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イーリスの箱庭  作者: うのざき
イスキオス鉱山
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24/28

5

「なんですかね、ここ」

今までの部屋と雰囲気が異なりテーブルの上には魔石や鉱石が並びメモ用紙が貼り付けられている。液体漬けにされた石や見たこともないような装置に繋がれているものまであった。

「なんかの実験室かな。かなーり異質だけど」

「これは地図じゃないか?」

カーラが壁に貼られた一枚を指差す。

「……イスキオス鉱山、と書いてありますね。イスキオス……カタマヴロス皇国の所有鉱山だったはずです。あまり詳しくないのですが」

「カタマヴロス?」

「カーラは故郷の里の外はあまり詳しくないんだっけ?入国するのがかなり難しいの。そもそも辿り着くまでも大変なんだけどさ」

難しい顔をするラディとグラフカにアイリスは首を傾げる。

「カタマヴロス皇国だと何か問題あるんですか?」

「んんー、まず皇国領は雪深い山にあるの。それなりに魔物も強い上数も多いって噂。で、入国するにも審査が厳しくてなあ。ここ出たとして助けを求められるかって言うとかなりビミョー」

「カタマヴロス皇国はカターラ教の総本山です。信徒であれば聖地巡礼として入国できるとは思いますが、証明する手立てがありませんね」

「カターラ教って女神信仰の?創造神イーリスを崇拝してるとかっていう?」

「ああ、女神信仰なら私でも知っている。カターラ教の名は初めて聞いたが」

「それそれ」


話しながらグラフカは改めて部屋を見回す。

(イスキオス鉱山はもう何十年も前に破棄された鉄鉱山だったはず。ただ、物資の状態や魔物避けが正常に作動していたことを考えるとつい最近まで人の出入りはあったように感じる)

「なあグラフカ。この魔石研究って何してるんだと思う?」

「………ああ、すみません。少々考え込んでいました。きな臭い噂ではありますが魔石の軍事利用をしようとする動きがあるらしいですね。アステーリ帝国とは距離があるので詳しいことは私もあまり。帝国の偵察部隊ならば何か情報を掴んでいるのかもしれませんが」

「オレもその噂は知ってる。一度だけ皇国に行ったことがあるんだ。許可されてる商人に連れられてさ。その時信徒と話す機会もあったんだけど、女神の魔石を作り出すとかなんとか」

「女神の魔石、ですか。なんのことやら」

「オレが知ってるのもそこまでさ。まあそれがわかったところで何があるってわけでもないいけど」

ラディと話したグラフカはまた考え込む。


(女神の魔石。表向きは廃棄されたはずの鉱山。それからこの魔石の並ぶ研究室のような部屋………)

アステーリ帝国に忠誠を誓うグラフカとしては、きな臭い噂のあるカタマヴロス皇国を調べられるならばまたとない機会になり得る。

(ただ居合わせただけの彼らは巻き込めない、か)

己の考えを振り解くかのように首を振る。

(それに彼らをどこまで信用できるかわからない)

カーラと談笑しているアイリスを気取られないようそっと見る。ずっと何か信用できないと胸騒ぎが続いている。アイリスが何か怪しい言動をしているわけではない。しかし得体の知れない何かを感じているのも事実だった。


「カーラさんの作った料理ってエルフの伝統だったりするんですか?」

「いや、そういうわけではないんだが。家が料理屋をしていたから」

「だからあんなに美味しかったんですね!」


「いまいちあの二人にことの重大さが伝わらないねぇ」

「場所もわかって安心もしたんでしょう。我々で今後の進路を決めてしましましょう」

雑談を続けるカーラとアイリスはそのままに地図を見ながら話を進めていく。

「かなり詳細な地図だからもう迷わないね」

「そうですね。おそらく今いるのはこの位置でしょうから」

「……あのさ」

ラディが真剣な顔をしてグラフカに向き直る。

「どうしました?改まって」

「オレちょっとこの鉱山の奥の魔石採掘場に興味あるなー……って」

「………なぜですか?」

帝国のために皇国を調べたかったグラフカにはすぐに身の安全を理由に拒否はできない。

「オレの個人的な興味。女神の魔石って虹の雫のことなんじゃないかと思ってさ」

「虹の雫?」

「一部の地域では伝説として語られてる、女神の加護を受けられるとかダンジョンの鍵だとかいう眉唾もんの噂がある代物」

“虹の雫”と聞いてアイリスがぴくりと反応するが話しこむ二人もカーラも気がつかない。

「正直私も帝国に持ち帰る情報があるならば得たいところです。しかし彼女たちには危険を冒す理由がありません」

「まあそうなんだけどさ。鉱山の奥まで進むとなるとオレ一人の戦力じゃ心許ない。危険を感じたらすぐ引き返すから」

あまりに真剣に頼みこまれるとグラフカも揺れる。そこへ雑談をやめた二人が近くまでくる。


「私はいいですよ。ダンジョン攻略みたいで楽しそうです!」

「私も構わない。ここを出たとしても私一人ではルルディオンの里まで帰れるとも思えない。先に恩を売っておこう」

「では、出口を目指す前に深部にある魔石採掘場へ。ベッドのある部屋がありましたね。しっかり休息をとって、各自物資の補給をしてから出発としましょう」

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