69.5:レテウスからの依頼(SIDE:ヨゾ)
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レアグへ使いに出た吟遊詩人フォークが荷物と共に帰ってきた。
「フォーク、これは何だ?」
「レテウス様からのお仕事の依頼ですね。」
「仕事の依頼?」
訝しがるヨゾとニコニコとご機嫌なフォーク
フォークが革製の幕を外すと現れたのは装飾の施された秤だった。
「これはまた大したもんだ」
「借りただけなのでレテウス様はこれと同じ物をお作りになれとのことです。」
「はぁ?」
「ですからこれと同じものを」
「それは判ってるよ。言葉がわかんねえって意味じゃねぇよ!」
フォークは頭を抱えるヨゾには気も止めずカバンの中から一通の手紙を取り出しヨゾへ手渡した
「手紙?お前が居るのに手紙とは珍しいな」
「とりあえずゴブ爺さんとこへ持っていこう話はそれからだ。それとラグナルとコルマックの爺さんたちにも声かけといてくれ。」
ヨゾは考える。レテウス様のことだ、何もまったく同じ物作れってわけじゃなく同じ動きが出来れば気にしないだろうからまずは皆で仕組みを理解するところからだ
事実レテウスは秤が欲しいわけで、装飾などは二の次三の次だと伝えている、フォークがレテウスを持ち上げ過ぎなのだ。
村の広場には人だかりが出来、その中心には職人たちが顎に手をやり秤を眺めていた
「見たことは有るが自分では使ったことはねぇからなぁ」
「ああ、俺らは量ってもらう側で使う側じゃねえ。むしろ触ろうもんならどんな目に遭うか分からんかったからな」
そんな事を言いながら、うん、うん、と頷き合っているのはラグナルとコルマック
キィ…
「う~む…」
持ち上げて秤の動きを見るゴブ爺さん
「どうだゴブ爺さん?作れそうか」
「たわけ!お前も触って考えんか!お前らもじゃ。せっかくレテ坊が秤をこうして借りてきてくれたんじゃぞ」
どやされいそいそと秤を触り始めたヨゾと職人たち
「たしかこんな感じで」
「そこをずらすんじゃなかったか?」
「ここは木製だが耐久性を考えれば鉄の方が」
「いや重いだろ。」
「そこは手で持つんじゃなくて天井から下げてしまえばいい」
一度触り始めればそこは職人たちである。あーでもないこーでもないと話し合いながら弄くり始める。
「おいフォーク、それで何処まで同じにすればいいんだ?」
ヨゾは判ってるんだという視線でフォークに問う
「ですから、同じ物をですね」
「嘘つけ!あのレテウス様がそんな雑な命令出すもんか。あの方は物作りに置いて要点をぼかすような真似はしねぇんだ、大方お前のことだからレテウス様に相応しい豪華な物をとでも思ってんだろ」
びくりと肩が跳ねるフォークに確信を得るヨゾ、渋々といった感じで
「……とりあえず10ポンドだけ量れれば良いと…」
「やっぱりな、全然違うじゃねぇーか!お前が俺達に負けないくらいレテウス様を尊敬しているのは判っているが度が過ぎるぞ!あんまり酷いようだと…」
その先は言わないがヨゾの目が『クビになるかもな』と告げる
「すいませんすいません!」
だらだらと冷や汗を流し謝るフォークにため息を付くヨゾ
「解かりゃあいいんだよ。それで?他に隠し事はないだろうな」
ギロリと睨むヨゾにコクコクと頷くフォーク
「ゴブ爺さ~ん、10ポンドだ10ポンドが量れりゃいいんだってさ」
「それを早く言わんか!」
「ほら、代わりに俺が怒られたじゃねえか」
ポカりとフォークの頭に拳骨が落ちた。
「これは一度、木で作ってみた方がいいかも知れないな」
「コルマック、お前の腕の見せ所だな。」
話を振られたコルマックの目が職人の目つきに変わる。
「作るんなら最初は小さいやつからだな、それでいいか?」
「目盛りはどうする?」
「まず十ポンドの位置だけ分かればいいんじゃねえか?」
やいのやいのと盛り上がる職人たちに仕組みの解析は任せヨゾは受け取った手紙を取り出した。手紙には二枚の用紙が挟まれていた。
今後この様なやり取りが増えるとレテウス様からは言われていたが、初めて触れる紙は蝋板とは違い
軽く不思議な手触りだった。
――――――
ヨゾへ
今後、グレンガルト・トゥアの品は交易都市へこの刻印を付け商品を卸したい。父上には許可を頂いてある。まずは樽に焼印を入れるところから始めて欲しい、いずれは10ポンドの鉄にも刻印と重さを入れたいがそれは後々で構わない。
それと、冬の間レアグから牛を十二頭と人足たちを八人預かる事にした。事前に話した手順で管理を頼む
追伸、判っていると思うがフォークは大げさに言うだろうから酷い様なら叱っておいて
――――――
最後の一文に思わずくすりと笑みがこぼれた
――――――
絵はあくまでも見本だと思ってくれ。技術的に無理ならば簡略化してもらって構わない
――――――
いつもぶっ飛んだことを考えるレテウス様だが、グレンガルト・トゥアの印とは思いもよらなかった。描かれているのは神話に登場する冬の女神様カリヴェーラ様だろうか?
高炉が出来上がり鉄まで造れるようになったというのに、どこか夢のようで現実味がなかったヨゾだったが…
この絵を見た瞬間だった。
頭の中で初めて、この印が付いたグレンガルト・トゥアの品々がこの国中に広まる光景を思い浮かべる事が出来た。
「これは誰に任せようかな…」
高揚する気持ちを胸にヨゾはそう呟いた。
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