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カーラに迎えてもらい魔力の泉へと向かう。長老の前でのカーラは終始緊張した面持ちだったのであの建物を出るとほっとしたようだった。
「長老様苦手ですか?」
「いや、そういうわけでは……」
言い淀んでいるが絶対苦手なんだろう。堅苦しいし、どう接したらいいかわからないのも理解できる。
「私も緊張しました。でも虹の雫のお話ができてよかったです」
「それならばよかった。わざわざこんな辺鄙なところまでくる旅人は少ないからな」
カーラの両親の朗らかで社交的な人柄を思い出すとやっぱり性格は全然似ていないなと思う。そんなことを考えていたのが顔に出ていたのかカーラは怪訝そうにこちらを見ていた。
「何かおかしいか?」
「いえ、すみません。なんでもないです」
ふふ、と笑っておく。なんとなく両親の話をしたら怒る気がしたのだ。
「虹だ。珍しいな」
カーラがふと空を見上げ呟く。つられて空を見てみると木々の間の青い空にくっきりと虹がかかっていた。
「本当ですね。きれい」
「ああ、そうだな」
二人して立ち止まって空を見上げる。いつの間にかティーグリもやってきてカーラに頭を撫でられていた。気持ちよさそうにしている。
きっと今ごろルルディオンの里の人々も虹を見上げているだろう。虹が信託の前兆だという話が語り継がれるようにもなるに違いない。
「ここが魔力の泉だ」
カーラとティーグリの案内で大した魔物にも出会わず目的地にたどり着いた。少し出てきた魔物に関してはカーラが弓矢でさっさと射るかティーグリが飛び掛かってことなきを得ている。
優秀な狩人ペアだった。
「こんなに魔力が込められた泉なんですね。エルフの妙薬がよく効くのがわかります」
少し青みがかった泉はたっぷり魔力を蓄え静かに水面が揺らめいている。
そっと泉に手を伸ばす。ひんやりとした魔力が流れ込んでくるのがわかる。
カーラもつられたように泉へ手を伸ばした。
その瞬間。
泉が大きく揺らめき七色へと輝く。
「な、なんだ!?」
ギャウギャウッとティーグリが泉に向かって吠えるがなんの抑止力にもならず虚しく響いている。
七色の輝きが広がり泉だけでなく周囲まで輝き、そして収束していく。
カーラの姿は消え、主人を探すティーグリの遠吠えだけが響いた。
「ティーグリさん」
魔物へ呼びかける。しっかり躾されたそれは何を感じたのか私を見つめた。
「カーラさんのものです。ご両親へお渡ししてください」
泉のほとりに落ちていた弓を咥えさせる。これだけ取り残されていたので返しておくのがいいだろう。
ルルディオンの里では今ごろ虹の雫が観測されている頃だ。里のエルフたちがこぞって泉へとやって来て何が起きたのか調べることだろう。そしてカーラが女神に選ばれたと後世へ伝えていくことになる。
長老が伝説を語ったその日のうちにその伝説が現実となったのだ。
私のことはどう語られるのだろうか。それは確かめてみたい気もする。いつかまた伝説が風化してきた頃に確かめにくるのもおもしろいかもしれない。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
ルルディオンの里でのお話はこれで完結です。




