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『妖精の取り替え子』認定喰らって即寒村送り!弱小氏族次男坊の独立戦争記  作者: くろすーおーばー
第二章 グレンガルト・トゥア発展編

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72:6ペンスから始まる目先の利益と長い付き合い

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行程三日目、三つ目の村に着いた。この村の次は目的のインヴァクスだ。こうやって見ると巧いこと出来ている。牛の休憩ポイントに合わせて村が在り、村人達はそれを利用してサービスを提供したり、食料を手に入れたりしている。

(にいに、こんなに遠くまで来て帰れるの?)

 問題ないよ。護衛も居るし魔物が出ても魔法で倒しちゃうから。


 考えてみればこんなに遠出をしたのは初めてだレテウス君が心細くならないように元気づけないとな。


 特に魔物や野盗に襲われたりすることもなく、殆どはケアン(軽装歩兵)の一人、ルーリさんと喋って過ごした。

 ルーリさんは女性、髪も短く年上のお兄さんだと最初は思っていた。やはり女性だと舐められやすいらしい。その所為か最初は二言三言の業務連絡な会話しかしていなかったのだけれど、話が合い始めたのは俺の弓を見てから。


 彼女から見てもこんな子供に弓が射(い)れるのかという極自然な疑問からだった。魔法のことは黙ったまま数十m先の木に矢を射ればそこからは怒涛の質問攻めに遭い、特に気を使うこともなく仲良くなれた。


 なれたのだけれど、そこで知ったのが弓の師であるサンヴィル先生はかなり名の売れたケアンだったそうで、俺の腕前にも納得してくれたが魔法のことは伝えなかった。身内ではない人には極力隠しておきたかったから…


 村の様子に目を移す。

(みんな行ったり来たりだね)

 そうだね、インヴァクスが近いのも関係しているのだろう、人の行き来が多いし宿も多い、開拓村であるグレンガルト・トゥアとは同じ村でもだいぶ様相が違う。所謂宿場町なのだろう


 そして肌で感じるのは旧カウトール領なのだが村人達は上の人間(氏族)が変わってもあまり気にしていない。そりゃあ戦争に駆り出されるとなれば話は違うだろうけど、そうでもなければ誰が上でも構わないように見える。


 まあ自分は社会人経験はないが、現代でも社長が変わっても仕事に支障がなければ気になどしない…気がする。構わないと言うより気にしてる暇がないのかも知れない。グレンガルト・トゥアでもそうだったけど、村人達は現代と比べて暇な訳では無い。


 全てが手作業で機械が何かを自動ではやってくれないのだから何をするにも付きっ切りで数時間は掛かる。その分現代ではやらなきゃいけないタスクが多いわけで一概にどちらが楽とも言えないわけだが…


 深く考えても仕方有るまいその時代にはその時代の苦労があるものだ。


「レテウス様」

「は~い」

(は~い)


 ケアンの一人、弓使いのルーリさんから声がかかった、なんだろうか?


「レテウス様、空の樽を売る気有ります?、いやねこっちの旦那が宿代を割り引いても良いから欲しいらしくて」


 樽を何に使うのだろう?刻印も入っているから変な使われ方はされたくない、ルーリさんの袖をつつき宿屋の主人に顔が見られないようにこっそり耳打ちで聞いてみる。


「ルーリさん、相場がわからないんだけど」 

「う~ん、見た目もいいし、まだ新品に近いのだから8ペンスくらいですかねぇ」

 了解、あとは何に使うかだな


「ちなみに何に使われるのですか?」


「いやぁ、冬前に樽で水を貯めたくってねぇ。」

 なるほどね貯水槽か、それなら理由はわかるし用途としても問題ない。しかしこの宿屋の主人はこちらが子供でも驚いたりはしないんだな。


 最近驚かれてばかりだったからちょっと新鮮、自分の反応に気づいたのか店主が口を開く。


「うちにはフォルフリッサお嬢様も昔はよく来られたもんです。」

 なるほどね。しかし昔(・)は(・)か、お嬢様嘘ついたな、なんでだろ?


