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『妖精の取り替え子』認定喰らって即寒村送り!弱小氏族次男坊の独立戦争記  作者: くろすーおーばー
第二章 グレンガルト・トゥア発展編

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59:クラン・ウォー

沢山の方に読んでいただきランキング入りを目指しています。

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クラウからの連絡が入る。やはり奴らは本家ではなくグレンガルト・トゥアを狙っている様だ


 元々はお前の領地が牛泥棒をしたのが原因だというのに執念深い奴だ。


 サウィンの祭りも取り止め、村中には松明の灯りを集めた


 月の無い新月の秋の夜、山はこれから起きる惨劇を知っているのか虫の鳴き声すら鳴りを顰め静寂を決め込んでいた。


 本家には連絡済みだが本家とて身を固めるので精一杯、こちらへの応援には駆けつけることは出来まい。


 ほぼ農民のグレンガルト・トゥアでやる気満々の連中を相手にしなければならないときた


「見えねぇと思ってんだろうがそうはいかないんだよね。」


 魔力を感知する魔眼だけでは俺だけしか見えないが…


 火の魔法を照明弾として打ち上げ、新月の夜に眩いばかりの光が降り注ぐ。


 本来ならこの時代の氏族間の戦は相手を完全に根絶やしになどしない。

 大抵は領地の境界線を巡る小競り合い、勝敗が決すれば地代や家畜の割譲で手打ちとなる…


 だが彼奴の眼は異常な迄に飢えていた。


 火を焚き周りが見える様にするのは常説から外れる事だが何をしてくるのかわからない相手にはこちらも常識に沿っていては負ける。


 通常と違うのは火を村では無く村の外に焚いたこと、敵が進みそうなルート上に置いた事だ。


 目を凝らすと

「居た!」

 レテウス君行くよ。覚悟はいい?

(大丈夫、彼奴はソーサを狙うって言った。絶対にそうはさせない)


 魔眼を通して敵を探る、数が不明だが相手とて闇夜、見えたとして同程度、俺とサンヴィル先生なら暗闇の中でも弓矢で仕留められる筈だ。


 魔眼で見える光とは別の光、火だ、無数の火がこちらを狙う。


 スコットランドでは氏族同士の争いファイアリークロスでは、夜襲・待ち伏せ・放火・そして家畜を含めた略奪…


 やはり燃やす気か、壁は石だが屋根は藁と土、濡らしてはいるがいつまで持つか…引き篭もって持久戦とは行かない様だな

 

「グァッ!」

 早速先生が一人倒した、こっちも狙いを決めさせてもらう。

 ホームでの戦だ、夜になっても照明弾のお陰で距離感が狂うことはない。風魔法を乗せた弓を射る


「グゥッ…」

(大丈夫!にいにこのまま倒そう!)

 問題は何人居るのかそして奴がどこに居るのかだ。落ち着け馬鹿でかいWW2の様な規模の戦いではない。将を射る事ができれば終わる戦い。一刻も速く将を倒せばその分犠牲者が減る筈なんだ。何処だ出てこい。


ヒュッ


「グゥァァァッ」

 サンヴィル先生がまた一人倒した様だ


「もう嫌だ、俺は戦いたくねぇ。降参だ助けてくれぇ」


 まだ始まったばかりだと言うのにハイランドの男らしからぬ覚悟の無さだ。お陰で動きが丸見えだ。


 容赦は掛けない、ここは戦場


 お粗末だがあれが演技では無いとは言い切れない。戦場に立ったからには覚悟を決めなければ生き残れる道も自分で絶ってしまう。


ヒュッ


「ガァッ」


 次々と順調に敵を葬って行けている。


ヒュッ

 先生が機械の様に矢を放ち続けている


 灯りが消える間を与えるつもりはない。もう一度照明弾を放った…

(にいに!あれはっ!)

「レテウス様!矢を放ってはいけない。」

「くそっ外道め!」


照明弾の灯りが子供を照らし出した。


氏族同士の戦いは非道だと知っている…だが…


召集される者は十六〜六十の者と決まっている、年端も行かない子供は含まれていない。


それが最低限の仁義…だろうが!


