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『妖精の取り替え子』認定喰らって即寒村送り!弱小氏族次男坊の独立戦争記  作者: くろすーおーばー
第二章 グレンガルト・トゥア発展編

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60:顛末

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何処かの王宮だろうか?

 レテウスは見知らぬ場所を漂っている。中空を泳ぐでもなく文字通り漂う。


 侍従も召使いもおらず、王宮の間にはたった二人だけ、歳の離れた兄妹だろうか?一人は玉座にもう一人はその正面に立つ


玉座の男は言う


「愛しい我が娘マルレーネよ。お前をお前の母にして我妻の故郷アスピコットへ送らねばならん」


 幼い娘は答える。


「お父様は来られないのですか?」

「すまない。お前は二度とこの二リヴィの土を踏む事は無いであろう。」


「はい…」


 二リヴィの王宮…俺は何故こんな場所に?

 あれは、我が国アスピコットの女王になられるお方、マルレーネ様と言うことか…


 中世、気軽に使っているがその時代は大きく、人によって概念すら変わる。


 知っている事と体験する事は知識によって身構える事は可能かもしれないが違う


 知識としては知っている、数多の貴族王族が華やかに見える生活の裏でその国の為、子や孫遠い血縁まで使えるものは全てを使って繋ぎ…その多くが滅んだ


 王宮の間を去る王女、そしてその小さな背中に


「すまない我が子よ…」

 項垂れ頭を抱えた王


 歴史が同じならば…マルレーネを最後にアスピコットの王家も滅び、戦乱の世に戻りロバート・ザ・ブルースに準ずる人間がアスピコットを平定…、と言ってもいいのか…スコットランドはその後も苦難の道を歩むのだから。


「お前は救いたいのだろう」


「誰だ!」


こちらの声は二人には届かない


二人では無い誰かの声


「救ったところで人は争いを辞めぬ」

「だからどうした」


「ほう、そこに何の意味がある」


「お前か…俺をこの世界に送ったのは、ならば質問を返してやる。救わぬのなら何故俺を送ったのだ!」


「多少未来から来た分理性的かと思ったのだが…血気盛んとはこの事、この国に似合いじゃ」


「答えになってないぞ貴様は一体誰なんだ!」


「わしがお主を呼んだのでは無い。答えなど知るわけがなかろう。精々意味とやらをその短い人の生で探す事だ、ではな…」


「待て、それじゃあ俺を送ったのは、この世界は何なんだ!」


 王宮は消え去り、視界は闇に飲み込まれた。


ーーーーーー


 戦闘から三日経ったがレテウスの意識は戻らなかった。


「うっ…あっ…」


 時折呻き声を上げる。それが今のレテウスが生きている証明だった。


 全身包帯まみれのレテウス、ローデル家からは医者まで呼ばれていた。弱小氏族の次男坊には過ぎた厚遇、兄アンガスの配慮であった。


「お兄様…」

 ソーサはレテウスの額に手を置いた。

「熱い…」


 戦闘で酷く攻撃されたと聞いた、一緒に居たクラウも怪我をして休んでいる。

 ソラスも居れば怪我をしないで済んだかもしれない。ソラスが私の護衛をせずにお兄様の付いていれば…私が弱いから…


 悔やんでも悔やみきれなかった


 私もみんなの様に戦える様になりたい…どうすれば。


 「失礼するよ」

 扉が開きアンガスが入って来た。お兄様のお兄様…

 「いつもありがとう。」

 そう言うとアンガス様はお兄様の額に手を当て何かを唱えた。

 アンガスの額を汗が伝う。アンガス様は癒しの魔法を連日掛けてお兄様を癒していると言うのに私には何も出来ない…


 アンガスは息を吐き魔法を終える。


「あの…」

「なんだい?」

「お兄様…レテウス様の容態は…元気になりますよね!」


「お兄様?ああ、君はレテウスを兄と慕ってくれているのだね。」

 ソーサは頷く


「お兄様は私を救ってくれました。」

 詳しく聞いても?


