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コレが汚名挽回ってヤツかもね

――森の奥

 休息ののち、俺は再び大八車を引いて歩き出す。

 昨晩食べたアレのおかげか、少し休んだだけでも体力がほぼ回復した様だ。

 小川の水源と思しき池を越えると、そこが道の終端だ。ここから先は、道無き道を行かねばならねェ。しかも落ち葉が厚く積もっており、足元も少々おぼつかん。

 流石の俺でも、ココをこのまま大八車で行くのはホネだ。

 とりあえず“軽身”の呪文を大八車に使い、軽量化だ。

 パイプフレームとか使えば大元の重量を軽減できるかもしれん。が、それは戻ってからだな。

 そして蛮刀で枝などを伐採しつつ、森の奥へと進む。

 途中イノシシと遭遇したが、向こうが避けてった。

 もし襲って来てたら、今晩はシシ鍋が食えたかもしれんナ……。ちとザンネン?



 そうして進むこと小一時間。

 前方に小さな丘が見えて来た。

 ヨシ、到着〜。

 とりあえず、丘の麓にある、小さな窪みへと向かう。

 あれ? 人影が二つ見える。同じよーな依頼を受けて来たヒトかな?


「すいません、お邪魔します」


 声を掛けてみる。

 一応用心した上で、だ。何せここは狩りに許可がいる場所だ。密漁者であれば、俺達を襲おうとするかもしれんからナ。

 が、返事はない。それに……ナニかおかしい。

 それに、この感覚……“瘴気”か?


『ソースケ、彼らは……』


 くぼみの中で座る、狩人と思しき格好の男達。しかしその顔は変色し、所々骨が露出していた。


「ああ。ヤツらは……ゾンビだ」


 二体のゾンビは俺達の方をふりむくと、ゆっくりとした動作で立ち上がった。そして、ナタや弓を構える。


「チッ……仕方ねェか」


 想定していなかった戦いだ。だが、やるしかねェ。



 俺はサーベルを抜き、駆け出した。

 同時にリラが、印を結ぶ。


『“光弾”!』


 光の矢が宙を飛び、今まさに矢を放たんとするゾンビを撃ち抜いた。

 俺を狙った矢は、あらぬ方へと飛び去っていく。

 そして俺は、ナタで切りかかって来たヤツの胴を薙ぎ、更にその余勢を駆って、弓持ちを斬り捨てる。

 両者は堪らず倒れ伏した。


「オシッ! ……リラ、頼む」

『承知』


 そして、リラが“浄炎”でトドメを刺し、そして俺が水魔法で鎮火。

 あっけなく、戦闘終了。

 経験点は112点。腐敗も進んでたし、まーこんなトコロか。

 合計4392点で、Lv9までもーちょいだ。

 形見のナタと弓は拾っておこう。

 ちなみにこのゾンビ達の作者はフィルズ・ロスタミ。どーやらゾンビを使って狩りをしていたよーだ。まさかと思うが、この二人って、以前から依頼してた狩人か? ソイツらを殺して使役してたのかもしれん。

 どこまで堕ちてたんだ、あのヤロウ。

 もしかしたら、どこかにヤツの作ったゾンビが、まだ潜んでいるかもしれんか。

 とりあえず骨を小さな壺に詰めて持ち帰る事にした。それぞれの壺に、弓とナタをくくりつけ、しまっておく。

 もしかしてダムロンのおっさんに聞けば、届け先の遺族が分かるかもしれん。

 


