↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】美容革命! 見栄を捨てた伯爵令嬢の私は、今日も溺愛騎士と幸せです  作者: 逆立ちハムスター


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/20

日々の幸せ

あの衝撃的な巨額スカウト劇から、はや一ヶ月が経過した。


王都の中央大通りから一本入った、日当たりの良い石畳の路地『カロン通り』。

そこに、木目の温もりが漂う小さくて可愛らしい看板が掲げられている。


『ルキア&カシウス クラフト&ハンドメイド』


私たちが開業した、そのままなネーミングだけど、夢の小さなお店である。


一ヶ月前、超有名画家のアイレネさんから提示された金額は、前金500金貨、成功報酬1000金貨――合わせて【1500金貨という、正気の沙汰とは思えない巨額のモデル料だった。


おかげで、売上の20%という高額な税金や商業ギルドの手数料、立地組合への上乗せ費用なんて、何の問題もなく一括でサクッと支払うことができた。店舗の契約金から内装工事費、さらにはエアコンやルンバスといった最新のドワーフ製魔道具(家電)の設置まで、何一つ妥協することなく最高の環境を整えることができたのだ。


そして現在――。


「いらっしゃいませー! ごゆっくりご覧くださいね!」


「ルキア様、奥の展示台の商品の補充が完了いたしました」


店内は、開店直後から絶え間なく訪れるお客さんたちで、そこそこの賑わいを見せていた。


爆発的な大行列というほどではないけれど、口コミでじわじわと噂が広がり、「センスの良い可愛い小物が買える店」「頑丈で洗練された木工家具が手に入る店」として、近所の奥様方や若い女の子、職人さんたちの間で確実にリピーターが増えているのだ。


「はぁ〜……今日もお客さんが来てくれて良かったぁ……」


カウンターの奥で、私はふぅと安堵の息をついた。


お店の売れ行きは、私たちの想像以上に順調だった。


特に、カシウスが手作りしている木工家具――オーク材の小ぶりなチェストや、座り心地を計算し尽くした丸椅子、繊細な彫刻が施されたミニテーブルなどは、並べたそばから即座に売れていく大人気商品となっていた。


「申し訳ありません……本日の木工チェストは、先ほど売り切れてしまいまして……」


「えぇ〜っ! また売り切れ!? 次の入荷はいつになるの、お兄さん?」


「職人が一つひとつ手作業で削り出しておりますので、次の完成は来週の半ば頃になってしまいます」


「もう、商売上手なんだから! じゃあ予約しておくわね!」


カシウスが申し訳なさそうにお客さんに頭を下げている。


彼の商品は、手作業で丁寧に木を削り、カンナをかけ、表面に蜜蝋を塗り込んで仕上げる「本物志向」の逸品だ。だからこそ、どう作っても量産ができず、店頭に出すと一瞬で「売り切れ」の木札が立ってしまうのだった。


「カシウス、あまり無理はしないでね? 夜遅くまで木を削って体を壊したら元も子もないんだから!」


お客さんが途切れた隙に私が心配して声をかけると、カシウスは困ったような、でもどこか誇らしげな笑みを浮かべて頷いた。


「ありがとうございます、ルキア様。ですが、ご安心ください。自分が心を込めて作ったものを『欲しい』と言っていただけるのが、これほど嬉しいものだとは思いませんでした。全く苦になりませんよ」


そう言って汗を拭うカシウスの顔は、昔の「義務だけで剣を振るっていた騎士」の顔ではなく、完全に自分の仕事に誇りを持つ「一人前の職人」の清々しい顔だった。


一方、私担当のハンドメイド雑貨コーナーも、売れ行きは絶好調だった。


私の作る商品は、フェルトや綿、羊毛、レース生地を使ったマスコットやぬいぐるみ、ポーチといった小物類だ。カシウスの大型家具に比べれば制作時間がかからないため、次々と新しいデザインを店頭に供給することができている。


「わぁ! お姉さん、この新商品すごく可愛い!」


「鞄に付けられる『ミニマスコットチャーム』ね! ありがとう!」


最近の私の一押しであり、お店の一番人気になっているのが、カバンや鍵束にぶら下げられる小さな手のひらサイズの『キーチャーム』シリーズだ。


前世のハンドメイド知識をフル活用し、色とりどりのフェルトを縫い合わせて作った二頭身の動物マスコットなのだが――実は、売れ筋のラインナップには、この世界ならではの「非常に面白い傾向」があった。


前世の感覚で言えば、動物マスコットの王道といえば「犬」や「猫」、あるいは「うさぎ」あたりだろう。

だが、うちのお店でダントツの圧倒的一番人気を誇っているのは――なぜか『ペンギン』なのだ!


丸っこい黒と白の体に、黄色いくちばし、トコトコと歩きそうな二頭身のフォルム。

これが、お店に出した瞬間に若い女の子や子供たちの心を撃ち抜いたらしく、飛ぶように売れていく。


たしか、この世界にはペンギンが生息していないか、極北の氷海にしかいない伝説の『氷海の聖鳥』として伝わっているとかいないとか……。


本物を見たことがない人々にとって、私の作ったゆるふわなペンギンマスコットは「神聖で愛くるしい未確認の聖鳥」として大ウケしているらしい。人間の文化の違いって本当に面白い。


逆に――前世ではそこそこ人気だったはずの『ハムスター』のマスコットは、見事なまでに不人気NO.1を独走していた。


つぶらな瞳とぷっくりしたほっぺたを完璧に再現して店頭に並べた初日、お客さんの奥様方は「……ヒッ!?」と引きつった顔で後ずさったのだ。


『お、お嬢さん……これは、ネズミ……かい?』

『は、はい! ハムスターという小さなネズミの仲間で、前世……じゃなくて、すごく愛くるしい生き物なんですよ!』

『いやぁ……ネズミは病気や害虫を運んでくる不吉な生き物だからねぇ……見た目は可愛いけど、側に置くのはちょっと……』


そう、この世界では「ネズミ=疫病、悪魔の使い」という認識が骨の髄まで叩き込まれていたのだ!

どれだけ見た目をキュートにデフォルメしようとも、「ネズミ」という概念そのものが嫌悪の対象になってしまうらしい。


(うーん……見た目の可愛さだけじゃなくて、文化や信仰、宗教的なイメージが色濃く反映されるのね。さすが、本物の天使や悪魔が実在する異世界だわ……!)


文化の壁を学んだ私は、すぐさまハムスターの制作を中止し、代わりに「ペンギン」と「小鳥」、そして「聖なる子羊」のチャームを大量生産することにしたのだった。



――最近、お店のお客さんの中に、ちょっと変わった層が増えてきている。


「あの……すみません。こちらにいるお嬢様が……例の『夜明けの乙女』のモデルの方でしょうか……?」


「あ、はい! 店主のルキアですが……」


「やっぱり……! 本物だわ! なんて綺麗で、可憐な方かしら……!」


買い物に来た貴族の奥様や若い紳士たちが、まるで聖地の巡礼者か何かを見るようなキラキラした目で私を見つめてくるのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。