 ソーサはカウトールの牛泥棒に家族を殺された事、レテウスが仇を取ってくれた事を話した…


 アンガスは弟の年齢を考え信じられないといった様子だったがソーサの言葉を信じた。


「全く無茶をする弟で困る。」

苦笑いを浮かべたアンガスだったが弟の髪を撫でる手は優しかった。

「手酷くやられたけど大丈夫。必ず僕が癒してみせるから。」


弟を撫でた手でソーサの頭も優しく撫でた。


「あ!あの、私にも癒しの魔法を教えて下さい!」


 どうやらレテウスをお兄様と言うだけあって性格も似たらしい。アンガスはレテウスに


「魔法を教えて下さい」

と言われた日を懐かしんだのだった。


ーーーーーー


「こちらにいらしましたか、ケファー様」


「ああ」

「随分と浮かない顔をされて、どうなさいましたか?」


「どうしたもこうしたもないわ。この小競り合いを裁定してこいとの父上の命だったが…やり辛い事この上ない」


「何故にございますか?」


「阿呆、予にとってみれば両方兄弟の地、片やカウトールの地に戻ったかと思えば兄を殺してまで氏族の長になってした事が牛泥棒を切欠とした逆恨み、もう片方は氏族の息子とは言え六歳の童迄戦に参加したというではないか、どちらも阿呆で狂うておる。こんな常識のない輩の裁定やり辛くて叶わんわ」


「おっしゃる通りでございます。」

 言葉にされてみればこの戦いの異様さがよく分かるが得をするものが居ないのだ。


 牛泥棒の腹いせに一族が滅ぶ覚悟で暴れるうつけと次代の若者迄動員する同じ親氏族を持った小氏族、互いに落とし所が有った気配もない…確かに親氏族から見ればこの上なく馬鹿馬鹿しい


「煩わせおって」

「それで如何様になさいますか?」


「カウトールは家名を剥奪。今後カウトールの名を名乗る事許さぬ。里子として育ててもらった恩も忘れてこの様な事態を招いたのだ、当然であろう。」


「はっ」


「エヴァン家については…そうだな、

無名の代官を任ずる」


「無名とは…少々手厳しい沙汰かと思われますが…」


 無名の代官とはただで代官だけをしろという事、利益無しの無償奉仕という事である


「お前もエヴァン家の人間、肩入れしたいだろうが堪えよ。この沙汰を他の氏族も見れば下手な諍いを起こす気にもならんであろう」



目を覚ますと節々が痛んだが骨はどうやら無事、早速ケファー様に呼び出された。


 俺が意識を失った後は兄上があの男を葬ってくれたらしい。流石兄上と眼差しを向ければ何やら青い顔…戦闘よりも俺の回復に力を持ってかれたのだとか、俺の体が五体満足なのは兄上の癒しの魔法のおかげだった。


「まったく子供だというのに無理をしおって」

 中身で言うといい歳、少なくともこちらの世界で成人なのだが、この様では何も言い返せない。レテウス君の肉体なのだから…


(にいに、もう平気?)

 ごめんレテウス君

(子供たちの為、仕方ない)

 これではどちらが子供かわからない…


(痛いの一緒、気持ちも一緒)

 慰められれば慰められる程自分の行動の浅はかさを感じてしまうな


(にいに、これからは身体鍛えたい)

 そうだな、一緒に頑張っていかないとな


 ところでレテウス君は眠ってる時に何か見た?

(見てないよ?にいには何か見たの?)


 あの光景は俺だけなのか…なんでだ…


(何か見たの?)

 ああ、俺たちで救いたいて言ってた王女様を見た。

(どんな人だったの?)

 王様…お父さんと会話していただけだったけど、やっぱり王女様はあの様子なら海を渡って来ると思う。


(おんなじ…)

 ん?


