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『妖精の取り替え子』認定喰らって即寒村送り!弱小氏族次男坊の独立戦争記  作者: くろすーおーばー
第二章 グレンガルト・トゥア発展編

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67:知識と実践

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「これはまた…」

 城…タワーハウスの中に入ってみると酷いものだった。

 武器の類は勿論、食料も無ければ空っぽの牛舎、逆に嗜好品の類は手がつけられていないが部屋という部屋はどこも荒れ放題だった。


「おじ様、これは…」

「恨みを買っていたのだろう。これは骨が折れそうだ。」

 略奪…、俺達は攻め入られた側でカウトールに侵攻したわけじゃないのだから、おじ様の言う通り旧カウトールの者たちの仕業だ。恨みを買っていたからなのかこの世界ではこれが普通なのかは俺には分からないがおじ様の言い方からしてそうなのだろう。


「没収した財産はローデル家のものになる。妻子ついてはまた別だ。」

 ということは…盗まれた財産を取り返し、その中から妻子の財産を分けなければならないと…、その上で 代官としてラーグの土地の立て直し…ケファー様容赦ないな、名無しの代官とはよく言ったものだエヴァン家が余力を蓄えられる気がしない、それに…


「妻子は…」

「それならば無事だ。妻と娘は教会に逃げ込んで今も匿われている」

「良かった」

 教会はこの時代、治外法権…逃げ込んだら基本的に普通の領民ならば楯突くことはできないだろう。だが相手が氏族なら別、歴史を見れば領地を巡って争った挙句、教会に閉じ込めたり教会に逃げ込んだ住民をそのまま焼き殺したのも一度や二度の例外ではない…


「まだレテウスの年齢では知らんと思うが」

 さっき自分が考えた教会についてヴァルヴェックおじさまが教えてくれる。だが知識として知っている事と現実に体験する事は違う、知っている様で知らない事だ。気を緩めちゃいけない。


 盗まれたものからして十中八九奪っていったのは領民たち、野盗達の線も無くはないが領主の城から盗んで誰にも見つからずに逃げるのは至難の業、それよりは自分の牛にしておける地元の農民の方が可能性が高い、食料に関しても野盗や盗賊なら全て無くなるためには相当な数の馬車と人数が必要、だと言うのに嗜好品は奪われていないのだ。


 野盗なら重量的にも数的にも少なくて済むというのにだ。


「おじさん、これをやったのは」

「ああ、おそらくこの地の者たちだろう。盗まれたのはどれもこれも村に置いてあっても自然なものばかり」


 やはりおじさまは切れ者だ。結婚できないんじゃなくて結婚したくないんだと理解してしまった…


「でも、そうなると元の数が判らなくありませんか?」

「そのための教会なのさ」


 どういう事?

「教会では文字で残ってるからな。俺は幸い読むことが出来る。書くのは苦手だがな」

「帳簿が在るのですか?」

「流石は神童と言われるだけのことはあるな、そうだ帳簿がここには在る。」

 

 全てではないが教会との取引や土地関係、婚姻に相続関係、そして十分の一の税…これは簡単に言うと牛が十頭生まれたら一頭教会に一頭寄贈する。厳密には土地に拠っては贈るものが変わったり他の物も一緒に贈ったりするんだっけかな。


「だからこそ昨日の件は先走りすぎだ。先に教会へ行けていれば牛の件の騒動は起きなかっただろう。言っている意味がわかるか、レテウス。」


 俺は考え込む…

「先に教会に行っていれば、牛の頭数が判るから牛飼い達が嘘をついても判った!」


「正確には先に教会に行った我らを見て牛飼いたちは嘘をつくのを止めようと思うことだ。レテウスお前は確かに頭が良い。だが問題が起きてから解決するのではなく問題そのものが起きない方が良いとは思わないか?」


 「たしかに…」

(おじさま賢い!)

