿の一室
俺はリュックから、こっちにくる前に古本屋で買った本を取り出した。いわゆるサバイバルマニュアルってヤツだ。
とりあえず、次は乾燥地帯での狩りだからな。それに備えてサバイバル知識を得ておかねば。
必要なモノをリストアップし、明日にでも買いに行くつもりだ。その辺をノートに書き起こし……
つか、あっちで使ってたよーな筆記用具もここじゃ調達できねぇんだよナ。
筆やらペンはあるが、鉛筆はねェ。ついでに消しゴムも。
っつーコトは、墨汁っぽいインクを使わにゃならねェってワケだ。
“石墨筆”っつー鉛筆モドキはある様だが、この辺りじゃ売ってねェ様だ。
もし入手できたとしても、消しゴムが……って、そういや昔はパンとか使ってたんだっけ?
紙は、植物の茎をシート状に加工したヤツ――パピルスだっけ?――やら和紙やらみたいのがあるが、少々高い。
まー、紙に関しては作り方をプリントアウトしたヤツを持ってきてあるんで、一度試しに作ってみればイイか。
材料はどーにかせにゃならんがな……。
それはそーと。
時折エスリーンからやたらと冷たい視線が注がれるワケだが……
やましいコトは……沢山あんな。後がコワいか。
……いや、今は気にしないでおこう。例えそれが、現実逃避だとしても。
本の中から必要なモノや注意事項などをピックアップし、ノートに箇条書きで列挙する。
それを終えると、エスリーンに目をやる。
……が、まだ話し合いは終わらない様だ。
ナンか時折コメカミ辺りが引きつってたりするんだが……
ま、まぁイイや。
今日の戦闘の成果をまとめよう。スノリゴスター四頭と、強化型一頭の経験点を合わせると、5932点。
めでたくLv10だ。
で、だ……
――――
名前 : 仁木壮介 性別 : 男 種族 : 人間 経験レベル : 10 身長 : 166cm 体重 : 53kg
体力度 : 22 耐久度 : 22 器用度 : 26 敏捷度 : 20 幸運度 : 20
精神力 : 20 精神耐久度 : 20/20 知性度 : 20 知恵 : 14 魅力度 : 14
HP : 46 / 54 MP : 28 / 50 / 50
攻撃修正 : +42 回避修正 : +40 速度 : 速 魔法修正 : +40 魔防修正 : +36 / 36
スキル : 剣術8 槍術1 斧術1 投擲術1 格闘3 黒魔術3 神聖魔法2 危険感知 2 暗器術 1
所持金 : 929258 経験点 :5932
武器 : 聖剣 ナイフ2 匕首 防具 : レザーアーマー
装備 : 服 リュック 所持品 : スマートフォン 魔導石1
言語 : トゥラーン語2 ゼルゲト語1 ソアン語1 アトラス語1
――――
てな具合だ。
とりあえず能力値はヒトの限界値まで上げておく。あとは知恵と魅力度だな。そしてスキルは剣術を8に上げ、新たに槍術と斧術を習得。
狩りの事を考えると弓術あたりの方が良いのかもしれんが、大サソリも巨大イモムシも砂の中に潜んでるしな。
その上連中は重装甲だ。ニワカ仕込みの矢じゃ弾かれるかもしれん。
そう考えると、弓は後回しで良いだろう。投擲術も持ってるしな。
ただ、ナイフは買い足した方がいいな。
それと、槍と斧も研ぎ直してもらおう。明日また市場へ行き、やってもらうか。
とりあえず、そんなトコロか……
にしても、眠くなってきた。スノリゴスター四頭、さらに強化型とも戦ったしな……。そりゃ疲れるよナ。
とりあえず、ベッドに横になる。
ふあ〜、今日も一日よく働いたな。
ナンかまぶたが重くなってき…………
「〜〜〜〜」
誰かが呼んでいる。
……はて? 前にもこんな事があった様な……それも、最近。
いや、今朝だっけ?
って……ゲェーッ! ヤバ……
そう思った直後、頰に衝撃。
「何寝てるのよ、ソースケ!」
あー、やっぱしか。
「うわっ、スマン!」
思わず飛び起き……って、身体が動かん。
あー、やっぱしマウントポジションとるのね。
朝と同様胸の上に乗り、両膝で腕を押さえた状態だ。
つかさー、今朝も思ったケドこーいう視点で眺めると、ナンか寂しーよね。谷間の間に顔が見えるハズなんだケドね〜。
「……アンタ、今何を考えた?」
エスリーンの目がヤバい。
心を読まれた!?
いや待て。彼女にゃそんな“力”はないハズ……まさか!?
「……“念話”」
ナンとか印を結ぶ。
『……ご名答。私だよ』
リラの“声”。
『ちょっ……ナンでエスリーンに教えたんだよ!』
『昨日の件の、ちょっとした意趣返しさ』
『いやだから、アレは……』
「……やっぱりリラの言うコトは本当だってた訳ね」
「あの……痛ッ!」
頰に一撃。
さっきの平手打ちよりも重い衝撃。
掌底か……
一瞬意識がトびかけたゼ。
「それに、よ? アンタ、昨日私の身体を、身体を……」
うげっ、あのコトかよ!
にしてもリラめ、意趣返しするのはいいとしても、どれか一つに絞ってくれよ!
親の仇を見るよーな目だ。あー、仇ってフィルズ・ロスタミだっけ。アレよりもマシっぽいか。
とはいえ、この殺気は……アカン、殺られる。な、ナンとか切り抜けんと……
「で、でもさ、昨日もかなり汗をかいたんだぜ? そのまま寝ちまったら……」
「うっ……それはそうかもしれないけど、もっと、もっと……」
『私は別に気にしないのだがな』
「気にするの! 私はッ!」
『う〜む、ニンゲンとは面倒臭い生き物だな。あの程度の汚れ、舐めればどうという事もあるまい?』
「舐めるって……」
『うむ。朝起きたらまず、身体を念入りに舌で拭っている。だから、汗まみれで寝てもどうと言うことはない』
「ちょっ……待ってよ! まさか、身体中舐めまわしたっていうの!? 私の舌で!」
『私の舌でもあるのだがな……。もちろん全部だ。腕や胸、尾の先までな』
今のエスリーンの身体は、軟体動物並み……とまではいかんけど、猫並みには柔らかい。
まー頭と首回り、胸と背中以外には大体舐めるコトが出来るワケである。
「なっ、何でソコまで……まさか私の舌でソコまで舐めたの!? いくら何でもそれは……」
エスリーンの悲鳴じみた叫び。
そこから先の口論に関しては、耳を塞いでやりたかったが、肩を膝で押さえつけられちまってるワケで……
まー、聞かなかったコトにしとこう。そう、聞かなかったコトに……。
……それよりも、だ。
「なー、そのヘンは明日にして、そろそろ寝ね?」
俺は、いまだに俺を押さえ込んだまま疲労困憊な顔をしたエスリーンに声をかけた。




