69:経済の動脈へ
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「ええ、そうなりますね。」
フォルフリッサさんに紹介された年若い神父様…正確には司祭様はにこやかに答えてくれた。
質問内容はエヴァン家としてバーグで物を売ってはいけないかどうかについてだ。
「神父様どうやったらエヴァン家としても売れますか?なにか資格を得る方法はないでしょうか?教えていただけませんこと?」
上目遣いで神父様に聞いてくれたフォルフリッサさん。神父様に惚れてるのかな?でもカソリックは結婚しちゃ…いやキリスト教じゃなかったわ
「資格?…ああ信用のことですね。そこは地道に積み重ねるしかありません。」
やはりそうなのか…
「そうするとエヴァン家から売りたいものもここを通していたのですよね?」
司祭様は帳簿にちらりと目をやったが開かなかった。
「いいえ、エヴァン家名義での取り扱いでは載っていませんね」
それはおかしい、それじゃあどうやって…
「もしかしてローデル家名義で…」
「はい。私も派遣された当時はなぜこんなまどろっこしいことをと思いましたが、だいぶ前からこの形でして…」
エヴァン家の御子息と旧カウトールのご令嬢の前では言いにくいのだろう。ほんと優しい司祭様だ。
「両家の仲が問題なのですね」
子供っぽく無邪気を装って聞いてみる。
もごもごとなんとかはぐらかそうとしている時点でお察しだ。
「わたくし気にしておりません」
「僕も」
(ぼくも~)
ふう…とため息をついた司祭様。
「どうか大人の方には内緒でお願いします。…その、どうやら教会に卸す前に難癖をつけて余分に手間賃を取ったりしていた様で」
「まあ、なんて酷い」
いや、貴方のお父さんがしてたんだと思うけど、フォルフリッサさんさっきの『気にしてない宣言』とかをみるにもうカウトールに未練が無いみたい
「そこでローデル家を通して交易都市へと卸していたのでしょう記録にはございませんから、ただローデル家も手間が増えるので手間賃を取られていたとは思います。」
どうやら水増し分の金額は教会に卸す分よりは高く、ローデル家に卸す分よりは安いという実に阿漕なやり口だったらしい。父上の事だから、カウトールに不当に手間賃を取られるくらいならローデル家に払った方がましだと思ったんだろうなぁ~、二度手間だけどローデル家からはさすがのカウトールも取れなかったっぽいな。
「では、今後はそこを是正しても問題ないんですね?」
(ぜせい?)
「是正…お若いのに難しい言葉をご存知で。ええ私共もローデル家もインヴァクスの商人にとっても、無駄な手間が減りますのでありがたいです。」
良し!これで一つ無駄な手間が省ける。こんなふうに法的には問題なくても私情が絡んだ問題が多そうだが、逆を言えばカウトール家が無くなったことで、カウトール家絡みの問題は粗方片付けられそうな気がしてきた。
「そうすると、今後は教会は帳簿をカウトール家からエヴァン家に変えて、ローデル家はローデル家のままという形で良いのでしょうか?」
「形としてはそうしたいところですが、カウトール家を無くし、売るときの大きな枠組みでは全てローデル家の品、帳簿上はローデル家、旧カウトール領、エヴァン家の三つにするのが無難でしょうね。」
「ああそうか!エヴァン家では売れないんでした」
「そうです。他にお聞きしたいことは有りますか?」
う~ん何かあるかな…最初はエヴァン家として売り買いをしたいと思っていた。しかし手数料を取られるのは嫌だけどお任せ出来て帳簿まで書いてもらえるのなら我が家の人材を考えると…多分だけどおじさまも教会に任せる気がする。
「聞きたいこと…あの、品物に拠っての扱いとかはどう変わるのでしょうか?」
「と、言いますと?」
「帳簿を見てて計算が合わないというか価格がまちまちだなと思ったので」
価格というか帳簿上で牛一頭で手に入る品が違いすぎるのだ
「それは税や手数料に限らず、飼料なども関わっているからでしょう。例えばすぐに売れた牛と中々買い手のつかなかった牛ではその間に掛かった飼料代なども含まれます。」
