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ゾンビ(?)さんのお出ましか

――どことも知れぬ場所

 俺は見知らぬ場所で目を覚ました。


「ン? ナンだ?」


 周囲に視線を巡らす。

 そこは、灰色の壁に囲まれた一室。白っぽい天井には白い棒状の発光体が……って、蛍光灯だなこりゃ。

 よく見りゃ天井は石膏ボードだし、壁はモルタルだ。

 こんなモン、この世界にゃ無ェよな、多分。

 ってコトは、ココは地球!?

 え゛!? まさか戻ってきちまったとか!?

 慌てて飛び起きようとするが、身動きが取れん。指すら動かねぇ。あ、目は動くみてェだな。

 どーしたモンか……

 とりあえず、視線だけ動かして周囲をうかがう事にした。

 左手の壁際にはスチールの扉が見える。そしてその反対側には鏡……いや、ガラスだな。そこから透けて見えるのは閉じたシャッターだ。足の方を見ると、空の棚が並んでいるのが見える。頭上側も同様だ。

 何か空気も埃っぽい。

 どーやらココは空き店舗か何かの中らしい。

 そして俺は、その真ん中あたりで何かの台上に寝かされている様だ。

 どーしてこうなった?

 ナンでまた戻ってきちまったんだ?

 まさか、ナンかやらかしちまっったんで戻されたとか? いや別に、おかしなコトなんかしてねぇよな?

 いや、そもそもまだロクに何もしてねーし。

 などと考えていると、視界に人の姿が映った。

 見知った顔……いや、姿だ。

 目深にフードを被った、西洋人風の顔立ちの人物。俺をこの世界に誘ったあの占い師だ。


『あんたは……』


 声をかけようとするが、口が動かない。

 チッ……

 戻すんなら一声かけてくれよ。電話かけてきたんだしさ。

 文句を言ってやりてぇが、どーにもならん。

 と、ヤツが口を開いた。


「さぁ……キミに今から“力”を与えよう。何、すぐに済むさ。心配することはない」


 ヤツは俺の眼の前に掌を伸ばす。

 ン? 今から? どーいうコトだ?

 混乱する俺。

 しかし、ヤツは構わずに言葉を続ける。


「しばらくの間、眠ってもらおう。目が覚めたら、君は大いなる“力”を手に入れた、世界を変えうる存在となるのだ」


 掌から、“力”が放出され、俺の脳の中へと浸透していく。

 段々思考が鈍り、強烈な眠気が俺を襲った。

 そしていつの間にか俺は深い眠りに落ちていく。

 しかし、その直前、ヤツの口元に奇妙な笑みが浮かんだような気がした……。



――夜半

 おそらくは零時をまわったあたりで目を覚ます。

 ステイタスは……HP、MPとも全快だな。精神耐久度も。

 グッスリ眠ったおかげだな。

 よしよし。

 相手はゾンビだ。ナマナマしさによっちゃあまた精神耐久度もケズられかねんし。

 ん〜〜? ナンかミョ〜な夢を見た気がするんだが……ロクに思い出せねぇ。

 あの占い師が出てきたよーな、ないよーな……

 “力”を与えるだの何だの……

 …………。

 う〜む……。ま、いっか。

 それはそーと……そろそろかねェ?

 俺は窓から外の様子を伺った。

 静かだな。

 夜中まで活動を続ける日本の都会と違って、皆寝入ってんだろう。街の明かりもないんで、星も綺麗だ。

 ……ン? ナンか音が聞こえるな。母屋のほうか?

 出やがったか? なら、早速行動開始だ。

 すぐに装備を整え、納屋を出る。そして足音を忍ばせ母屋へと向かった。

 “暗視”の呪文を使い、視界を確保。

 玄関の鍵を開け、邸宅内へと入る。扉が開く音が、やけに不気味に響く。

 チッ、“無音”の呪文でも使えばよかったか?

 いや、相手はゾンビ(?)だし、意味ないかもしれんか。

 さて……

 サーベルを抜くと息を潜め、慎重に歩を進める。

 とりあえず、ホールの中では気配を感じない。

 さて、あの音の主はどこにいる? とりあえず、また各部屋をチェックしてみるか?

 と、その時、


「……!」


 妙な気配がした。

 この方角は……中庭か。

 目を凝らし、中庭を伺う。

 う〜ん……今ンところ、不審なモノは見当たらねェんだがナ……。

 とりあえず、中庭に降りてみるか?

 適当な掃き出し窓に向かい……

 ……ン? 妙な気配がするな。

 微かに魔力の流れを感じる。噴水のモノとは違うようだ。

 う〜ん……アンデットモンスターは“瘴気”を発するって話なんだが、俺にはその“瘴気”とやらは感じたことねぇんだよな。転移してきたばっかだし。

 アカシックレコードによれば、寒気とか怖気とか、そういうモノを感じるらしいんだが、あっちからはまだそーいう感覚はない。

 そもそもアレはゾンビなんか?

 まぁ、ゾンビつってもいろいろなタイプがあるみたいだしな。

 呪術などによって蘇った死者というのが一番多いパターンだが、完全に死んでないのもいるそーな。

 魔法や薬物で思考を奪ってロボット状態にされたのもいるとか何とか。

 まぁそういう半ナマタイプはかなり希少らしいんで、除外しても良さそうだな。

 ……おっと。

 また何やらゴトゴト音がするな。さっき聞いたのもこんな感じの音だった。

 足を止め、様子を伺う。

 何かいやがるな?

 見ると、中庭にあった礼拝堂の中で、異変が起きた。

 女神像の足元にある祭壇がスライドし、その下にある穴があらわになった。そしてそこから何かが這い出してくるよーだ。

 ゾンビ(?)さんのお出ましか。あんなトコロに隠れてやがったのか。

 数は1。コッチに向かってやがる。

 とりあえず、戦うのに適した場所に移動だ。

 玄関近くへとゆっくり退却。

 ……こっちに向かって来たな。

 周囲を確認し、サーベルを構える。

 そしてしばしのち、ヤツが姿を現した。

 身長は2mをゆうに上回る大男。血色は悪く、ボロい服をまとっているところなどはゾンビっぽい。

 しかし、身体のバランスがヘンだ。頭や手足が妙に小さいし、胴も細い。普通の大男なら、もっとその辺がっちりしてるよな? それにアチコチにある縫合跡、そして何箇所かから突き出た金属の端子。


「コイツは……」


 ゾンビじゃねーな。そうだ、アレか。


「フレッシュゴーレムってヤツか!」


 俺は思わず叫んでいた。

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