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気まずい沈黙が続くが打開する話術もない。私が勝手に気まずい思いをしているだけでラディはなんとも思っていないのかもしれない。
沈黙が続いても気にならないほど心を許している、という可能性は低そうなのでそれが彼の性分なのかもしれないし、なんだか疲れてきてしまう。なんでもいいから何か喋ってくれないだろうか。
黙っているだけなのも困るしお昼に買ったパンの包みを開くことにする。ちょうど昼時だし。お腹空いてきたし。
「美味しそう」
思わず呟いていた。白くてふわふわのパンにタレの絡んだお肉がたっぷり挟んである。包みを開いた瞬間から小麦の甘い香りと肉の香ばしい香りがして余計お腹が空いてきた。
意識がパンに集中して大きな口でかぶりつく。甘辛いタレとジューシーな肉、素朴なパンの味が見事に調和している。
とても美味しい。
先ほどまで感じてた気まずさはすっかり忘れて夢中になって食べ進める。
「そんなにうまい?」
いつの間にか食事を始めていたラディに問いかけられる。
「はい!とても美味しいです。おすすめですよ」
「そりゃよかったな」
それきりまた黙ってしまう。しかし雰囲気がいくらか和らいだからか気まずさは感じなくなった。
すっかり食事も済んでしまったので黙ったままのラディをちらりと見る。
今日も白いシャツを着ているが昨日のものと違って細かな刺繍が施してある。ズボンもモスグリーンの落ち着いたものだ。サラッとしていい生地なのが見ただけでわかる。
何度見ても整った顔立ちでエメラルドグリーンの瞳が美しい。
昨日ナンパだなんてことを言っていたがラディに声をかけられたら喜ぶ女の子は多いだろう。
市場の方にそっと視線を戻す。まだまだ活気に溢れている。店によっては品物がだいぶ捌けたところもあるようだ。
「虹の雫、見れそうですか?」
そういえば見たがっていたと思って聞いてみる。
「なんのツテもないのに王城になんて行けないって」
「ツテくらい作りそうなものなのに」
本当に、そのくらいやってのけそうな雰囲気があるのだ。そうまでするほど興味があったわけではないのか。はたまた何かを隠しているのか。
「んー、まあ無茶しなくてもまた別の機会になら難なく見れそうだしさ」
豊穣祭での大広間開放の時のことだろうか。確かにそれもそうだ。
その後いくつか会話を交わしてラディはまた仕事があると立ち去っていく。
「また会えるかもな」なんて言い残して。いつまでこの国にいるのかは知らないが、なんとなく私もそんな気がした。
彼とはまた会えるだろうと。




