無論、可愛い子限定で
――しばし後
大八車に積んであった桶に、池で汲んでおいた水を入れて頭と顔を洗う。
万一のコト考えて汲んでおいてよかったぜ。さもなきゃ、ここでは貴重な飲料水を使うハメになるトコロだった。
何といっても“浄化”を使っても落ち切らねェ、ガンコなニオイだしな。
「どう? 臭い、落ちた?」
『う〜ん……臭いな』
と、リラ。ナンか衝撃を受けたよーな顔は、フレーメン反応……であると信じたい。
「そっか……」
とりあえず、もう一度ゴシゴシと。
……でも洗いすぎて、ちと顔がヒリヒリと痛い。
一応市場で買った石鹸も使ってるんだがな〜。シナモンっぽいイイ匂いのするヤツなんだが。
『おっと、すまない。その石鹸の臭いがちょっとね』
「そっちかよ!」
……早く言ってくれぃ。
まー確かに電車の中とか、柔軟剤の匂いがむしろ悪臭レベルになってるコトもあるケドさ〜。まさか俺が言われるとは思わなんだぜ。
じゃあ、頭と顔はもういいってコトだナ。
とりあえずこの石鹸水の中にマントを放り込み、軽く手揉みしたらしばらく放置だ。
顔にはエスリーン用に買った化粧油を塗っておこう。椿みたいな植物の油を加工したモノらしい。カサカサ肌に効くかもしれん。
……よし、と。ちとヒリヒリ感が治まった。髪にもつけとくか。あんだけゴシゴシ洗ったんだから痛んでるかもしれんし。
『ふむ……いい匂いだな、それは』
ってリラよ、その舌で頰を舐めんな! 痛ェがな……
そして、洗ったマントを干し終えた頃合い。
『そろそろ昼だ。昼食にしようじゃないか』
と、リラが言う。
ああ、そんな時間か。イランことやって時間つぶしちまったな。
とりあえず、火を起こした。そして以前買った干し肉や、ハルジーのおっさん謹製のベーコンを木串に刺して炙る。
おおっ、イイ匂いだ。ベーコンの脂と肉汁がジュウジュウいってやがる。
ふ〜む、次は鍋とか持ってきてもイイかもな。とりあえずシチューっぽいモノなら、俺でも何とか作れそーだ。多分。
『美味そうだな……』
リラがよだれを垂らしてら。
「ほれ。コイツはイイ頃合いだゼ」
『おおっ、すまないな』
リラはすぐさまかぶりつき、貪る。
女の子としてはどーかと思うが、その食いっぷりはケッコーいい。
「ほらよ、もう一本」
焼きあがったヤツを彼女に差し出す。
『ありがとう』
そうしてあっという間に二本目を食べ尽くす。
『あ……その、すまない。私だけ食べてしまって』
「いいってコトよ」
まー、女の子が美味そーに物を食べる姿ってのは可愛らしくてイイ。
しかもちっと恥じ入った表情もナカナカ。
さて、俺も。
厚切りのベーコンを取り、かぶりついた。
美味い。肉の旨みと脂の甘みがなんとも言えん。それに、汗を流した後だとこの塩味は丁度イイ。……半分近くは冷や汗だった気もするが。
あー、エールか何か持ってくりゃよかったかな? ……いや、それじゃ仕事にならんか。
ハラが減ってたせいもあるだろーが、この味は格別だ。
ナンっつーか、キャンプしてるみてェだナ。中学校のトキに学校で行ったっけ。班で作ったカレーがイマイチだった思い出が……。
それはそうと、干し肉もイイ感じに焼けてるな。
これもいってみるか。
――食後
さて……ハラも膨れたし、もう一仕事だ。あと数匹は捕まえんとな。
そしてまた、オオヤスデの追い込みにかかる。
また追い込み具を引き、弧を描いて走る。
『ソースケ、もう少し右だ』
リラの指示。
先刻の追い込みの時、彼女はその優れた聴覚でオオムカデ特有の歩行音を聞き、覚えたとか。
そのおかげである程度の位置が分かる様だ。
こりゃズイブン捗るな。
「おっしゃ、この辺りだな!」
彼女の指示したあたりを半円形に走り、追い込む。
と、また落ち葉が盛り上がり、オオヤスデが飛び出した。
ヨシ。
俺はすかさずその進行方向へと回り込む。
と、ヤツは音を嫌い、回頭。
おっしゃ! 上手い具合に網の方へ向いた。
そしてそのまま逃さぬ様に追い込んでいく。
ヘヘッ、人外に近いレベルの脚力を見よ。逃がしやしねェぜ!
必死に逃げようとするオオヤスデ。前方の異変に気付いたのか、方向転換しようとしやがった。
だが俺は素早く回り込み、逃さない。
そして奴は、そのまま網に突っ込み、絡みついた。
「オシ! 二匹目!」
それをリラが手早く処理。
そして二人で大八車に積む。
そうする事、さらに三度。
日が傾く頃には、大八車に五匹のオオヤスデが積み上がった。
今は……おそらく午後四時半ぐらいか?
よしよし。こんなトコロだろう。今までの連中は、一回平均三匹少々だっていってたしナ。
上出来、上出来。
「じゃあ、戻るか」
『ああ、そうだな』
リラも応じる。だが、心なしか名残惜しそうだ。
「また、来ようぜ」
『……そうだな、ありがとう』
そして俺達二人は大八車を引き、元来た道を戻る。
これだけの荷物を積んで道無き道を行くには少々問題があるので、大八車には荷物ごと“軽身”の呪文をかけてある。振動で臭い液が漏れたりしたら、街には入れてもらえんだろーからな……。
ついでに布をかけて荷物を隠しておく。
流石にこのまま街に入ったら、阿鼻叫喚だ。皆の正気度がガッツリ削れちまう。
俺はもー慣れたからいーケド。
つか、いくらナンでも慣れるの早すぎじゃね? MODのおかげかもしれんケドさ。
もーちょい色々カンドーを味わいたい気もするんだがな〜。
下着とか、裸とか。無論、可愛い子限定で。




