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ナンかキナ臭ェ

 俺の目前にヤツが迫る。

 ヤツはフレッシュゴーレム。

 人の死体をつなぎ合わせて作った、人造生命体だ。フランケンシュタインの怪物がその代表格だな。


「グフォ……」


 ヤツは両腕で掴みかかってくる。デカいだけあって、リーチが長い。


「うおっとぉ!?」


 慌てて後ろに飛んでかわした。

 動きは遅いな。ケド、パワーはあるだろーから、捕まらんよう気をつけねぇとな。

 おっと、とりあえずアカシックレコードで照合だ。

 と、すぐさまヤツのデータが脳裏に流れ込んでくる。

 ……う〜む。

 やっぱしフレッシュゴーレムか。製作者は……レジューナ、と。

 レジューナとやらは何モンだ?

 こっちも照合。

 魔導師だそーな。どうやらココをねぐらにしていたヤツっぽいな。

 ちなみに聖堂騎士団の顧問らしーが、な〜んでこんなモンをこさえてンだ?

 ナンかキナ臭ェ……おっと!

 また掴みかかってきやがった。

 跳びのきつつ、サーベルを振るう。

 右腕にヒット。下腕の半ばまでザックリいった。

 おっしゃ、いけるな。

 着地後、すぐさまサーベルを構えて突撃。


「喰らいやがれ!」


 上段からの一振りで、左腕が落ちた。そして、もう一丁!

 横振りの一撃。手応えアリだ。

 それはヤツの右腕を斬り落とし、そして胴体にめり込んだ。


「チッ……」


 両断、は出来ねぇか!

 とっさにヤツの腹に一発蹴りを入れ、サーベルを引き抜く。

 何とか抜けた。

 危ねェ。ガーゴイル戦の二の舞にならんで良かったな。気ィつけんと。

 が、妙なカンジだったな。

 引き抜く瞬間、何かヌルって……


「……!?」


 って、ナンじゃこりゃあ!

 刀身の真ン中から先が、緑色の粘液で覆われていた。しかもちっと臭う。

 うっわ……エンガチョ。

 幸いヤツを蹴った靴は無事だ。お気に入りのスニーカーが粘液まみれにならんで良かった。

 跳びのき、サーベルを振ってソイツを落とし……って、落ちねぇ!?

 なんかブルブルと蠢いてやがる。

 ナンだコイツ!? スライムの類か?

 この世界でスライムっつえば、物理攻撃が効きにくい厄介な敵だ。モノによっちゃぁ鉄の武器防具を溶かしちまうんだっけ?

 あ〜、もしこのサーベルが普通の剣だったら、ボロボロに錆びて使いモノにならなくなったたかもしんねぇな。

 しゃあねぇ。このまま戦うか。両腕は落としたしな。

 気を取り直してサーベルを構え直す。

 が……


「……ン?」


 ヤツの様子がおかしい。身体を震わせ、何か……


「!」


 直後、切断した腕の傷口から、何かが飛び出した。

 緑色のムチ状のモノだ。

 ソイツは次第に形を変え、右は巨大なハサミ、左はサソリのよーなトゲ付きの尾みてぇな形へと変わった。そんでその表面も、ザラザラとした硬質なものへと変化する。

 胴の傷口も、そこからにじみ出た緑色の粘液によって塞がった。そしてその傷口周囲の皮膚が、いかにも堅そうなウロコ状に変化する。

 ゴーレムっつーよかキメラじゃねーか!

 しゃあねえ。そんでもヤるしかねぇ!


