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歩き出した声をかけてきた男の人。その人の背中を追いかける私。
とっさに着いてきてしまったけれど、別に一緒に食事をしに行く必要はなかったのではないだろうか。
そんなことを考えつつ背中の観察をする。
やはり背が高い。鍛えているようで肩幅も広い。
白いシャツをサラッと着て、パンツはグリーンで軽くて動きやすそう。実際軽やかに歩いているから動きやすいんだろう。
髪の毛が揺れると耳でキラリと光る物が見える。
どんな顔をしていたっけ。そういえばしっかり見ていなかったので覚えていない。
思考があっちこっちしつつ足を動かしていると彼は港で一番大きな酒場へと入っていく。
扉の前で一瞬どうしようか躊躇うが結局あとに続いていくことにした。
お腹が空いているから仕方ない。
「いらっしゃい。空いてるところに座って」
酒場の店員と思われる女性が彼と私を見て言う。彼は迷うことなくさっさとひとつテーブルを決めて椅子に腰掛ける。
私はどうしようか。彼の向かいの席に座るのが正解か?
「オネーサン。早く座りなよ。またぼけっと突っ立ってないでさ」
「ぼけっとしてるわけでは!座ります、はい座ります!」
なんて失礼なんだろうか!ぼけっと突っ立っていたわけではなく、ただどうしたらいいかなと少し考えてしまっただけなのに。
しかしここまでついてきた以上は考えるまでもなく同じテーブルを囲むべきだったことも事実かもしれない。
「オレとりあえずエール。あとテキトーにつまめるもの数品ね。オネーサンなに飲む?」
「えっと、オレンジジュースで」
私が言うなり彼がギョッとする。
「もしかして未成年だった!?」
「いえ、そういうわけでは……ないんですが。アルコールはちょっと」
「ふーん?まあいいけど。オネーサン、じゃなくて名前は?」
未成年かを心配されたわりに興味なさそうに流される。オネーサンと呼ばれていたがここにきて名前を聞かれる。そういえば私も彼の名前を知らない。
先ほどは観察できなかった顔を見てみる。大きな瞳はエメラルドグリーン。眉がくっきりしていて鼻筋が通っている。
瞳の印象は幼いが顔立ちはしっかりしている。
「おーい、聞こえてる?ああ、オレはラディ。会った時にも言ったと思うけど今日商船でこの国にきたの。で、オネーサンは?」
私が黙っていたのを警戒と捉えたのだろうか。彼、ラディが先に名乗った。
「アイリスです。えっと、この国に住んでます」
とりあえず私も名乗る。後半の情報が必要だったかはわからないが彼に倣ってつけておく。
「アイリスね。オーケー。とりあえず乾杯だ」
運ばれてきた飲み物を片手に持ちグラスを合わせる。続いておつまみが何品か運ばれてきたのでそれも口に入れる。
とにかく私はお腹が空いているのだ。食事のためにここにいるのだからまずは食べることにする。
なにも間違えてないはずだ。




