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イーリスの箱庭  作者: うのざき
ルルディオンの里
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10/28

1

新章の開始です。どうぞよろしくお願いします。

深い森の中を進んでいく。美しい花々が咲き誇り思わず手を伸ばしかけるが中には毒性の強いものもあったはずだ。迂闊に触るべきではないと手を引っ込める。

この森に足を踏み入れるのは初めてだが、目的の場所はこちらの方向で合っているはずだ。昼間でも鬱蒼と生い茂る草木に阻まれ薄暗い深い森、その奥には古くから長寿種のエルフたちが住まうルルディオンの里がある。

ところどころ空が見えるほどに開けた場所があり、太陽の傾きから森に入って二時間ほどが経過したことがわかった。


「お腹すいちゃったな」

立ち止まって肩にかけたかばんをガサゴソと開く。確かまだ飴玉くらい残っていたはずだ。

「あった!」

赤い包みに包まれた甘い飴玉。早速包みをペリっと剥がし艶やかな飴玉を眺める。透き通ったガラス玉のようにも見える薄い赤色。とても美しく口に入れてしまうのが勿体無いようにも感じるが私は空腹も耐え難い。

「いただきます」

いつまでも眺めてはいられないので食べてしまうことにする。

艶やかで美しい赤色の飴玉を口に放り込むその瞬間………


グオオオオッ


低く唸るような咆哮が聞こえ私は手を滑らせ飴玉が森の茂みへと消えていった。


「えっ!?私の飴が!!」

今優先すべきことは違う気もする。


飴玉のことは諦め声の主を探すことに集中する。

静かな森がざわめき木々が揺れる。それなりに大きな魔物が近くにいるようだ。両手を重ね魔力を集中させる。

魔物の気配は前方。どうやら一匹。移動速度が速そうなので狼系のよく森に生息してるようなやつ。


さて、どうしようか。今回は武器は何も用意していない。魔法で吹き飛ばしてしまおうか。しかしそれも別の魔物の魔力探知に引っ掛かりそうで面倒くさい。

「うーん……」

あまり時間はなさそうだ。魔力を練ろうとした時ふと気がつく。

(誰か来る)

魔物とは別の誰か。人間か、いや里のエルフだ。

ならば私は何もしなくていい。このまま放置でも解決しそうだ。


魔物が草の茂みから飛び出してくる。真っ黒で毛並みの整った手入れされた狼。種類まではわからないがそこそこ大型に見える。

魔物をよく見ようと棒立ちになったままだった私をどう解釈したのか、鋭い声で魔物を呼び止める声が響く。

「待て。旅人のようだ」

そこにいたのは長い金髪をひとつにまとめた美しく勇ましい女性だった。背中には弓矢を背負っている。ルルディオンの里の狩人だろう。エルフの特徴的な尖った長い耳が見えている。

「この森に許可なく単独で立ち入った人間がいると報告を受けた。森を荒らす連中だと困ると思ってな。すまなかった」

「いえ、許可が必要とは知らず無断で立ち入ってすみませんでした。あ、私はアイリスです。ルルディオンの里へお邪魔したく……」

「そうか。それは失礼した。あまり客人の来ない里でな。私はカーラだ」

カーラは黒い狼を手招きで近くへ呼び寄せる。


「ええと、そちらの狼さんは……?」

唸り声をあげ私に襲いかかってきた時とは違い大人しく女性の隣でおすわりをして頭を撫でられている。嬉しそうに金色の瞳を細めていた。

「これはティーグリ。私の狩りの相棒だ。ルルディオンに用事と言ったな。案内しよう」

「ありがとうございます!よろしくお願いします」

ルルディオンの里に案内してもらえる。咄嗟に攻撃してしまわなくて本当によかった。


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