「なるほど。掛かった飼料代が差し引かれた分が貰えるんですね。」
「はい、他にも魚介類、特に魚は直ぐに腐ります。なので纏っていないと値が付かなかったりしますから、取り扱う時期が大体決まっています。」
所謂季節ものか、じゃあ
「鉄はどのように扱われますか?」
「鉄…ですか。最近は戦もありませんし、あまり出回らないので帳簿には載ることが少ないのですが」
戦?…ああ、自分たちで作るという文化がないのか、考えてみればこの文化レベルで高炉で鉄を精錬というのはオーバーテクノロジーなのだ
言うべきか言わぬべきか…精錬した鉄はインヴァクスでも目を引くだろう。その中でカーヴィン家と繋がりたいとは思っているが教会を通せば教会のネットワークにも精錬した鉄のことがバレる…
鉄を含む沼鉄鉱と精錬されて強度と粘度が格段に上がった銑鉄とでは価値が違うのだ。
「もしも、もしもの話なんですけと集めた剣や鎧を一塊にしたら、え~と、10ポンド程のものはどんな扱いですかね?」
「一塊ですか。そうなると何処の誰が何ポンド売ろうとしているという証明が必要ですね。」
「証明ですか?」
「ええ、この場合でしたらローデル家傘下のエヴァン家がこの鉄の持ち主といった感じです」
「それは鉄に紋章とか入れて重さも刻印を打つような」
「まあ認識としてはそんな感じですがそこまでする家は見たことがないですね」
ふ~んそうなんだ。でもまあ重さは同じにしといた方が管理の観点から見てもしておいた方が良さそうだね。
「いたいた、レテウス。今後について話があるから来てくれ」
ヴァルヴェックおじさまから声がかかりこの場はお開き、フォルフリッサさんと司祭様にお辞儀をしてその場を去った。
「あの子こないだまで今にも死にそうな顔してたのに変わったな。」
「カウトール家が失くなった事よりも今後の心配をしてたので少々アドバイスを」
「お前が?あまり適当なことを言ってないだろうな」
「妻子に責任はなく、母方が頼れるのならいきなり無一文になることはないと言っただけですよ」
「間違ってないが…一体何処でそんな事覚えたんだ?」
やべっ
「グレンガルト・トゥアで仲が悪いと言うか年中喧嘩してる夫婦がいまして」
(記憶にないよ?)
ごめんよ村のみんな、嘘吐きました。
「村人ではそんな話にならんだろ」
「氏族の場合どうなるのか叔父上に聞いたので」
(にいに、嘘つき)
ごめん叔父上、レテウス君、嘘吐きました。
「ふうん…まあいいか。それで元領主の娘を口説いていたと」
「く、口説いてなんかいません!」
(ソーサが居るのに)
レテウス君まで!違うから!突然話題が変わったせいで慌ててしまった。でも六歳で十五の娘さんと婚約とか…この世界なら当たり前か、勿論この身体が青年を迎えてからの話だが許嫁ってやつね
「冗談だ。それで司祭様には何を聞いてたんだ?」
これはおじさまなりに話題を変えてくれたということだろうか…早く大人になりたい
「流…商品がどう流れるのかを聞いてましたよ。」
「それで?理解できたか?」
試されてるのかな?
「教会がすごい便利だなと思いました。」
「ほう、どう便利だと?」
やっぱこれ試されてるよ…なんて答えよう
「え~と、自分たちで売ったりしないでいい…教会にお願いすればあとはやってくれると言えばいいんでしょうか。それと帳簿も書いてくれる。ですかね…」
「そうだ流石はマザの先生だな」
危ない危ない、マザの評価まで下げてしまうところだった。
「マザは頑張ってますか?」
「頑張ってるなんてもんじゃないな。うちの仕事全部こなす勢いだぞ」
苦笑いを浮かべている所を見るとやり過ぎなくらい頑張っているみたいだな。
おじさまはグレンガルト・トゥアでは見かけることすら出来ない紙をトントンと机で揃えてこちらを見る。
「さて、お前ならどうやって利益を出す?」
おじさまは一瞬だけ笑みを浮かべた。どうやら俺を試す手を緩める気はないようだ。
やってやろうじゃないの!俺も笑みを返し、インヴァクスの攻略の手立てを話し合ったのだった。
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