「別に割引は無くても大丈夫ですよ。それにこれからも贔屓にしてほしいから6ペンスでどうです?」


 ほう、と感心したような反応。これなら悪い印象は与えてないだろう、うちは後発で新米なのだ、これくらい低姿勢で臨んだ方がいいんじゃないかという勘は間違ってない…と思う。


「かぁ~!若様っ!そりゃあ安く売りすぎだ。こちとら氏族なんだから相場より高ぇくれぇで丁度いいんだよ」

 額に手を当てるルーリさん。


「いいの、いいの、初顔合わせなんだし。気前の悪い噂流されたらそっちの方が後々困る」

 子供らしく大きな声で周りに聞こえるように答えた。


「それでは宿は我がブラウニーで?」

「うん!全員泊まれる?」


 宿屋の主人の後ろには勾配のきつい茅葺きの平屋が建っていたが、十人を超える大所帯なのだから分けなければ泊まれないかも知れないと心配をする


「うちは問題ないですぜ。大部屋に泊まるんでしょ?」

 七人いるドローヴァー、ケアン組と自分も含めたグレンガルト・トゥア組も一緒、実質一人部屋を使うのはフォルフリッサさんだけ。大部屋一つの個室が一つ、今更かもしれないが念のためルーリさんにはフォルフリッサさんと同じ部屋で寝てもらう。


 部屋の確認も取れ今日の宿も決まった。


「ここんところ冬が早くってねぇ、行商人ですら早めに冬支度しちまうんで商売上がったりでね。助かりましたよ」

 苦笑いで応える宿屋の主人だけど、歴史が同じならば五百年近く小氷期は続くだろう。冷涼な土地でもたくましく育つ穀物を見つけなければならない。


 これがインヴァクスでの一番の目的と言ってもいい、鉄を良い値で売ることも大事だが鉄そのものでは腹は満たされないし、ラーグも救えない。


 食事はまだ冬に入ったばかりだからか肉も豆と足りていたが肝心の麦粥が薄い、これも小氷期による影響なのかもしれない。食事も気にして食べればその年の出来が判るもんだな、などと前向きに考える。


「レテウス様、インヴァクスってどんな所?」

 夜の帷も下り就寝しようと思っていた矢先にハミッシュから声がかかった、興奮して眠れないのかもしれない。


 自分の知る歴史上のインヴァネスとも現代のインヴァネスとも違う土地だ適当に答える訳にもいかない


「俺…僕も初めてだから分からないよ」

「でも、グレンガルト・トゥアよりも栄えてるんでしょ?」


「そうだね、それは確かだと思う。」

 自分でもイメージしてみるがどれだけイメージしても実物を見ればいいだけの話。


「楽しみだね。ハミッシュも迷子にならないようにね」

「はい」


 それからも何が買いたいだの、インヴァクスの魔法使いは凄いのかなどと話題は尽きなかった。


「ハミッシュ?」


「……」


 喋るだけ喋ってハミッシュは眠ってしまった。


 まいったな、自分だけが目が冴えて眠れそうにない…レテウス君は…

(起きてるよ)


 今何してるの?

(だいがくの図書室から持ってきたご本読んでる)

 ちゃんと部屋明るくして読んでる?

(うん)


 何のご本読んでるの?

(いまね~、ウェールズの赤いドラゴンのお話)

 男の子だものね、どこまで読んだの?

(赤いドラゴンが白いドラゴンに負けそう!)

 結果は知っているがネタバレはしない


(ねえ、にいに?)

 なんだい?

(にいにのせかいにも魔法使い居る?)

 なんだこのサンタはいますか?的な純粋な質問…夢を壊してしまいそうで怖いな。

 う~ん居ない…かな


(でも、このマーリンって人魔法使いだよ)

 それはね…おとぎ話の中だけかなぁ

(でも僕たちのせかいにも魔法有るもん。にいにのせかいに無いの変!)

 まいったねこりゃ、なんて答えようか


 魔法の代わりに科学が凄いんだよ、レテウス君もお外が夜でもこうやってご本を読めるでしょ

(そうだけど違うの!魔法無いのが変なの!)


 そりゃあそうなんだけど…


 結局レテウス君が寝落ちするまであーでもないこーでもないと付き合ってあげたのだった

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