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耳に胼胝ができるほどとは

……茉莉には荷が重かった。

「おい聞いたか?」

「ああ? Sクラスの首席と、久賀のせがれが模擬戦するって話か?」

「なんだ、もう知ってたのか……」

「もう耳に胼胝たこができるほど聞いてるよ」




―――おかしい。


 確かに模擬戦はやると言った。そこに否やはない。

 しかし、他の生徒が周囲を囲むこの状況、明らかに異常だ。

 囲まれていると言っても別に不利な状況に陥っているという訳でもない。ほぼ全員がただの野次馬だ。藍と灯花の模擬戦を見に来たのだ。

 しかしこの模擬戦、決まったのは本日の昼休み、時間にしてまだ30分と経っていない。


―――おかしい。


 一体耳に胼胝ができるほどとは、どういう状況だ?

 そう思わずにいられない。




 そもそもの経緯については完全に巻き込まれただけの形だ。

 模擬戦は構わないのだが、こうも注目されるとなると話は別だ。


 一体何故? どうしてもその疑問が頭を離れない。

 

―――遅かれ早かれ、か?


 しかし夏には学校対抗戦もある。

 現状参加するとは決まっていない――どころかCクラスであることを考えれば出ない可能性も高いが、それでも考慮には入れていた。

 と考えるならば、この状況も遅かれ早かれ、誤差であるとも言えるだろう。


 そこで思考を切り替えると共に、[槍]を組み上げた。

 茉莉とは訳が違う。[槍]がクルリと回転した。

「変わった魔道具ね?」

 目の前に立つ灯花が語り掛けてくる。

「そっちには負けるよ」

 呆れたような声で返す藍の前に立つ灯花の手に握られているのは[お札]である。

 [槍]が再びクルリと回る。

「そうでもないんじゃない? 『魔法言語』とかそのまま入れられる訳だし、便利よ」

「……『魔法言語』、ね?」

 『魔法言語』とは魔法を扱うための専用の()()である。

 言語とは言っているものの、その形は文字や音に限らない。直の魔法陣などもこれに当たる。

 最大の利点は標準語で詠唱を行うよりも圧倒的に早く済むこと。そして威力が落ちない、もしくは上がる場合もあること。

 そこだけ聞けば利用しないなど考えられないが、それでも利用しない者がいるのには当然理由がある。


 人に依って異なるのだ。


 つまり各々が独力で見つけなければならないということ。


「でも紙じゃ使い捨てだろ。準備が面倒じゃないか?」

 疑問に思ったというよりは、負けた気がしたので皮肉っただけである。[槍]をクルリと回す。

「別に、最悪印刷すればいいし」

「……そうかい」

 呆れた溜息混じりに返事する。そこまで行くと珍しいのだ。[槍]がクルリと回転する。

「で、勝利条件はどうなるんだ?」

「お互い戦闘不能にしましょう、あるいは投降」

「了解」

 承諾と共に[槍]をクルリと回す。

「そろそろ始めましょうか」

「ああ、いつでも」


 [槍]が再び、クルリと回った。

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