2
「ここがルルディオンの里……」
森の奥にある集落。森と共に生きるエルフたちの里。長寿種族である彼らの年齢は見た目ではわからないが小さな子どもたちもいる。駆け回って遊んでいるのを見るとそれなりに幼い子たちなのだろうか。
エルフはひっそりと生きる者が多いが決して余所者を拒んでいる種族だというわけではない。中には街へ出て商いをしている者もいれば冒険者としてパーティーを組んでいる者もいる。
現に私もこうして里に招き入れてもらっているのだから。
ルルディオンの里はツリーハウスが主流のようでほとんどの建物は木の上にあった。地上のはわずかなログハウスがあるのと、木の上にあがるための階段設備があるだけ。
「高いですねぇ」
つい見上げて呟く。
「地上で生活するより木の上にいた方が安全だからな。魔物の被害も少なく済むし大雨の時に水没もしない」
カーラはなんてことないように教えてくれる。
「木に囲まれてるとお料理に苦労しそうです」
率直に思ったことを口にしたら空腹を思い出した。そうだった私の飴玉……。
「魔法でこと足りるからな。火起こしも必要ない。灯りも魔法を使っているから不便はない」
「エルフの里では当たり前に魔法文化なんですね」
みんなが魔法で生活しているならそれは便利だろう。確かに水も流れているようだが自然の川だけではない。地上からツリーハウスの方へ流れているから魔法を使用しているようだ。
「さて、アイリス。お前はこの里に用事があるようだがなんの目的があってきた?」
「エルフの長老様とお話したくて。虹の雫ってご存知ですか?」
「にじのしずく……」
どうやらカーラは心当たりがなさそうだ。
「古い伝承もあるようなのでエルフの方なら何か知ってるかなって思ったんです。それでここまで来ちゃいました」
「そうか。私から長老に会えるよう話してみよう」
「ありがとうございます。あの、それとですね」
「なんだ?」
カーラがじっと私を見る。ついでにティーグリの金の瞳も私を見る。
「お腹が空いちゃったんです。どこか食べるところにまず案内してほしいです」
ぐーと私の腹の虫が大きな音で鳴いた。
「面白い客人を連れてきたじゃないか」
キッチンに立ったままぺタラ、この里唯一の宿屋兼食事処の女将が笑う。出来立ての食事がプレートに乗ってふよふよ浮いて運ばれてくる。
あまりの空腹にいただきますと一言だけ挨拶してすぐに頬張る。たっぷりの木の実が入った不思議な味のシチューと香ばしいパンだ。
「美味しい!」
「それはよかったよ。狩りに出た旦那が帰ってくるのは日が暮れてからだからね。肉はないけど勘弁しておくれよ」
「いえ!本当に美味しいです。急に来たのにありがとうございます」
「それだけ元気ならよかった」
ペタラは豪快に笑って料理を続けているが目の前のカーラは呆れ顔だ。
実はあまりの空腹に歩く元気もなくなりカーラの相棒のティーグリの背中に乗せられてここまで運んできてもらったのだ。
面目ない。
「カーラさんもありがとうございました」
「礼ならその子に」
床に置かれた食事を食べるティーグリに向き合いもう一度「ありがとうございました」と頭を下げる。ティーグリは言葉を理解しているようでひとつ頷いてくれた。




