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ペタラとフィマロにお礼をしてカーラと共にルルディオンの里内を歩き、長老様の元へ向かう。
ツリーハウス同士を繋ぐ橋を渡りながら歩くとあっという間に目的の建物までたどり着いた。家というより集会所のような広い空間が続き、先に高齢のエルフが椅子に腰掛け待ち構えていた。隣には付き人もいる。
「失礼します。昨日伝えた客人をお連れしました」
カーラがやや緊張した声で言う。私も後に続いた。
「はじめまして。アイリスです。本日はお時間を作っていただきありがとうございます」
見るからに高齢のこのエルフは一体いつから生きているのだろうか。顔に刻まれた深い皺と白髪の頭だけでも十分老人に見えるが座っていてもわかるほど腰も曲がっている。
どこまで古い歴史を知っているんだろうか。
「ケドゥロスじゃ。ずいぶん遠い地からの客人じゃのう。さて、カーラよ。旅人の案内ご苦労じゃった。下がってよいぞ」
「はい」
カーラが扉の外へ出た気配を背中で感じる。ここにはエルフの長老ケドゥロスとその付き人と思われるエルフの男性、そして私だけ。広々した空間に三人だけだ。
「これについては気にせんでよい」
付き人のことか。深い瞳に見つめられるとこちらをすべて見透かされているようで居心地が悪い。枯れ木のような老人のはずなのに大樹のように大きく堂々とした佇まいがそう思わせるのだろうか。
「さて、アイリスといったか。そなた人の理から外れた存在であろう?」
「えっ、と……」
確信めいて告げられる。私はまだこの老人が知ることのできる範囲で私はまだ何もしていない。何を以って理から外れたと決定づけられているのだろうか。
「そう警戒せんでも。儂には霊魂の形が視えておるのじゃ。この世に生きるすべてのものに霊魂はあり色がある。それがお主には一切視えておらぬ」
「霊魂、ですか」
聞いたことがない。私が知らないものをケドゥロスは視ることができると言っている。
「この世にどう生を受けてきたのかは知らぬ。儂にわかるのは霊魂、生まれ持った魂の色じゃ。それがない生き物を儂は知らぬゆえ、そなたを理から外れた者だと考えた」
「……そうですか。私も自身の生まれは知りません。探し物があるので世界を旅しているのです」
私が何者であるかをわかっているわけではないらしい。ケドゥロスは長い時を生きている。エルフは元々魔力の扱いに長ける種族だから、生きているうちに特別な力を得たのだろうか。
まさか魂そのものを視ることができるようになるとは。
「探し物というのが、虹の雫か?」
「虹の雫について知りたいのです。様々な噂程度の話は知っています。エルフの長老様ならば正しく昔からの伝承をご存知かと思って」
「ふむ……」
私の言葉に暫し考え込む様子を見せている。
私はただ虹の雫の伝説が正しく語り継がれているのかを知りたいのだ。
ガラノース王国では伝説は風化し王家に伝わる宝石となっていた虹の雫。国民たちはもちろん王家に関わる人々の中にも虹の雫について知る者はいなかった。
世界を巡るラディがいくつか虹の雫にまつわる伝説を噂程度に入手していたが、これも正しく伝わってはいない。
‘虹の雫’というものがどういった意図でこの世界にもたらされているのか、それを正しく知る者がいるのかを私は確認したいのだ。