 悔しいがその通りだ。牛飼いにしろ農民にしろ文字が読めないにしても、今までの経験で教会には正確な頭数がバレていると知っていただろう。それなら頭数を誤魔化そうとは思わなかったはずだ。


「おじさま!弟子入りさせてください」

「で、弟子?」


「はい!」

「ははは…親父があんなだから勝手に身についただけなんだけどなぁ」


 なるほど…俺とおじさまは二人して苦笑いを浮かべるのだった。


 ------


 「お前はどう思う?」

「どう思うって、牛飼いたちを助けてくれたから良い代官なんだろ」

 薄暗い部屋で男たちは話し合っていた


「ばか言え、牛は金だ奴らからしてみれば死んじまったらみすみす金を手放すようなもんだ」

「じゃあ俺達小作人は…」

「今まで通りさ。牛様の下僕、毟るだけ毟って放って置かれるに決まってる」


「そんな…」

「貴族も氏族も違うのは名前だけ…それに奴らロガートから食料を持ってくるって、これに慣れたら俺たちゃ用済み、牛飼いどもも食料と牛を交換しなきゃなんなくなっちまうぞ!」

 片方の男の声が徐々に大きくなる。


「そんな…」

 比例してどんどんもう一人の男の声はか細くなったときだった


「こんにちわ~」


 護衛とハミッシュを引き連れたレテウスが薄暗い部屋へと遠慮なしに踏み込んでくる。

 これはヴァルヴェックおじさまを見て気づいたことを取り入れたのだが、ここはグレンガルト・トゥアではない。


 領民との接し方はあくまでも代官と領民として始めること、その第一歩がお伺いを立てて中に入るのではなくローデル家の所有物として扱う、前世でもグレンガルト・トゥアでもしなかったが舐められてはいけないのだ。


 別にこれを利用して虐めろということではない、この後の会話は普通にして良い、ただ相手に緊張感を与え立場というものを考えさせるだけでいい…行為自体はあまり好きではないがスムーズに話を進ませるテクニックとでも言えば良いのだろうか、実際六歳の子供だしな


「おじさんたちは牛飼い?」

いつもなら付ける『ですか?』を付けないのもその一環なのだが、どうにも慣れない


「いえ…うちらは酪農じゃなくて畑で作物育ててまして」

「じゃあ、ここは二人の内のどっちかのおうち?」


「へえ……こいつの家です。」


 なんだ?今変な間があったな、護衛の一人に目配せをする


 剣に手をかける護衛


「う、うちは関係ねぇ!こいつだこいつが領主の家から燕麦を盗んだんだ」

「おい!嘘をつくんじゃねぇお前が今ならバレねぇって」


 剣を手に掛けただけで何も言ってないんだけど片方がゲロった、ここで取れる手段はいくつか在る


「家探しして盗んだ燕麦を証拠に一人を見せしめとして処罰する。同罪として二人とも処罰、見なかったことにしてあげる…」


 最後の選択肢を聞いた農民は懇願の目を向けてきた。たかが六歳の子供相手にだ、彼らにとってはそれほどまでに氏族は怖い権力なのだと実感する…そうでもなければ行きたくもないクラン・ウォーなどには参加しないか


「だが見なかったことにしてあげると他の家でも見つかった時には不公平になる。」


 二人の顔から血の気が失せる。


「そこでだ、素直に隠していた燕麦やその他もろもろを今返してくれれば…いやもう一つだな、君等の家の畑を貸してもらう事を条件に不問にしてあげても良い」


「それは…本当ですか?」

 その答えは既にパクりましたと白状しているんだけど判ってるのかな


「あとで教会の帳簿と照らし合わせるから嘘ついても無駄だからね」

 ハッタリだおそらくだが教会は領主の食料については把握しているだろうが、農民の個々の食料の残りまでは把握していまい。


「しかし、家の畑まで取られたら食っていけねぇです」

「僕は借りると言ったんだ。収穫できたものを食べてはいけないなんて一言も言ってないよ」


農民たちの頭には?マークが浮かんでいるのが手に取るように判ったレテウスだった。

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