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一度は開けた場所に出た一行だが、また細い坑道を線路沿いに進んでいく。
「作業員たちの休憩部屋とかそろそろあってもいいはずだよな。採掘者たちは何日も籠ったりするだろうし」
ツルハシやハンマーなどの採掘道具が放置された中から短剣を見つけたラディは握り心地を確かめながら言う。
「そうだな。そろそろ一度休憩もした方がいい」
「火を起こして先ほどの肉も焼いて食べてしまいたいところですね」
「魔法使えば干し肉にして持ち運びもしやすくなるぜ」
歩きながら変わり映えしない視界に、未知の場所で疲労も蓄積されていく。誰のものともわからないため息が聞こえたところで前方からコツン、と小石の転がる音がした。
「何かいそうですね」
「魔物の気配ではなさそうだが……」
「じゃ、ちょっと脅かしてみるか」
ラディは握っていた短剣を腰布に差すと手のひらの上に小さな光の玉を出現させる。
「さあ、いってこい」
そのまま光は輝きながら狭い坑道へと何かに導かれるように進む。しばらくすると短い悲鳴と大きく響く足音が聞こえてきた。
「おっとこれは……」
「我々以外にも人間がいたようですね」
三人は顔を見合わせると光の玉が進んだ方向へ走り出した。
「なんですかこれ!?おばけですかなんですか!!ここはどこですか!?」
光の玉に追いかけ回される銀髪の女がそこにはいた。
「悪いねオネーサン。もう消すから」
「お怪我はありませんか?」
ラディがサッと魔力を霧散させグラフカは声をかける。
「えっと、びっくりしちゃって。それだけです。大丈夫です」
「ごめんね、オネーサン。オレはラディ。こっちはグラフカとカーラ。オレたちちょっと迷子になっててさ。オネーサンはこんなところでどうしたの?」
ラディが軽い調子で話すのを見てグラフカとカーラはそのまま対応を任せることにして一歩下がる。もちろん彼女が敵である可能性も十分に警戒したまま。
「私はアイリスです。信じてもらえないかもしれないんですけど、気がついたらここにいて……。プリミーラ水郷の観光ツアーに参加していたのまでは覚えてるんですけど」
「そうなのか。オレたちも元いた場所はバラバラだけど、気付いたらここって感じ。この鉱山の出口を探してるの」
「ラディさんたちもわからないんですね。私がさっきまでいた部屋に料理用の道具や焚き火の跡があって。お腹が空いたから何か食べ物がないかなって部屋を出たところだったんです」
「それはいい!アイリス、その部屋まで案内してくれない?食料ならあるからさ」
「本当ですか!もちろんです!」
アイリスは意気揚々とこっちです、と先頭を歩き始める。その背中について行きながらラディは黙ったままの二人を振り返る。
「とりあえず無害そうじゃない?」
「特に怪しそうでもなかったな。私たちと条件は同じだ」
「……そうですね。あの方が一人でこの鉱山を無事に出られるとも思えません。一旦は行動を共にすべきでしょう」
アイリスには聞こえない距離と声量で確認しあって着いていくことを決める。
カーラの言う同じ条件、という単語にグラフカはおや?と表情は崩さないまま考える。
(みな確かに気がつくとここにいた、と言っている。それは私も同じ。しかしなぜか私はアイリス嬢を信用できないと直感している。カーラ嬢ともラディ殿とも出会ったのは数刻しか変わらないのに)
何か違和感があるかと考えてもグラフカには何も見つけられない。そして結局、数刻の間にラディとカーラを思っていたよりも信頼していた、と結論づけた。
(未知の場所での探索や戦闘で心を許したのだろう)
「ここです。なんだかお家みたいな部屋ですよね」
数分歩いて着いたのは鉱山の雰囲気とは違った場所だった。坑道から逸れ整備された道を進んだ先にある、魔導ランプに照らされた生活感のある部屋だった。
「鍋や包丁もあるな」
「焚き火に火を点けるのは任せてくれ」
「なるほど。なかなか生活のレベルが高度な国がこの鉱山を所有していたようです。水の魔石もしっかり用意されている。安全に飲料水が確保できるのは有り難いことです」
室内に入るなり三者三様に行動を始めていく。
「わあ!お肉ですね。魔物ですか?」
「ああ。さっき解体したばかりで新鮮な蜥蜴肉だ」
カーラは素早く解体された肉を調理しやすいように切り分けていく。その傍らでアイリスはウキウキと料理されていくのを眺めている。
「ハーブもあるんですか!こんなところなのに贅沢なお料理ができちゃいますね。あ、保存用の乾パンがあったんですよ。お腹が空いてそのまま齧ろうとして無理だったんですけど」
「そのままは無理だろう。それも貸せ」
「はい!」
カーラが料理をする間火起こしを終えたラディはグラフカの隣にやってくる。
「なんか見つけた?」
「魔石の質やこの部屋の家具、魔導ランプや先ほど見つけた採掘道具の質などを見ても我がアステーリ帝国と遜色ないものがあるなと思っていたところです」
「ふーん。ならアステーリ帝国の所有鉱山なんじゃないの?」
「いいえ。それならばこれだけ鉱山内を歩き回って私がわからないはずありません」
「オレも全然見当つかないんだよな。これだけ物が残ってるんだからどっかに国のヒントになりそうなもんくらいありそうなのにさ」
二人して結局黙り込む。この鉱山がどこにあるのか、そもそも鉱山内部にいて今どこにいるのかもわかっていない。
「この部屋以外もいくつか部屋があったよな。あとで調べてみたら何かわかるかもな」
「ええ。地図が見つかるのが望ましいですが、そうでなくても使えそう物資はあるに限りますからね」




