まさかのライバル出現!?
――東門
大八車を引いて酔いどれ牛を後にした俺達は、門へとたどり着いた。
アルタワールの東には遊牧に適した草原が広がっている。そしてその一角、昨日オオヤスデを捕獲した森に近い側に、スノリゴスターが出没する荒地があるのだ。
門前は閑散としており、衛兵が暇そうにたたずんでいるだけだ。
羊飼い達は朝の早い時間から羊を連れて門を出て行くからな。
とりあえず俺達は、まずグラームのおっさんとの合流を目指す。遊牧ルートは昨晩聞いてあるので、それに先回りする形で荒地を目指すってワケだ。
おっと、そうだ。
一応昨日のオオヤスデ捕獲でレベルアップしたんだったな。
現状はこんなカンジだ。
おそらくスノリゴスター相手の戦闘じゃ、それほど苦労はしないだろう。
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名前 : 仁木壮介 性別 : 男 種族 : 人間 経験レベル : 9 身長 : 166cm 体重 : 53kg
体力度 : 22 耐久度 : 22 器用度 : 26 敏捷度 : 20 幸運度 : 16
精神力 : 20 精神耐久度 : 18/18 知性度 : 16 知恵 : 14 魅力度 : 14
HP : 53 / 53 MP : 47 / 47 / 47
攻撃修正 : +37 回避修正 : +35 速度 : 速 魔法修正 : +35 魔防修正 : +33 / 33
スキル : 剣術7 投擲術1 格闘3 黒魔術3 神聖魔法2 危険感知 2 暗器術 1
所持金 : 571458 経験点 :4564
武器 : 聖剣 ナイフ2 匕首 防具 : レザーアーマー
装備 : 服 リュック 所持品 : スマートフォン 魔導石1
言語 : トゥラーン語2 ゼルゲト語1 ソアン語1 アトラス語1
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とりあえず能力値は体力、耐久、器用、敏捷と知性度に振り分け。
……肉体的には人外の領域に踏み入ったな。
スキルは剣術を上げ、新たに投擲術も取得した。
狩りをするんならそういう技術もあっていいだろう。さすがに昨日みたいなシチュじゃ使えんだろーケド。
門を出ると、草原を突っ切る形で大八車を引いて行く。
草地であるし、地面の凹凸も少なくないので、門を出た時点で大八車に“軽身”の呪文をかけてある。まぁ藪の中じゃないんで、昨日よりはラクか……。
しばらく行くと、遠方にチラホラと羊の群れが見えてきた。
うーむ、どれがグラームのおっさんの群れかはワカラン。
まぁでも、昨日決めた集合場所まで行けばいいだろう。
――そうして進む事しばし
「あそこじゃない? あの木があるところ」
エスリーンが前方を指差す。
そこにあるのはなだらかな丘。そしてその上にはモミの木っぽい大木が一本生えている。
そこは羊飼い達が休憩場所として使う場所の一つだそーな。木陰で寝っ転がると気持よさそーな場所だな。あそこで弁当食うのもいいかもな。
俺達は昨日、そこを集合場所に決めていたのだ。
「あの場所だね。で、グラームのおっさんの群れは、っと」
近くに来てるハズだ。
周囲を見回してみる。
と、丘のふもとに一つの群れがあった。
「あの群れがそうかな?」
「他に群れは見えないし、きっとそうよ。でも……何かおかしくない?」
「ん? ああ、確かにな」
移動速度が妙に速い。統制も取れてないように見える。
「……マズいかもしれん。行くぞ!」
俺は大八車を置き、走り出した。エスリーンもそれに続く。
おおっ、速い速い。このまま地球に戻ればオリンピックにでも出れるんじゃねェかってスピードだ。あっという間に群れの所までたどり着く。
「大丈夫ですか?」
何とか群れをまとめようとしているおっさんを見つけ、声をかける。
見ると、やはりグラームだった。
頭や脚から血を流している。ひどい怪我だ。何にやられたんだ? まさか、スノリゴスターが出たんか?