「ほらどうした討てよ。どうせカウトールの人間には変わりないんだからなぁ」


闇夜から聞こえるあの男の声


「卑怯だぞ。子供を巻き込むな!」

 夜空に向かって叫ぶ


「くくくっ、弓矢で大人を射る子供が面白いことを言うではないか!」


「彼奴俺が見えてるのか?」

「レテウス様、惑わされては行けない」


「レテウス!怯むでない。お前が倒れれば村の者たちはどうなる!」


叔父上の声だ。


「すまぬ」

 謝罪の言葉と共に闇夜に叔父上の剣が光った。


「ウォォォ!」

叔父上に続きヨゾも雄叫びを上げ敵陣へと突撃する。


 剣か槍か暗闇の中で火花が散る、農民とて黙っていない。急拵えのパイクを手に数で押す。


 トネリコの木を柄に使った12フィート(3.6m)のパイクを相手の胸の高さに向けて突き出し盾で身体を防御し密集陣形で突き進む


スコットランドの英雄ウィリアム・ウォレスやロバート・ザ・ブルースが用いた陣形シルトロンの簡易版だ。


「許せ!カウトールの民よ。命をくれてやれぬのは我らとて同じ、恨むなら恨んでくれ」


「痛い!痛いよぉぉ。父ちゃん母ちゃん助けてぇ」


「怯むな!怯めばこの叫びは我が子が叫ぶ事になるのだぞ」


 子供達の痛ましい悲鳴が村に響き渡った。


「クソッ…」


 鈍りかけた覚悟をもう一度奮い立たせ矢を放つ


「嫌だぁ、俺は毎日麦さ作ってるだけなんだぁ!うぐっあぁ…」


 涙が止まらない。この戦いに何の意味があると言うんだ!


「あはっ、良いぞ役立たずどもが生の意味を初めて知り、躍動しているじゃないか。美しい美しい、これぞ生きる喜びじゃないか」


 狂った笑いを叫び酔い惚れる男


 許さない…狂ってる、この男はもう戻れない、戻してはいけない。


「クラウ来い」

 瞬時に走り出し俺を乗せてクラウが駆ける


「レテウス様!駄目だ!奴の狙いは」

 嗚呼、俺だろう。やってやる!奴を仕留めて終わらせるしかないんだ。


奴の獲物は…パイクか、なんでも良いアウトレンジからお前に頭を

< 父、左から何か来る >

「なっ!」

 弓を左に向けかけたところで衝撃が走った


「くぁっ!」

< 気をつけて此奴人じゃない >

 人じゃない?どう言うことだ、だが解る見た目は人間だがターゲットに子供を付けた状態でクラウに追いつける人間なんて居ない。


「グゥガァァァァ」

 雄叫びを上げ人の様な者が追ってくる。


「うわぁぁぁ」

振り回され泣き叫ぶ子供


「クソっ、人外なんて!いやそれよりもターゲットに括り付けられた子供を…


 化け物はそのまま子供の付いたターゲットを振りかぶり


「やめろーーーーー!」


 俺めがけて投げつけた


 クラウは避けなかった、ターゲットが直撃し衝撃で投げ出された俺は木に強か打ち付けられる


「ガハッ」

 息が詰まる。クラウと子供は?


