66:セルキーと漁師3
【ブクマ】【評価ポイント★】【リアクション】を是非ポチッとワンクリックよろしくお願いします(人´∀`o))
秋とは言っても元から寒いハイランド、海側では風も強まりタイカン湖では冷たく過酷な作業が続いていた。
作業の辛さとは裏腹にクレェター達の顔は明るい、作業員が大幅に増え牡蠣の成長も順調だったからだ
「俺が始めた頃は他にこいつら二人だけでなぁ。あ!あとヨゾ様も手伝ってくれたっけな」
浜辺でそう話すクレェターの周りには十人ばかりの人で暖を取っていた。
増えたメンバーは皆このタイカン湖周辺のもの達で中には生粋の漁師だった者も含まれる。
「いやぁ、冬でも安定して仕事が有るってのはありがてぇもんさ。この辺の海は冬には荒れる。海と繋がってるとは言え湖は穏やかだ。漁師を辞めずに仕事続けられるんだからよ」
男達は上機嫌で酒を飲む、そしてクレェターの傍らにはいつもの様に女が居る。
いつまでも女と呼ぶ訳にも行かないが女は名を名乗らず、仕方なく愛称でコーヴァと呼んだ。
意味は入り江という洒落っ気もへったくれもない愛称に周りのもの達は首を横に振り可哀想にと呟いた。
余りに可哀想だと思った男衆は姐さん呼び。
だと言うのに本人はそんな名前を呼ばれても嬉しそうについて行く
変わりもん同士お似合いなのかもなと周りの者たち笑っていた。
コーヴァは華奢であったが海に詳しく、困った事があればサッと答え、海模様にも鋭く必要不可欠、誰も何処に住んでいるのかも知らないが余計な事を言って居なくなられては困ると誰も聞かないでいた。
そんなある日だった
「誰だアレ?」
誰かが言った。見上げれば何処ぞの氏族か貴族か、随分と身なりの良い男、作業に明け暮れる養殖場には似付かわない男が立っていた。
「エヴァン家の人だべか?」
「来るのはヨゾ様っつー若え旦那様だ。あれじゃねぇ」
「じゃあ誰だ?」
「俺が知るもんか、取り敢えずクレェの旦那呼ぶべ」
「んだな」
男達は仕事で忙しく、精々エヴァン家の使い程度にしか思わなかったのだがコレがえらい騒動になるのだがまだ誰も知らなかった。
「悪いが、彼女は居るかな?」
キザったらしく男は言う
「彼女って誰だ?」
「ここに来るのは彼女しか居ないだろう」
「彼女って言うんなら名前を言ってくれや」
男達も薄々気づき始めた、この男が旦那の恋のライバルだと。
男達は全員旦那の味方…と言うよりも面白がっている。海の男達は楽しい事が何よりも好きなのだ!
あれよあれよと言う間に全員に伝播して男を取り囲むが手は出せない
「おい、お前らどうした?仕事しろ…ん?あんた誰だ」
男達の緊迫した様子とは裏腹にいつも通りのクレェターがやって来てはっぱを掛ける
「ふっ、そうかお前が彼女の…」
男はクレェターの身なりを見るなり蔑んで鼻で笑う
一方でクレェターは身なりで相手がレテウスの関係者と勘違い
「これはこれはこんな所まで来て頂き…」
出来る限り下手に出るが…
「そんな前置きはどうでもいい、彼女を隠しているのは判ってるんだ。素直に彼女を渡せ!隠し立てすれば容赦しない!」
さっきまでの余裕は何処へやら、クレェターに向かってがなりたてる男
いきなり怒鳴られたが今のクレェターは動じなかった、従業員も増え揉め事にも慣れ始めていた
これはレテウス様の関係者じゃねえな…ここで女と言えばコーヴァ位のもんだ、さてはあいつ色恋沙汰で揉めてんのか。
「あー、何を勘違いしてんのか察しはついたけど、あんたの勘違いだ帰ってくれ」
勘違いはあんただ!
誰しもが思ったがグッと堪える面々
「なるほど、あくまでもシラを切るつもりだな。いいだろうこっちもただとは言わん。」
「あんた何を言ってんだ?」
「これで手を打とうじゃないか」
男が手に持っていた袋の口を開けると一つや二つではない宝石が顔を覗かせた
「うぉぉぉぉ!凄え」
「あんだけありゃあ一生食ってけるんじゃ…いやそれ以上!」
周りの男達はやいのやいのと騒ぎ出すがクレェターは違った
「なんのつもりだ」
「人は強欲だからな、こういったものが良いのだろう?」
男の態度はあからさまにクレェター…人そのものを見下しているのが癪に障ったのか、クレェターが袋を叩き落とした
「あいつが何処の誰と付き合おうが勝手だが、人を物見てぇに扱うんじゃねぇ」
静まり返る浜辺には波の音だけが響いた。
「こちらが下手に出てやっていると言うのに…」
「だ、旦那不味いって、相手はお貴族様かもしんねぇんだぞ」
「ふん、貴族だか氏族だかしらねぇよ。それにな下手に出てもらわなくて結構。相手が誰だかしらねぇがコーヴァはお前さんみてぇな奴にくれてやるつもりはねぇ!」
「あ…」
言った!遂に旦那が嫁宣言したぞとざわざわし始めた時だった。
地面に落ちた籠と走り去る影
「姐さん!」
「姫様!」
「「「姫様?」」」
「むぅ!下郎どもめ、貴様らセルキーの姫とも知らずに接していたと言うのか」
男は吐き捨てる様に言うと、走り去ってしまう。
「あいつセルキーのお姫様だったんか…」
クレェターだけでなく驚愕で誰も動けなかった…
「誰が相手かくらい言っといてくれりゃもうちっとましな話し方したのに…」
駄目だこりゃ、鈍すぎるクレェターに皆頭を抱えたのだった
【ブクマ】【評価ポイント★】【リアクション】を是非ポチッとワンクリックよろしくお願いします(人´∀`o)




