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まずは下見だ

――旧ベルカント邸

 俺は、依頼物件の建物の前へとやってきた。

 このベルガント邸は、石造りの、豪邸と言っても差し障りのねぇ規模の家だ。築45年。一代で財をなしたっていう豪商ベルガントが建築したモンらしい。しかし二代目はパッとせず、しかも魔王戦役の際に被った損害が元で身を持ち崩して結局手放す羽目になったそーだ。ま、よくあるこったな。その後、妙な魔導師が一時期ねぐらにしたりしていたが、それ以来買い手がつかず、今に至るっつーコトらしい。

 おそらくその魔導師がナンかやらかしたせーで、ゾンビなんぞが出るようになったんかねぇ?

 まっそれはともかく、まずは下見だ。

 間取りとしては、中庭のあるタイプの家だそーな。門から入ってすぐのところに玄関がある。表から見る限り、建物は敷地一杯に建てられているみてェだな。しかも、外側に向いた窓は少ない。多分、明かりは中庭から取り入れてるんだろーな。

 魔道師が目をつけたのも、その間取りのせーかもな。窓が少ないっつ〜のは、アヤシゲなコトやってても、外から覗かれにくいってコトだしな。



 まずは外から見とくか。

 とりあえず、塀と壁の間を通って家の周りをチェックだ。狭ェ……

 人一人が通るのがやっとな隙間を抜けて、玄関の反対側へと出た。

 おっと、裏庭もあるのか。こっちはそれなりにスペースが確保されてんな。

 そして、その裏庭の片隅に小さな小屋を見つけた。

 なんだ?

 扉を開けて中を覗いてみると、椅子やらテーブル、食器棚を始めとする家具やら雑貨が置かれてる。

 納屋か。……そーだな、ここで夜になるまで休ませてもらうとすっか。

 その後も家の周囲を探してみたが、特にめぼしいものはなかった。



 後は、内部だな。とりあえず、預かった鍵で玄関扉を開けてみる。

 鍵は無事開く。そして、重厚な扉が軋みをあげて開いた。

 おおっ、ナンか本格的だねェ。ホラー映画みてェだ。夜な夜なゾンビが出るし、演出にはちょうどいい。

 玄関を入ったところにはホールがあった。大理石の床。何やら高そうなジュータンが敷いてある。壁や天井の造りも結構豪華だな。

 その向こうには中庭が見える。その中庭を囲むように廊下があり、その外側に各部屋がある様だ。

 そしてこのホールは吹き抜けになっており、二階へと向かう階段もある。こっからじゃよく見えねぇが、二階も一階と似たよーな構造になってんだろう。多分。

 さ〜て、どっから探ろーかねぇ。

 ……まっ、とりあえずは右側からだな。

 まずは木製の、装飾付きの扉を開ける。

 ちっとした装飾品が飾ってある、わりかし豪華な造りの部屋だ。応接間か何かか?

 ケド、金目のものはほとんどなさそーだがな。多分売っ払っちまったんだろーな。

 んで、次だ。

 今度は簡素な扉だ。

 ……空だな。棚とかあるから、元は納戸だったっんかな? 窓もないし。

 ま、いーや。特に何もなさそーなんで、次行こう。

 これまた質素な隣の扉を開ける。

 カマドっぽいモノがあるな。

 ふむ。どーやらこっちの部屋は厨房らしい。

 っツーコトは、さっきのは食料庫か?

 で、その向こうの、ホールと対面にあるのが食堂らしいな。

 食堂は、かなり豪華な作りだった様だ。

 ここも吹き抜けになっており、天井からはシャンデリアが下がっている。

 ま、調度品がほとんど残ってねェんで、今は寂しー限りだが……

 とりあえず、今度は左側だ。

 食堂から、反対側の廊下へと向かう。

 三つほどの部屋があるが、どれも作りは簡素だ。ベッドなどが置いてあるところからして、使用人の部屋かねぇ。それと、風呂とトイレも。

 ふむ。これで一階は全部見たな。さて次は上だ。

 階段を上がり、二階へと向かう。

 二階はやはり、この家の主人と家族の部屋のよーだ。もしかしたら客人用の部屋もあるのかもな。

 そこそこ豪華なベッドなんかがある。

 ……壁に四角い色違いな所があったり、絨毯の一部が不自然に凹んでたりするのは、元々そこに絵や家具、彫刻かなんかがあったんだろーな。寂しー限りだねェ。

 おっと、そーいえば中庭もあったな。とりあえず、二階の廊下から眺めてみる。

 中庭には小さな池があり、その中央には杯を重ねたような形の塔状のオブジェが立っていた。そしてその上から水が噴き出していた。噴水だな。

 かすかにその辺りから魔力を感じるが、噴水の動力かねぇ?

 そして、四方の柱に支えられたドーム状の屋根を持つ、小さな建物。東屋かとも思ったが、中に女神っぽい像が見えるところからして、礼拝堂っぽいか。

 ……こっから見る分には、特に不審なモノは見当たらねぇ。

 ふむ、いー家だねぇ。この世界で暮らすンなら、いずれこーいう家を買いてぇな。

 まっ、今はこんなトコかね?

 俺は一旦屋敷を出、今晩の準備を整えることにした。

 と、屋敷を出る直前、“何か”の視線を感じ、振り向く。

 しかし、どこにもその視線の主は見当たらない。

 気のせいか? それとも……

 まぁいいか。今夜その正体がわかるだろ。



――約一時間後

 俺は商店街で食料などを買い込み、ベルガント邸へ戻った。

 そして裏庭の納屋に入ると、もう一度内部を確認する。こん中にゾンビが潜んでたら元も子もねェしな。

 見たところ、特に敵が潜むところは見当たらねぇ。

 入り口は、今入ってきた扉一つだけ。窓は幾つかあるが、人間が出入りできる大きさは無ぇ。

 ゾンビっつーから人間サイズだろ。多分……

 おそらくここにゃ危険はなさそーだ。

 が、念のため……


「“索敵”」


 敵意を持った相手を探る呪文で、納屋とこの周囲をチェック。

 反応は……ナシだ。


「おっしゃ」


 安全を確認したら、“閉錠”の呪文で扉を閉める。これで万全だ。古いが高級そーなソファの上で毛布にくるまる。とりあえず夜まで仮眠だ。

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