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ベッドで横になって休息をとる。何があるかわからないから、と一人ずつ順に起きて見張りをすることにする。鉱山内にいるため時間の感覚がわからないが疲労は溜まっていたのか横になると皆すぐに眠っていた。
見張りの順番になったアイリスは魔導ランプの光をぼんやり眺める。
(虹の雫……)
先ほどラディが言っていたことを思い出す。各地に伝説が語り継がれていると言っていた。それが妙に気になっていた。
(虹の雫をラディさんは求めている。だから私は彼と共に行動しなければいけない。なぜだかはわからないけど、でもそう確信できる。それから虹の雫について私は詳しく知っていてはいけない。無害で放っておけない少女でいなくてはいけない。私自身で問題の解決をしてはいけない)
虚な瞳でアイリスは思考を続け、己の役割を確認していく。
(私は彼らが今回はどう虹の雫へと辿り着くのか観察する必要がある)
ギイ、とベッドの軋む音がして気配が近づいてくる。アイリスはすぐに反応して瞳には光が宿る。今この瞬間までしていた思考の内容はすっかり忘れ去っていた。
「ランプ明るかったですか?」
「いや。目が覚めただけ。ぼけっとしてたけど、寝足りなかったらオレが見張りしておくぜ?」
「ぼけっとしていたわけではないです」
「そう?なんかアイリスってぼんやりしてて暇そうにしてるの似合うなと思って」
「失礼な!景色を眺めるのが好きなだけです」
アイリスは可能な限り小声で、でもキッパリ否定すると「悪かったよ」とラディは笑っていた。
「なんか急に言いたくなって」
「それでは行きましょうか」
グラフカを先頭にして一行は地図を頼りに鉱山の奥地を目指す。
「狭い道で魔物に囲まれることは避けたいので、見つけ次第確実に倒しながら行きましょう」
辺りを警戒しながら一歩一歩を着実に歩く。トロッコを走らせる線路沿いに進めば基本的には深部へと辿り着くので、地図を把握した今道に迷う心配はない。
ただし魔物避けの効果がなくなること、魔石が豊富にあったということは魔物がそれを糧に通常よりも強くなる傾向があること、こちらの心配の方があった。
岩肌の中に僅かながら魔力を感じ始める。光の届かぬ位置では薄く発光している部分さえ出てきた。
「だいぶ魔力が強くなってきてるな。鉱山の持つ魔力か、魔物がいるのか魔力探知だけでは把握しきれなくなりそうだ」
「私がまだ気配を感じとれる。よほどうまく気配を消す魔物でもない限りはわかる」
ラディとカーラの言うことをうんうん聞いていたアイリスは天井や壁、地面に至るまでを熱心に見ている。
「魔石が埋まってるって不思議ですね。こんなに綺麗なら観光名所にでもしたらいいのに」
さらに進むと魔石の量が増えているのか壁や天井、地面までもが青白く輝き出す。
「それだけ危険ってことだ。ほんっとお気楽だなぁ」
「美しいものを見たいと思うことは人類共通ですよ!」
「アイリス嬢。もう少々緊張感を持ってください。いつ危険が迫るかわかりませんよ」
「はーい」
そう返事はするもののキョロキョロと辺りを見てしまう。緊張感を持てと言った本人ですら魔石の放つ輝きに目を奪われそうになっていた。
「待った!魔物だ」
ラディの鋭い声にピタリと一行の足が止まる。
「魔物?気配を感じないが……」
カーラは前方に集中してみるがなにもわからない。
「魔力の流れがこの先おかしい。魔石の放つ魔力だけじゃないはずだ」
「……距離や数はわかりますか?」
「いや、魔力が動くのだけはわかる。それが一個デカいやつ。群れてるのか魔物のサイズが大きいのかはわからない。この先道が少しだけ膨らむ。その先だな」
「……進んでみるしかありませんね」
「もう少し近づけば私がわかるかもしれない」
双剣に手を伸ばしながらグラフカは言う。カーラは弓を背中から外し右手に矢を握る。
「グラフカさん、先頭変わりましょう?私が先に前へ出て引き付けますから」
皮の手袋をアイリスはしっかりはめ直す。
「その代わり攻撃するのは得意じゃないんでお願いしますね」




