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平和な世界の最強勇者  作者: 白楽
第二章
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神代の遺物 ②

皆さん超絶お久しぶりです


「ぐっ!」


 内臓を貫く様な衝撃に、颯斗の身体は勢い良く吹き飛ばされる。

 未曽有の衝撃――この世界に来て、初めて体験する痛みは颯斗の力によってすぐに治癒されるが、驚きばかりが頭を占める。

 だが数秒もして痛みが消えると、すぐに冷静さを取り戻した。


「なるほど。僕は敵という訳か」


 壁に埋まった身体を無理矢理に動かし、颯斗は地面に降りる。

 目の前の全裸の女――水槽に入っていたこの女が何者なのか、という疑問は後回しにする。

 分かっている事は、未だこの女が颯斗に発する殺気に変化がなく、戦闘意欲に満ち満ちているという事だけだ。

 ならば、と颯斗はその思いに答える。


「#$%%$#」


 意味不明な言葉の羅列が女の口から発せられ、颯斗に向かって再び何かが迫ってくる。

 見えもしなかった先ほどと異なり、今度ははっきりと視認出来、颯斗は余裕を持ってソレを避ける。

 それは、魔法ではなく純粋な魔力、その塊だ。

 拳程の大きさの魔力の塊を颯斗に向かって音速よりも速い速度で放っている。

 

「残念だけど、僕には同じ技は二度も通じないよ?」

「#$%$#」

「はは、何言ってるのか分かんないや」


 颯斗が両手を振ると、無数の魔法が発動され、一気に女に向かって迫る。

 その発動速度、量ともに尋常ではない。

 無数の軌跡を残して放たれた様々な魔法は女に迫るが、その直前、女が口を動かすと女に迫った魔法は全て何かに弾かれる。

 

「それはずるくないかい?」

「#$$%#!」


 颯斗の抗議も、当然聞き入れて貰えない。

 それどころかお返しとばかりに、今度は女の周囲に無数の魔法が展開された。

 発動速度、量ともに颯斗に劣っていない。

 いやむしろ、ゼロコンマ数秒の間隔で勝っている。


「僕と魔法合戦でもしようってのかい? いいよ! ノッてあげる!」


 颯斗も再び、無数の魔法を展開させる。

 それを待っていた訳ではないだろうが、颯斗と女が魔法を放つのはほぼ同時だった。

 同じ属性、異なる属性、異なる魔法が激しくぶつかり合い、常人ではその場にいるだけで蒸発する程の濃密な魔力がこの狭い空間に満ちる。

 その余波も凄まじく、瞬く間に精密機械に溢れたこの空間が、瓦礫の山と化す。

 だがその中心にいる颯斗と女に至っては、互いに無傷のままだった。

 だがその表情は実に対照的で、颯斗は満面の笑みを、対して女は無表情を貫いている。

 

 この世界に来て、初めてといえる対等な相手が見つかったのだ。

 心を読む事も出来ず、颯斗の魔法にも相手出来る。

 それが素直に颯斗には嬉しかった。

 だからこそ、それが終わってしまうのが何よりも悔しく感じてしまう。


「こういうのを悲劇というのかもしれないね」


 颯斗と真正面からぶつかり合う、無数の魔法。

 だがその拮抗した場面に、次第に変化が訪れた。

 颯斗の魔法が、女の魔法に対してぶつかり、弾かれなくなったのだ。

 颯斗の最も恐ろしい力。

 それは心を読む事でも、望むだけで如何なる魔法も扱える事――ではない。

 

 その尋常なる速度の成長力。

 爆発的なまでの成長力は、些細なきっかけで颯斗を数段上の存在に引き上げる。

 つまり颯斗は、今この瞬間、この時ですら成長しているのだ。

 拮抗していた場合、その相手は数十秒後には颯斗にとっては格下になるのだ。


「終わりだよ」


 弾かれ、消滅しなくなった魔法が一発、女の腹部を貫く。

 それを機に、颯斗、女の魔法が一斉に消え、辺りに静寂が戻る。


「#$………%%$#」

「これは……ロボット?」


 颯斗の魔法によって貫かれた女。

 だがその内部に見えるのは、内臓ではなく複雑極まる部品の数々だった。

 それも魔法的要素が多分に含まれている。

 いわば、魔法生物と機械のハイブリットだ。


「君を造った人は、何を考えて君を造ったんだろうね」


 身動きが取れなくなった女がゆっくりとした動作で、宙に向かって手を伸ばす。

 何かが見えているのだろうか。

 何を見ているのだろうか。

 それは、きっと颯斗には一生分からない事なのだろう。


「でも、君を死なせはしないよ」


 颯斗は女が伸ばしたその手を掴む。

 そして、魔法を発動させた――






「あれ? エラノアさん?」

「ハヤト殿! 無事だったか!」


 洞窟を出ると、そこには多くの獣人と共に、エラノアの姿があった。

 エラノアは颯斗の無傷な姿に心底安心した様に、颯斗に近づく。

 だがその足取りは、すぐに止まってしまった。


「えっと……ハヤト殿、そちらの女性は……?」

「ん? あぁ、紹介するね。こちらは名前不明出自不明年齢不明の魔法生物と機械のハイブリットなユキ(仮)さんだよ。この洞窟で拾ったんだ」

「は?」


 エラノアの疑問も当然の事だろう。

 颯斗の後ろに、当然の様に立っている全裸の女。

 その説明も意味不明過ぎて、エラノアの思考が止まる。

 

「そういえば、このユキ(仮)さん服が無いんだ。出来ればエラノアさん、この人に服を貸してあげてくれないかい?」

「あ……あぁ……」

「初めまして、エラノア様。私はユキ(仮)です。この度、マスターと共に行動することになりました。マスターの身の回りの世話、下の世話まで私にお任せ下さい」

しもっ?! ハヤト殿!? 貴殿は一体、あそこで何をしていたんだ?!」

「ぐはっ!」


 ユキ(仮)の発言に顔を真っ赤にしたエラノアの拳が、油断しきっていた颯斗に見事に直撃し、鈍い音と共に颯斗が吹き飛ぶ。

 その見事なまでの一撃は、もしかしたらこの世界で初めての衝撃はこれかもしれないと、颯斗は思った。


 こうして、新たな仲間にユキ(仮)が加わる事となった。

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