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イーリスの箱庭  作者: うのざき
ルルディオンの里
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12/28

3

たっぷりの食事が終わるとカーラは長老様に話を通してくると店を出ていった。

ペタラもテーブルの食器を魔法でささっと運ぶとキッチンの片付けをしている。手持ち無沙汰になった私はぐるりと周りを見てみる。

エルフの里は初めてだ。森と共に生きているからか里全体に温もりを感じる。以前訪れたガラノース王国のような活気はないがゆったりとした空気が流れている。森には魔物が出るため里と森の境界ははっきりしており外からの侵入者を拒む雰囲気はあるが里の安全を考えれば仕方ないだろう。

むしろ魔法文化も発達しており外と共生せずとも生きていけることを思えばむしろ客人をもてなす気持ちがあるだけいいか。

「んん〜、のんびりゆったり、いいですねぇ……」

座ったままぐっと背中を伸ばす。結果魔物との戦闘はなかったものの警戒しながら森を歩いてきて疲れていた。

「アイリスちゃんだっけ。今日はもう暗くなることだし、うちの宿屋の部屋で休んでったら?長老様もどうせ明日来いと言うだろうし」

「そうですね。今からお会いしたとしてもどのみち今日はお世話にならなきゃですし」

ペタラの言葉に頷くと彼女は茶色の瞳を優しく細め微笑んだ。

「カーラが戻ってきたら伝えとくよ」

「ありがとうございます」

食事代と宿泊代を支払い用意された部屋へ移動する。ここで使える銀貨を用意しておいてよかった。



急な客であるはずの私が来ても部屋は綺麗に整えられている。里に入った時点で魔法で用意してくれていたのだろう。魔力の痕跡が少し残っている。カーラのものだ。

フカフカのベッドに身体を沈める。

「お腹いっぱいだし疲れたし」

今日はこのまま眠ってしまおうか。でも汗もかいたし湯浴みはしたい。水の用意は室内にある。タオルもある。自分で湯は沸かせるしやるか。

気合いを入れて起き上がりささっと湯浴みを済ませると次こそベッドに入り布団も肩までかける。

「おやすみなさい」

誰に言うでもなく言葉にすれば灯りが消えた。魔法って便利だ。



翌朝食堂でペタラの用意してくれた朝食を摂っているとカーラがやってきた。

「長老様がお前とお会いになる。食事が済んだら案内する」

「ふぁかひまひた」

口にパンを詰め込んでいたので伝わったか自信がなかったがカーラは頷いたので伝わっただろう。

「あれ、今日はティーグリさんいないんですか?」

黒い毛並みがもふもふで柔らかそうな金の瞳の狼がいない。カーラといつもセットなのかと思っていた。

「あの子は下で子どもたちと駆け回って遊んでいる」

「まだ子どもだからな。お客人よく来た。カーラもな」

扉の音がしたと思ったら体格のよいエルフの男性が入ってくる。

「ええと、お邪魔してます?」

私を客人と呼んでくれるというのとはここの人だろうか。

「ああ!昨日は会えなかったからな。フィロマだ」

「旦那だよ。昨夜帰ってきたけどアイリスちゃんは会ってなかったね」

なるほど。昨日狩りに出かけていたという旦那さんだ。そういえば朝食にカリカリに焼いた肉があった。昨日の獲物だったんだろう。

「カーラはどうしたんだ。朝から珍しいな」

フィロマはそのままカーラを手招きし向かい合って座った。カーラは渋々といった雰囲気を醸し出しているが。

「客人を長老様のところへ案内する」

「そうかそうか!それは双方に失礼のないようにな」

カーラの素っ気なさも気にせずフィロマは豪快に笑い、ペタラも2人のやりとりを微笑ましそうに眺めている。

「しかしまあ、カーラも客人をもてなし案内役まで引き受けるとはなぁ」

「そうねぇ」

しかも二人してなんだか感慨深そうにしている。カーラは居心地が悪そうだ。

「ちょっと前まであなたの狩りにつれてって、なんて泣いていたのに」

「今じゃ立派に狩人やってなぁ」

「……………」

カーラの無表情が少し崩れる。イラっとしたといったところか。

「ティーグリと一緒にじゃれあって遊んでた頃が懐かしいなぁ」

「ええ、本当に」

フィロマが懐かしんで目を閉じるとペタラも笑って同意する。カーラの眉間の皺はさらに深くなる。

もしかして、もしかするとこの三人は。

「ご家族、ですか?」

「そうそう!昨日は言ってなかったっけ?うちの娘よ」

「なんだカーラ!言ってなかったのか」

カーラは結局黙りこくったままだがご両親は気にする様子もない。年頃の娘とはそういうものなのだろうか。

「そうでしたか。そう言われてみると似てますね!」

茶色の瞳はお母さん、サラサラの金髪はお父さん。なんとなく顔立ちも似ているしところどころパーツは同じ形をしている。

言われるまで雰囲気が違いすぎて全然気が付かなかった。

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