顔を上げた瞬間だった。

「おやおや〜」


ドフッ

強烈な蹴りが鳩尾に入った


「ーーーッ」


ドフッ

今度は頭…視界がぼやけて…

「おいおいさっきまでの威勢はどうしたよガキィィ」


髪を掴まれ持ち上げられる

「ぁ…ぅ……」

「あぁ〜、聞こえねぇなぁ〜」

魔法を…攻撃…


「このまま頭握り潰してやろうか」


「貴様!レテウス様から離れろ」

 サンヴィルが弓を構えたまま男に警告する。


「あぁん、ほら討てよ。速くしねぇとお坊ちゃんが」


ヒュッ


 サンヴィルの矢が男の右眼に深々と刺さる…が


「ざぁんねぇん。ざんねぇん残念残念残念残念残念残念!」


「な…ぜ…こんな、貴様さては憑かれたか」


「憑かれた?なんの事を言っている。まあどうでも良い。小僧も小僧の兄弟もお前もケファー様もぐちゃぐちゃにしてやる」


「…せ」

「ああぁん?」

レテウスの手が男の手を掴む


「その…穢れた手をにいにから…僕から…離せって言ったんだーーーーーーー」


ゴウッ


レテウスの身体が蒼い炎となって輝いた


「レテウス様!?」

「どうしたレテウスはぶ…じ…」

駆けつけた叔父デイヴィッドも声を失った


「なんだお前もこっちが」

小さな拳が巨躯を殴った…と言うには似合わない威力、文字通り吹き飛んだ


「叔父さ…ん、せん…せ」

光が収まるとレテウスの意識も途切れ地面へと落ちた。


ブォォォォォォ


パイプの音が鳴り響く

小氏族の付け焼き刃の装備とは比べるまでも無い鉄の装備と隊列の整った士気に溢れる兵士たちが双方の間に割って入る


「双方引けーーーー」


「我はローデル家ケファー、エヴァン家カウトール家双方引くのだ。これ以上の争いはこのローデル家が許さぬ」


 終わった…のか?これ以上の争いは起きない筈だが先程までの光景が終わったと感じさせてくれない。


「グェァァァ!いでぇ!目が俺の目がァァァ!いでぇぇぇぇ」

あまりの叫び声にデイヴィッドもサンヴィルもやっと正気を取り戻す。


「レテウス!レテウス!」

 デイヴィッドが駆け寄るもレテウスの意識は無いまま、サンヴィルは短剣を手に取り人外に目を向けた。


 クラウの顎が人外だったものの首を切り落としていた。


「サンヴィル、そいつを見ていろ。歯向かう様なら殺せ。」

「わかりました。」


「安心しろ意識は失っているが息はある」

 デイヴィッドの答えにサンヴィルも小さく安堵した。


「エヴァン家の者、カウトール家双方の責任者は何処だ」


大きな声が聞こえてきたが、半狂乱の男を放っておくことは出来ない。


「糞がァァァ!呪ってやるお前ら全員呪ってやる!!!!!!」


 この戦いの原因が自ら大声を出してくれるお陰でケファー様たちがやって来てくれたのは助かったが…


 アンガスの視界が傷ついたレテウスを捉えた

「叔父上!レテウスはどうしてこんな所に」


 デイヴィッドは迷った。まだ6歳にも満たない弟が戦闘に参加どころか先陣を切ったと言ったらこの兄はどうなってしまうだろうか…


「アンガスゥゥゥ!お前お前が元凶そうだお前のせいで、ケファー様!お話を聞いてください。このエヴァン家は我が領地より民を奪い」


 冷め切った眼がカウトールの新支族長を捉える


「その前に聞きたい事がある。貴様は正気か?」


「何をおっしゃいます。正気に決まって」

 先程までの狂気に歪んだ顔はなりを顰め、人間の様な表情を浮かべる


「ではワーバイン、貴様は正気で年端もいかぬ者たちを盾に使ったのだな。このローデルの傘下の領土で…」


「貴様は氏族を名乗る器では無いわ。このうつけめ、ひっ捕えろ!」


ローデルの兵達が取り囲む


「ケファー様…私は貴方に使える事を…」

「その結果がこれか?結果がお前自身の資質を示しておるでは無いか」


 そこには以前のケファーの気配はない。冷徹な君主そのもの一切の言い訳も許さぬ絶対的な君主が存在していた。


ワーバインは観念したかと思われたが突如刺さった矢ごと目を抉り出した。


「己れ…おのれおのれおのれーーーー」

その様子を見てもケファーは眉ひとつ動かさない


「ケファー様、せめて氏族として…」

「良かろう、情けだこの場で死なせてやる。アンガス」


「はっ」


間合いを取りアンガスは剣をワーバインに投げた


狂気に染まり片目を無くしたと言うのにニタァと歪んだ笑顔を浮かべ

「そうだ、弟ではなくお前を殺れれば本望だったんだ。気持ち良かったぜぇ弟の頭蹴った感触はよぉ〜」


「これ以上、名を汚すなワーバイン・ドゥ・カウトール」


「あぁん、うるせぇよ!お前を斬ったら」


アンガスが動いた

「これ以上喋るな…下衆が」


ワーバインは動けなかったが…身体は無事…

「あはっ!あははっ!かっこだけかよ、だから…おま…おろ、ろろ…ろ?」


「斬られたことに気付かぬほど狂気に堕ちたか」

 剣撃から遅れる事数秒…鮮血と共にどさりと臓物がこぼれ落ちる


「おべ…?まびゃ死にゃねぇ」

必死にこぼれ落ちた臓を掻き集めながらワーバインは絶命した


「おい!お前先程、蒼い焔が立ち昇った。余は見た事がない。あれは誰の魔法だ支族長として答えよ。」


そんな事を言われてもデイヴィッドもサンヴィルも答えようが無いのだが正直に話せばレテウスは連れて行かれてしまうだろう。


答えを間違えれば一刀の元に伏されかねないこの状況で


「精霊様がお助けになったとしかお答えできませぬ…」


苦しい、苦しすぎる言い訳だった


「そうか…」


緊張で喉を唾すら通らない…


「俺も見たかったな…」

ぽつりと一言漏らしただけだった。



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