 ……さて。気を取り直して、だ。

 祈りをすませると、狩りの準備にかかる。

 とりあえず、絡み綱を用意。

 通常サイズのヤスデなら捕虫網で十分だが、何せ3mサイズだ。設置した網で脚を絡めて獲るしかねェ。

 それらを腐葉土の上に敷き、音でヤツらを追い込むってワケだ。

 ……ちなみに窪みの中にも同じ様な道具一式が用意してあった。やっぱしあの連中がココで狩りをしてたのか。

 リラと協力して数カ所に網を張ると、俺は早速オオヤスデの追い込みにかかる。

 連中が苦手な音と振動を発生させる道具を地面に置き、それを引っ張って回るのだ。

 まぁ、少々マヌケな図ではある。本来は複数人でやるらしいがな。あるいは馬に乗るか、だ。

 そーいえばあのヤロウがどんな顔してコレやってたんだと思ったが、ゾンビ使ってたのかヨ。

 ちなみに魔法なりなんなりを使って追い立てるって手もあるが、そーいったやり方はご法度だそーな。大量のオオヤスデがここから逃げ出し、街へと入り込んで阿鼻叫喚になったコトもあるそうで……。

 ……うっかり想像しちまったゼ。

 まぁ、ソレはいい。

 とりあえず網の設置箇所から50メートルほど離れた場所へ行き、追い込み用の道具を下ろす。そして腰に巻いた縄でそれを引っ張って回る。

 網を中心に大きく半円を描いて走る。そして次第に網へと近づいていく。

 さっきの騒動で、ココから逃げてなきゃいいんだがな……おっと!

 落ち葉の一角が盛り上がった。ヤツか!?

 すぐさま逃さない様に回り込む。

 にしても、オオヤスデって、一体ドンな……

 と、その頭部、続いて胴体が姿を現した。

 その姿はヤスデというよりも平ぺったいダンゴムシ――ワラジムシっつーんだっけ? ゾウリムシは違うよな?――っぽい。

 それよりも、一番似てるのは……


「アースプ……なんだっフガッ」


 名前忘れた上に、興奮のあまり舌まで噛んじまったよチクショウ。走りながら喋っちゃイカンね。

 思わず口を押さえてしゃがみ込む。あーカッコ悪ィ。


『大丈夫か!? ソースケ!』


 心配気なリラの声。

 ダイジョーブだっつーの!

 えーっと、古代のオオムカデだかオオヤスデだかに似た生き物だ。古代生物の図鑑で見たな。

 まー、そのモノかどーかはともかく、それによく似た生き物をこの目で見るコトが出来るナンて思いもしなかったぜ。異世界バンザイ!

 さーて、この手で見事に捕らえてやるゼ。さっきはカッコ悪ィところ見せちまったしな。

 俺は迷わず突進し、ヤツの身体に手をかけ……


『あっ、ソースケ! 何を……』


 リラの声。

 ダイジョーブだって、こんぐらい。どんなに怪力だろーと……って、


「うぷえっ!?」


 臭っ! ナンだコレ?

 ……しまった! ヤスデって臭い液出すんだっけ。

 クソッ! またかよ!

 ケド、昨晩のラジュフォンの黒灰汁漬けに比べりゃまだまだマシだ!

 俺は強引に掴み上げ、網の上に投げ捨てた。

 網に絡んで足掻くアーロスなんちゃらモドキのオオヤスデ。アカシックレコードによれば、ヴルグントオオヤスデというらしいな。ちなみにヴルグントとは、この辺りの旧地名だそーな。

 動けば動くほど、ヤツの脚に細かい網が絡んでゆく。

 多少脚はちぎれるかもしれんが、その程度じゃ商品価値は落ちねェしナ。

 そしてリラが手早くヤツを締める。

 ワタは抜くらしいんで、生け捕りにして絶食させる必要はないそーだ。

 にしても、だ。

 マントのおかげで鎧は難を逃れたものの、顔や髪に臭い液を浴びちまった。

 ミスを帳消しにしようと思って更にミスを重ねる……

 コレが汚名挽回ってヤツかもね。あ〜あ。

人物、用語など

・アースロプレウラ

 古生代石炭紀に生息した、巨大な節足動物。ムカデやヤスデの類縁とされる。節足動物としては史上最大級。森の中に住み、その植生は植物食であったと推定されている。

・ヴルグントオオヤスデ

 アトラス大陸中部(ヴルグント地方)の森に暮らす巨大ヤスデ。アースロプレウラとの類縁関係は不明。防御のために刺激臭のある液体を放つ。食用にもなる。

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