↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/212

やっぱ頼りなく見えるんか?

――しばしのち

 去って行こうとしたトゥラミシュを呼び止め、ナースィルを紹介してもらう。

 彼女はまだ用事がある様なんで、去って言っちまった。残念。

 つかさ、ナンでまたツネるよエスリーン……。

 雑談しつつ待っていると、広間の奥から一人の男が姿を表す。

 背は俺と同じぐらいだが、かなり恰幅がいい。とはいえ太ってるというわけではない。かなり鍛えてるみてーだナ。

 顔はいかついが、表情は柔かい。この辺は、宗教者っぽいところか?


「私がナースィルです。あなた方か? 私に用があるというのは?」

「はい。私はラスディンの娘、エスリーンと申します」

「ほう……」


 ナースィルは一瞬、エスリーンを値踏みする様に眺める。


「伺っておりますよ。ハリムの兄弟子の娘さんでしたな。ラスディン師とは、何度かお会いしたことがことがありますし。お父様のことは、残念でしたな」

「……はい。その事なんですが、聖堂騎士団があの塔にやってきて、周囲を封鎖している様です。私達は裏道から近づいたので、彼らと遭遇することはありませんでしたが……。騎士団の行動について、ナースィル様は、何かご存知でしょうか?」

「ふむ。あの連中ですか……」


 ナースィルは顎髭に手をやり、眉間にしわを寄せた。あの連中のことは、快く思ってなさそーだナ。

 しかしそれは一瞬の事。

 すぐに柔和な笑みを浮かべ、俺達を見る。


「そうですな。……あちらで話しましょうか」


 彼は俺たちを招くと、奥へと向かった。



――一室

 広間から離れた一室に、俺達は通された。

 そこは信者達と個人的な話をする部屋の様だ、懺悔室?

 その中央にはテーブルが置かれており、質素であるが作りのいいソファが備えらてていた。

 俺達は出された茶をすすろつつ、話をすることになった。


「アルセス聖堂騎士団、ですか……」


 茶を一口飲むと、ナースィルはふう、と息を吐いた。


「彼らは最近、慌ただしく動いておりますな。今までは時折、数人でこの街にやってくる程度でしたが、あの“火事”以来、ずっとこの神殿に駐留しております。特にここ数日は、アルタワールやヴィラールと頻繁に連絡を取っている模様です」


 ヴィラール。かつてのガンディール王国の王都だ。騎士団はこの王城を乗っ取り、本部として運用しているそーだ。


「もしかして、フィルズ・ロスタミがこの街に戻って来たのと関わりがあるかもしれませんね」


 ヤツがエスリーンを追ってこの街に戻って来たのが、一昨日の話だ。騎士団はヤツを探すべく、慌ただしく動いている、と。


「おそらくはそうでしょうな。両者は“何か”を追っている様ですが……」

「それは、きっと私です」


 エスリーンはこれまでの経緯を説明する。

 フィルズ・ロスタミの襲撃と、転移魔法による脱出。そして、俺との出会い。 


「なるほど。……大変でしたな」


 ナースィルは一つ大きく頷く。


「騎士団もフィルズ・ロスタミも、手段を選ばぬところがありますからな。この神殿でも、散々やらかしてくれましたし」

「それはまた……」


 巡礼者用の宿泊施設を強引に接収したり、書庫に収蔵されている貴重な本を無断で持ち出そうとしたりとやりたい放題だったそーな。

 『自分たちは神に選ばれし聖騎士だ』などと思い込んでいるからタチが悪い。


「そういえば、エルズミスに女神が降臨し、騎士団は異端であると宣言してんでしたっけ?」

「ええ。その様ですな。ありがたいことです。女神は我らを見捨ててはいなかった」


 ナースィルは胸の前で印を切った。


「おそらくはそのせいで、彼らも焦っている様ですな。自分達の傀儡となる姫巫女を探し出し、すげ替えようとしている。特に今の姫巫女は、ガンディール王国の最後の王女ですし。王国を乗っ取った騎士団としては、都合が悪い」


 なるほどな。彼女が自分達の体制内にいるうちは、“禅譲”で通すことも可能だったかもしれんが、今はそのコントロール下から離脱。しかも女神が後ろ盾についちまったワケで。

 どう見ても簒奪です。本当に(ry


「だからいち早くエスリーンさんを確保し、新たな姫巫女に据える必要がある。という訳ですな。今の大神殿の体制を崩すのは、彼らのみでは難しい」

「えっ……」


 見抜かれてるよ。


「以前、ラスディン師にお会いした際に、貴方を預かった時の事を聞いておりますし。無論その際に素性まで聞いた訳ではありませんが、私は長年司祭をやっておりますし、ある程度推察はつきますよ。それに……貴方の“稟質(ひんしつ)”を感じる事もね」


 へぇ……そーいうモノか。


「私が見るところ、貴方の稟質は何一つ欠けてはいない様だ。故に、今すぐに姫巫女となっても何の問題も無いでしょう。彼らはエスリーン殿を己の体制に取り込み、洗脳教育を施した上で己の傀儡にするつもりでしょうな。そうする事で、自分達の正当性を主張するのでしょう」


 うげっ、エゲツねェ……。


「私は、どうすれば……」

「ふむ……」


 ナースィルは一瞬瞼を閉じ、そしてまた茶を啜った。


「エルズミスに行き、大神殿に保護を求めるのも一つですな。もう一つは……」

「?」


 彼は一瞬俺を見る。


「いや、何でもありません。とりあえず、騎士団の力の及ばぬ場所に逃れるべきでしょうな」

「そう、ですか……」


 更に南方へと向かうか、それともエルズミスへと行くか。

 いや、待てよ。


「もしかしたらフィルズ・ロスタミはともかく、騎士団はエスリーンを特定する事が出来ないのかもしれない。だから、ヤツを倒す事ができればひとまずは……」

「ふむ。……それも手でしょうな。ですが、あの男は手練れです」


 俺を見、彼は言う。

 やっぱ頼りなく見えるんか? まぁ、しょーがねェか。

 さて、どーするか。その辺は後で話し合って決めりゃいいか。

 とりあえず、ここまでだな。

 と、エスリーンがナースィルに問う。


「父は私を誰かから預かったそうです。その預けた方をご存知ですか?」


 その問いにナースィルは一瞬沈黙した。


「いえ……聞いておりませんな。おそらくは、大神殿関係者なのでしょうが……」


 う〜む。妙に歯切れが悪い。実は知ってるのかねぇ? まぁ、いいか。

 俺はエスリーンを促し、神殿を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。