(なんでも無い、ただ父親と離れ離れになる…)

 そうかレテウス君も父親と…


「聞いておるのか?」

 おっと行けねぇ

「すいません。まだ頭がぼーっとして」

「まあ仕方あるまい。兄君に感謝するのだな」

「…はい」


「この都度の沙汰を手短に伝える。カウトール家は取り潰し。今後その名を呼ぶ事もならん。」

結構キツイ沙汰だな、とは言え向こうの都合だけで仕掛けられて事を考えればそれも


「エヴァン家からはお前とマードックの息子は代官として旧カウトール家領地を治めよ」


「え!」

「なお領地は我がローデル家の直轄地とする」


「それでは我らエヴァン家は襲われ損…という事でございますか?」

納得が行かない…


「まあそんな顔をするな、頭の良いお前なら分かるであろう」


何がだ!


「今回は同レベルの氏族同士のいざこざ、これが力有る氏族と弱き氏族だったらどうなる?」


「力有る…あ!力有る氏族がちょっかいをかけて堪忍袋の尾が切れた小氏族が仕掛ければ…」


「身も蓋もないが、そういう事だ。今回の裁定でエヴァン家が有利になるのならその前例を盾に力有る氏族が同じ手で領地を増やして回る事になる。それは避けたい」


「なるほど…納得は行きませんが理由はわかりました。」


「やはり飲み込みが速いなお前の弟は。…だがそうは言ってもこのままではエヴァン家は負担が増えるだけで不満も溜まる。そこでだ、旧カウトール領の治める地代の品目は今のままにする」


「ん?それでは何も…なるほどそういう事ですか」


「判ったか?」

「ケファー様?」

「なんじゃアンガス、弟に負けておるぞははは」

 兄上はまだ気づいていないみたいだけどこれはチャンスだ

(にいに?どういう事?)

 レテウス君もまだ判ってない様だ。


 レテウス君、ケファー様は地代の品目は今のままと言ったんだけど、地代の品目って何か判る?

 牛・羊・麦類に豆?

 そうだね他にも旧カウトール領から取られてた地代があるにせよ『今のまま』という事はそれ以外の物はお目溢し…見なかった事にしてくれるって事さ


 じゃあ、地代に含まれない物で稼いでいいって事だね


 そういう事、それにこの言い方なら周りの領地には今まで通りの取り立てだと言える…流石は次期領主の最有力候補なだけはある、ただの銭湯好きじゃなかったみたいだ


「お前何か失礼な事考えてないか?」


 あぶな…声に出さなくて良かった


でも、グレンガルト・トゥアも途中なのに旧カウトール領の代官か…マードック大叔父様の息子さんにも会った事無いしタスクばかりが増えて行って結果が出てないなぁ…


 それにソーサも付いてきそうで、あぁ胃が痛くなってきた…


「それと…お前も見ただろうが堕天した精霊に気をつけよ。」


「堕天…あの異常な力を持った兵士や嫡男の力ですか?…」


「そうだ、弱った心を好み取り憑く精霊の類。身に染みて解ったであろう。」


 もしかしてあの男は取り憑かれたせいで…


 「それは違うな。お前はあの男が取り憑かれてこの様な無謀な争い事を起こしたと考えているのだろうが、奴らは自ら事は起こせぬ。取り憑いたとすれば一線を超えた後じゃ。」


 なんでそんな事が分かるのだろうか?これも伝承なのか?


「あの様な存在は…その、やたらと出る物なのでしょうか?」


 あんなのだらけでは氏族の争い以上に困る


「滅多に憑かれる事はない筈だが…」

「だが…」


「死者が増えている事もある。」


「死者が増えるとあんな奴も増えるのですか?」

「死者が増えれば怨さの念も増える。餌か依代か暗黒の時代にそういったものが増えるのは世の常。」


 明確な原因は分かっているわけじゃないのか…でも歴史的にも気候的にも小氷期がやって来ている。用心はしておこう。


 レテウス達は新たな知己を得ると同時に謎も得たのだった。

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