ナンかこんなんばっかだな〜
――どことも知れぬ場所
俺の意識は、暗闇の中を浮遊していた。
暗闇、とはいっても完全な闇じゃない。
時々、チカチカとした光が灯ったりしている。一体アレは何なんだろーな……。
『〜〜君、今ちょっといい? 気になる事があるんだけど』
突然上方で光が瞬き、同時に声が響く。おそらくは、大人の女の声だろう。
「はい。大丈夫ですよ。……何かありました?』
それに応える、若い男の声。
『データベースに、妙なアクセスログがあるみたいなのよね』
データベース? アクセスログ? どっかのサーバーの管理でもやってんのか?
『どこからとか、分かります?』
『一つは、この世界の中から。もう一つは、地球側からね』
地球? この世界? どーいうこった?
『地球側!? つまり……アクセス権を持っている者が、こっちに転移して来ている、と?』
『おそらくは。それは、多分……』
『“ヤツ”ですか! アイツ、まだ懲りてなかったのか……』
“ヤツ”? 少なくともこの二人とは友好的な相手じゃなさそーだナ。
『まだ断言できないけど……多分そうね。アクセス権は遮断したはずなんだけど、バックドア作ってあったみたいね』
『なるほど……そのシステムを構築したのはヤツでしたっけ。で、そっち側からの件はどうなんです?』
『さっきログを漁ってみたら、これまた妙な記録を見つけたのよ』
『……どんな記録です?』
『既存の“裂け目”を無理やりこじ開けて通った痕跡があるのよ。ちょうどあなたの転移した学校の裏山から、セルキア神殿にかけて』
裏山? セルキア神殿?
……あれ? もしかして、俺と同じ様に転移したってコト?
『それって……。そういえば、俺が戻って来た時も何か妙なログが残ってたんでしたっけ』
『そう。“彼”がこっちに転移してしまったのだけど……誰かと“交換”されたらしいのよ。オマケも付いて来ちゃったけど』
『もしかして、それで“ヤツ”がこっちに逃れたのかもしれないですよね。その後、こっちで見つけた誰かを送り込んだのなら……』
え? 待てよ、それって……
『その可能性もあるわね。もう少しログを漁ってみるわ』
『お願いします。俺はこっちでヤツを探してみますね。“アイツ”の身体を取り戻さなきゃいけないし』
『そうね。……ん?』
『どうしました?』
『ゴメン。ちょっと一旦切るわね!』
ブツン、と何かが切断された様な“音”。同時に俺の意識は“何か”に弾き飛ばされ、やがて闇に堕ちていった。
う〜ん……。ナンかこんなんばっかだな〜。
――朝
「う……ん? って、痛ェ!」
俺は目覚めた直後、頭の痛みに襲われた。
二日酔い、じゃないよな? 経験ねェけど……
じゃあ、ナンだこの痛み!?
って、コメカミあたりにコブが出来てやがる。
ナニがあったんだ、昨晩……
身を起こし……って、ナンでパン一なんだよ! 寝間着は床の上に散らばってるし……
やっぱし、酔ってテキトーに寝ちまった!? そんな、まさか……
そこまで飲んだハズはないんだけどな〜。ナンかミョーな夢みちまったし。
『やあ、大丈夫かい?』
エスリーンの“声”。
ん? 何か違和感が……
って、思い出した! リラか!
ココでよーやく昨晩の状況を思い出した。
『ああ、そうだ。昨晩は、正直すまなかった』
「いや……別に俺はいいケドさ」
……とはいったものの、この痛みはシャレにならねェ。
『すまんな。……“治癒”』
おおっ、痛みが消えていく。
大したモンだね〜、回復魔法って。
「……にしても、その状態で魔法が使えるんだな」
『ああ。エスリーンの魔力を使わせてもらってるがな。この子の魔力総量が大きいおかげで、そういう真似も出来るのさ。まぁ、この子自身はまだまだ使いこなせていないがな』
「そーいうモンか」
『ああ。姫巫女は、アゼリア様の代理人であると同時に、“器”でもあるからな。姫巫女になる資格のある者は、それだけの“力”を持って生まれるのさそれに、この子の場合は……おっと』
「へ? “器”って……ナニさ』
『その身を依代にして、神を“降ろす”事ができる存在だよ。依代となった人物の身体を借り、神が力を振るうのさ』
「か、“神降ろし”ってヤツ!?」
よくオカルト系の漫画にあるヤツだナ。
『そうだ。儀式などの際にはそうして“神託”を行うのさ』
「な、ナルホド〜」
へぇ……そーいうモノなんか。もしかしてあの占い師もそーいうコトが出来るんかな? 例えば誰かの身体を乗っ取ったりとか。
『おっと、そろそろエスリーンが目覚める様だ。服を着ておいた方がいいだろう』
「お……おう」
昨晩のコトを思い出したら、また股間が痛くなってきた気がする。
俺は慌てて服を手に取った。
――しばし後
「ン……」
微かな声。
エスリーンが目覚めた様だ。
「あ……おはよう」
俺は出来る限り平然を装い、挨拶する。
一応、服は着終わっている。ちと危なかったが。
「おはよう」
彼女はそれに答え……目を逸らした。なぜか顔が赤い。
「あ……あの……」
「ん?」
「昨日は……ごめんなさい」
彼女は頭を下げる。
「いや……いいって。タイミングが悪かっただけだしさ」
「それだけじゃない……。フィルズ・ロスタミを逃がした後、あんなコトを言ってしまったわ。私も、身体が動かなかったのに……」
「そうか……」
彼女も俺と同じ状況だったワケか。まぁ、俺よりも早く動いてたから、彼女の方がショックは小さかったのかもしれんが。
う〜ん、どうしたモンか。
「あ、そーだ。だったらこの間胸触っちまったコトをチャラにしてくれよ。それでいーだろ?」
「えっ……いいの? それで……」
「まぁな……こーいうトキは、お互い様だろ?」
「ありがとう。てっきり……」
「ん?」
「胸を触らせろとか、もっと、その……みたいな事言われると思ったわ」
「ヲイ……」
そーいう目で見られてたんかよ。
……いや、これまでの行動考えりゃ仕方ねーかもしれんケド。
そんなら……
「今からでいーからちっと触らせて」
「ちょっ……その話は終わったの!」
「よいではないか、よいではないか」
俺は手をわきわきとさせながら彼女に迫る。
まっ、そこまで期待してないケドな〜。でもやらせてくれるんならエンリョなく。
「良くない!」
と、その時……
「あの〜、二人とも。仲がいいのはわかるけど、もうすこし静かに……」
「あ……すいません」
「ごめんなさい」
再び顔を出したティシアさんに、俺達は謝った。