「ああ、君か……。出たんだ、ヤツが」
チッ、こんな場所でか。荒地はもっと向こうのハズだぜ?
「ヤツは、どこです?」
「あっちの方だ。もしかしたら、息子もいるかもしれん。すまんが……」
「分かりました! エスリーン、治療を!」
「わかったわ!」
追いついた彼女に言い置くと、俺はサーベルを抜き、また走り出した。
しばらく走ると、数頭の羊と二頭の牧羊犬、そして一人の少年が目に入った。
14,5ってトコか? 俺より少し年下の少年だ。この世界じゃそれくらいの年でもフツーに働いてるんだよな。
少年は棒を持ち、犬とともに何かと対峙していた。勇敢だな。腰が引けてるのは仕方がなかろう。
少年達に、今まさに襲いかかろうとしているのは……
ワニ? いや、ワニにしちゃ頭部が短い上にミョーに脚が真っ直ぐで長く、しかも身体の下についてる。犬とかみてェな姿勢だ。
って、アレがスノリゴスターか!
でも何でこんな場所に? 生息域はもっと向こうじゃあ……。
いや、そんなコト考えてるバヤイじゃネェ!
「俺が食い止める! 逃げろ!」
「は、はい!」
少年に声をかけると、スノリゴスターに斬りかかる。
「ガアッ!」
ヤツは怒りの咆哮を上げつつ、飛び退いてサーベルをかわした。
「チッ……」
体長は、尾も含めて2メートル少々か。ガタイはデカいが意外とすばしっこい。
「さぁ、来やがれ!」
軽くサーベルを振って挑発。
「ゴアァ!」
効果覿面。飛びかかって来やがった。
長く伸びた牙を剥き出しにし、食いつかんとする。
あの牙に貫かれたら、大量出血は必至だ。下手すりゃ即死もあり得る。おっさんは運が良かったか。
だが、俺には通用しねぇ。
当たらなきゃ意味ねェからな。
食いつかれる直前にステップバック。
そしてヤツの牙は空を切る。
目標を見失い、戸惑うヤツ。
そこにすかさず一太刀。
サーベルはヤツの肩口を襲い、分厚く鎧を思わせる皮膚を易々と斬り裂いた。
「ガアッ!」
怒りの咆哮。そして突進。
だが、それをかわしざまにサーベルを振り抜いた。
そして、喉元から吹き出す血。
致命傷だ。
そして更に脳天に一撃を入れ、トドメを刺した。
ヨシ、まず一頭。
……おっと。
「大丈夫か?」
少年に声をかける。
「はい。ありがとうございます。ところで、父は? ヤツに噛まれて酷い怪我をしたみたいですが……」
「ああ、俺の連れが治癒魔法をかけたよ。心配ないと思う」
「そうですか……ありがとうございます」
少年は頭を下げた。
と、そこにエスリーンとグラームのおっさんが来る。
「おおっ、シェイル。無事だったか!」
「父さんこそ!」
走り寄り、少年を抱きしめるおっさん。
何はともあれ、両者が無事でよかった。ナンかあったら責任感じちまうゼ。
「あなたも怪我はない?」
両者が離れた所で、エスリーンが少年に問う。
「は……はい、大丈夫です!」
と、頰を赤らめるシェイル。
……ン?
「綺麗な人だ……」
オイオイ。
「やらんぞ」
ヤツにだけ聞こえる低い声で、ぼそりと言う。
「は、ハイ!」
引きつった顔の少年。
そのまま後退り、羊達の方へと行った。
「何を話してたの?」
と、エスリーン。
「いや……特に何も」
「そう……。サライさんの甥っ子だっけ。結構可愛いわね」
「お、おう……」
って、まさかのライバル出現!? ……ではないと思いたい。




