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港に商業船が入ってくる。すでに何艘かの船が並んでいるがゆっくりと入港したその商業船は問題なく船を停めていた。
海鳥が何羽か沖の方へ飛びたったのち、商業船からガヤガヤと船乗りたちが降りてくる。
どこの国からやってきたのだろうか。
ガラノース王国は穏やかな海岸に面した小さな国だ。代々王家が国を治め、周辺国との諍いもない平和な国。
商業も盛んで大国との間の海路も陸路も整っているから数多の国から商人たちがやってくるのだ。
「お嬢ちゃんそんなところに突っ立ってるとあぶねーぞ」
「あ、すぐ退きます!」
商船から降りてきた大男に声をかけられ慌てて脇へと大きく動く。
ぼんやりと船を眺めすぎた。荷下ろしが始まると一気に人や物が移動をするのでぼんやりしていた私は相当邪魔だっただろう。
「これだけ商船が入港してきたんだから、明日の市場は賑わうだろうなぁ」
またぼんやりと船を眺めながらつい口から言葉が出ていた。
「なに、オネーサンこの国の人?」
「え、あ、はい!そうです。えっと、あの……あなたは?」
突然声をかけられ、驚きのあまりしどろもどろと返事をする。
真っ黒な髪が印象的な若い男だ。瞳が大きく一見すると幼い印象だが背が高く裾から伸びる腕は逞しい。成人した頃だろうか。
よくわからない。
「オレはあっちの船に乗って午前中にこの国にきたの。オネーサンその時からずっといない?じーっと船見てるから覚えてたんだよね。今何時だかわかってる?」
「えっと、時間……はお昼を過ぎた頃?ですかね」
「えー、そんな感じでいたの?さすがに昼メシは食ってるよね。もうティータイムなんじゃないの」
昼メシ。なるほどお昼ごはん。そういえばまだ食べてないな。いつの間にかそんな時間になっていたのか。まったく気が付かなかった。
「えっと……」
気付いてしまうと急にお腹が空く。今の今まで空腹なんて忘れていたくせに意識するともうダメだった。
お腹の虫がぐーと大きな声で鳴いている。
「まーじでー。オネーサンめっちゃおもしろいね。オレも働き通しでメシ食いそびれてさ。どっか入ろうよ」
そう言って彼はさっさと歩き出してしまう。私は行くとも行かないとも返事をしていないのに。
どうしたらいいのかわからず一歩を踏み出せないでいると彼が振り返る。
「行かないのー?」
「い、行きます!」
反射的に私はそう返事をして慌てて彼の背中を追いかけていた。




