そーいうアツカイなワケね
――アルタワール市街
俺達は門をくぐると、酔いどれ牛へと向かう。
すぐに大熊亭へ行ってもいいか、一応置き場所の件がどーなったか確認しておきたいからな。
そして裏門に到着。呼び鈴の紐を引く。
と、しばらくして門が開いた。
「オウ、ソースケか」
と、出迎えたのは、ハルジーだった。ちっと眠そう?
「で、今日はどうだ?」
「へへっ、この通り。五頭捕まえたぜ。それも一頭はボス格さ」
大八車を示す。
「おおっ、やりやがる。お前の様なのがこのギルドに入ってくれて嬉しいよ、俺は」
もっとホメてくれ。ホメられたらホメられただけ伸びるタイプなんだ。……多分。
「次も任せてくれ。それと……いい仕事、期待してるぜ」
「スマン。それは保証しかねる……」
「おおう……」
無い袖は振れねェか。ま、しゃーない。
「ところで置き場の件、どーなったん?」
「ああ、アレか……しばらくは使っていいそうだ。イロイロあったせいで、まだ買い手がつきそうにも無いからな……」
ゾンビ騒動に売主が変死、ついでに異臭騒動で……と。まぁ事故物件だわな。
最後のは俺のせいだが……。
エスリーンの視線がイタい。
「じゃあ、ありがたく使わせてもらうよ」
「オウ。これ鍵な」
裏門の鍵を受け取った。
あの納屋がある裏庭へ通じる門だ。
「じゃあ、これから大熊亭へ行ってくるぜ〜」
「ああ、よろしくな」
ハルジーに見送られ、俺達は酔いどれ牛を後にした。
「……ちょっと、いいかしら?」
少し歩いたところでエスリーンが口を開いた。
「ん?」
「一旦宿に戻らない? ちょっと気持ち悪いわ」
「ああ、そーだな」
血を浴びちまったからな。一旦宿で身体を洗おう。
丁度大八車の置き場所も出来たコトだしな。
――旧ベルガント邸
裏門の鍵を開くと、そこはベルガント亭の裏庭だ。
こうして何度も来ると、この家にも愛着が湧くな。
とりあえず一旦軒下に大八車を置くと、また鍵を閉める。
そして身軽になった俺達は金の鸚鵡亭へと向かった。
「おかえりなさい」
シャーリアのおっさんが出迎えてくれた。
「さっきグラームから聞きましたよ。義兄の命を救ってもらい、ありがとうございます」
「兄を助けていただき、ありがとうございます」
主人夫婦がそろって頭をさげる。
「いいですって、これも仕事のうちですし。……なぁ」
「ええ。それに、私はここで拾ってもらった恩もあります。少しは恩返しできてよかったです」
と、エスリーン。
そーだったな。
「あー、そうだ。少し早いけど、風呂場使わせてもらえます? ちっと血で汚れちゃって……」
「はい、すぐに用意します!」
店主夫婦は急いで奥へと向かった。
ありがたい。これで血の臭いともオサラバさ。
――浴場
用意されたたらいのお湯で身体を洗い、そして拭く。
血の臭いが落ち、さっぱりした。
でもゆったり風呂に浸かりたいよな〜。まぁ仕方がねェケドさ。
エルズミスあたりなら宿にも浴場が備え付けられてりするらしい。一度は行ってみたいトコロだ。
以前はこの街にも何箇所か公衆浴場があったらしいケド、聖堂騎士団のせいで閉鎖されてるそーな。
貴族とか上流階級向けにはやってるところもあるらしいがな。あと、裏通りにも。
ちなみに裏通りのは、アレなサービスもアリな店だそーな。
以前ハルジーのおっさんに教えてもらったが、エスリーンにニラまれて詳しい場所までは聞けずじまいだ。あ〜あ。
それはそーと……
腹のあたりを撫でてみる。
……ふむ。
イイ感じに腹筋が割れてんな。MODで強化されちゃあいるが、素の部分の筋肉もついてきたかな?
腕を曲げ、力こぶを作る。
……おっ、なかなか。
調子に乗ってボディビルダーっぽく色々ポージングをしてみる。
……まだダメだな。ちと細すぎる? もっとこう背筋を鍛えて……
って、ナニやってんだ俺……
一方、薄い壁を隔てた向こうではエスリーンが身体を洗ってるワケだが、どーもオカシイ。いつもより妙に時間がかかってるんだよな。時々当惑した様な独り言が聞こえて来る。
「どーした? ナンか手間取ってるよーだが」
服を着終えたところで声をかけてみる。
「あの、ちょっと……身体が変に強張ってしまって、うまく洗えないの」
「へ?」
……まさか、リラが抵抗してるとか?
昨日1日リラとして行動したせいで、彼女の身体への支配力が強くなってんのかな?
「大丈夫か? ナンだったら手伝うぜ?」
昨日も洗ってやってるしな。全部。
「……それはイヤ」
そりゃそーか。
とかいいつつ、こっそり“透視”でその姿を見る。
身体を洗おうとする手が妙に痙攣したりしてる様だ。
あー、やっぱしリラが抵抗してんな。そこまでして嫌がらんでもよかろーに。
元は猫だから仕方がないのかもしれんケド。
まーこれ以上覗いてても仕方がねェ。食堂でナンか飲みながら待つか。
「早く出ろよー。食堂で待ってるからな」
「分かったわ。……もう、どうしたのよ一体……」
こりゃ時間がかかりそーだナ。
つか、とっとと洗い終えた方が、イヤな思いをする時間は短く済みそーナンだが。
――しばし後
食堂で茶を飲みつつくつろいでいると、エスリーンが戻ってきた。
「おまたせ」
その顔は妙に疲れている。
「おう。……何か飲む?」
とりあえず聞いてみる。
「後でいいわ。時間とっちゃったし」
「そっか。一体どーしたん?」
「何か身体が重くて……どうしたのかしら」
「ふむ……今も?」
「いえ……どういうわけか、大丈夫みたいね」
彼女は己の手を見た。
「ナルホド、病気とかじゃなさそーだね。もしかしてトラウマとかあるん?」
「特にないわ」
そりゃそーだ。あるとしたらリラの方?
「……とりあえず、今日はもう休んどく? 大熊亭には俺一人で行くからさ」
「もう大丈夫よ。行けるわ。……ソースケの監視は必要でしょ?」
「おう……」
ハハ……そーいうアツカイなワケね。