「オラァ!」


 大上段からサーベルをブッ込んでやる。


「グフォ……」


 ヤツの右腕がそれを受けた。硬質な音とともに刃が跳ね返される。


「クソッ!」


 見ればサーベルの刃にこびりついた粘液が固まっちまってら。コレじゃ斬れねぇ。

 と、そこに左腕のトゲが襲い掛かってくる。

 それを頭をすくめてかわすが、今度は右のハサミで掴みかかってきやがった。

 慌ててバックジャンプ。

 チッ、やりずれぇ。そンなら魔法攻撃に切り替えだ。


「喰らいやがれ……“迅雷”!」


 フレッシュゴーレムを起動させるためには強烈な電撃が使われるそーだ。つまりは魔法に対する抵抗値が高いコイツに有効な数少ない攻撃呪文っつーワケだな。

 そして、直撃。


「グフォォ!」


 俺の指先から放たれた強烈な電撃はヤツの胸に直撃し、その全身を駆け巡る。

 ヤツの四肢は痙攣し、あらぬ動きを始めた。

 カエルの解剖で、脚に電気を流すと痙攣すんのと同じリクツだな。

 そして、肉が焼けるイヤなニオイがし始める。

 筋肉を熱で壊死させりゃあヤツは動けんくなるハズ……何ィ!?

 ヤツの両腕が別の生き物のように動いて俺に襲い掛かってくる。って、粘液でできた部分にゃ効かねェっつーコトかよ!?

 つか、そーいやコイツはゴーレムに寄生した魔法生物(スライム)だったか。

 っと、弱点、弱点は、と……

 アカシックレコードによると、熱と冷気らしい。火炎系の呪文は室内じゃヤベぇ。となると……


「“大凍”!」


 俺の掌から強烈な冷気――いや、凍気と言うべきか――が迸った。

 それはヤツを氷漬けにしただけでなく、部屋自体も凍りつかせ……

 その凍気は俺をも襲った。

 うおっ! 寒ィ!

 サーベルを持つ手もかじかんでやがる。ナンの準備もなく室内で唱えるモンじゃねーナ。

 ……ン?

 見ると、刀身を覆っていた緑の粘液も完全に凍りついてた。

 おっしゃ。


「もう一丁! コレでも喰らいな!」


 サーベルを振りかぶると、袈裟懸けの一撃をブチ込んでやる。

 衝撃で、刀身にこびりついていた緑の塊が砕け散る。サーベルはヤツの左肩に喰い込むと、トゲ付きの左腕を斬り飛ばした。


「うラァ!」


 さらに踏む込みつつ左手を刀身の背に添え、体重をかけて斬りおろしていく。チト冷てぇが、ガマンだ。革手袋でも買っとくかな?

 そしてサーベルは右脇腹へと達し、ヤツを両断した。

 ゆっくりと崩れ落ちるヤツの身体。

 おっしゃ! トドメだ!


「“衝弾”!」


 俺の手から放たれた衝撃波がヤツの身体を砕き、バラバラに吹き飛ばす。

 床一面に散らばった残骸は、もはや動く気配はない。

 しかし、油断はできん。氷が解けたらスライムがまた動き出す可能性もあるか。

 俺は構えたままヤツの死体……というか、残骸に目をやる。表示されたのは……


 HP : 0


 どーやら倒したらしい。


「や〜れやれ。終わったな。……おっ?」


 残骸の中に緑に光るモノが一つ。


「おおっ、魔導石か。ラッキーだな。もらっとこう」


 魔力のブースターはいくつあってもいい。

 それを懐に収め、床に目をやる。

 ヤツの残骸が床一面に散らばっている。解けて粘液になったら絨毯が台無しだ。

 ……ちょっとやりすぎたか。

 後で文句を言われんのもシャクだし、片付けるとするか。

 とりあえず納屋にあったホーキとチリトリで残骸をまとめ、同じく納屋の片隅にあった適当なずた袋3つに分けて入れて玄関の外に出しておいた。あとは小さな皮袋に、証拠用の部位をいくつか拾ってく。

 これで一件落着、かねェ?

 いや、ヤツが現れた場所を確認しておく必要があるな。まだ他にもいるかもしれねェし。

 俺は中庭へと向かった。

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