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『妖精の取り替え子』認定喰らって即寒村送り!弱小氏族次男坊の独立戦争記  作者: くろすーおーばー
第二章 グレンガルト・トゥア発展編

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58:セルキーと漁師2

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カウトール家から宣戦布告を受ける少し前


まだ夏の盛りの頃のお話


「ねえ、兄貴あの人また来てるよ」

「暇な女だ」


 あれからというもの何故か女がやってくる。いつもクレェターの仕事終わりにはいつの間にかに傍らに来ていた。


 相当暇の様だがこちとら忙しい、用事を聞いても


「別に」


 の一点張り、邪魔をすることも無いので放っておいてる。


 見たところ妙齢、女特有の結婚前のなんとやら?なのだろうか。暫くすればいなくなるだろう。


「なんであちこちに牡蠣殻を置くの?」

「何処が一番育つか調べるためさ、と言っても俺が考えたわけじゃねぇけどな。」


「なぜそんな事を?」

質問の多い女だ


「レテウス様は出来る限り此処を傷つけずに牡蠣を取りてえのさ、そうすりゃ周辺の人間が獲っても牡蠣そのもののは減らねえだろう。お前さんだって食べてぇ時に牡蠣が無いと困るだろ?」


「そうか、お前さんの上の人間はそう考えるのか」

 気だるげに座って話を聞く女


「ああ、そうだ。自分たちの分は自分たちで都合を付ける。他所様と喧嘩しねぇがモットーの優しい方さ、お陰で俺達は戦に怯えなくて良いんだからよ」


 クレェターは去年までの苦労を思い出し暗い顔をするが直ぐに明るい笑顔を見せた


「優しいのだなお前達の頭は」


「あんたの所はどうなんだ?あんた美人だし嫁に行け行けうるさかったりするんじゃねぇのけ」


 女は考え込んでいるのか返事が返って来ない。余計な事を聞いちまったかもしれねぇとクレェターは頭を掻いた。


「そうなのかもしれないな。」


 掴みどころの無い女は、どうでも良さそうにそう答えて席を立つ。


「牡蠣は上手く育ちそうかい?」

「今のところは順調だな。」

「そう…でも毎年今ぐらいの季節に嵐が来るわ。間違っても何かしようなんて思わない事ね」


「流石地元だな。ありがとうよ。俺は今年からだから季節の事はさっぱりでな、助かるよ。」


「………」


「姉ちゃん、もしかして兄貴の事…」

「俺がどうしたって?」


 女の顔を見た子供は震え上がって黙り込んだ、余程怖い顔でもしてたのだろう。なんでそんな顔をしたのかわからんが、クレェターの頭は嵐の事でいっぱい、嵐で何が変わるのか既に予想に入っていてさして女の態度を気にも留めなかった。


 そして女の忠告通り嵐がやってきた。


 女の忠告のお陰でクレェター達は無事だったが湖の様子はめちゃくちゃ、嵐の過ぎ去った後は嘘の様に穏やかな湖だったが、今まで取っていたデータも意味をなさなくなってしまった。


「いいや、こんな時こそデータが重要になるんだ。」


そう言って嵐の後にやってきたレテウス様は怒るでもなく村の手の空いた者を引き連れ湖の状況を立て直しにやって来た


「ところでお前に嵐の事を教えてくれた女はこの辺の女なのか?」


「さあ、お前達は知ってるか?」

気がつけば居るが何処からやってきたか見た事は無かった。


子供らも首を横に振る。

「正体不明か、まさかと思うがローデル家の密偵…流石にないか…」

「偉いべっぴんさんですけどね。」


「益々怪しい…」

「そういや、初めて会った時はなんかおっさんに盗まれそうになってましたね。皮っぽい物を」


「お前それ…どうした」

「どうしたって何をです?」


「その皮だよ。もしかして皮を奪ったり」


「とんでもない、ちゃんと返しやしたよ。なんか変な顔されましたけどね。」


「う〜ん、返したのなら…まあ良いか。」

 

 何の事だかさっぱりのクレェターに対して何か知っている様なレテウスはブツブツ言っているがそれ以上は教えてくれなかった。


「それよりも、今の湖の状況だ!砂と泥に埋まってしまっては牡蠣が呼吸出来ない、急いで引っ張り上げるぞ」


 それだけだけではない、通常汽水湖は軽い淡水が上の層、重い塩水が下という二層構造になっているが嵐で撹拌されてしまった汽水湖は極端に淡水化してしまう。


 砂に足をとられぬようハンノキの板を敷き、埋まった牡蠣を網毎引き揚げる。


今はまだ冷たい汽水の中でもしっかりと殻を閉じ生きていたが…


 時間との勝負が牡蠣の生死を別ける。沢山の村人で作業しても網にどっさりと詰まった泥で思うように進まない。


「仕方あるまい。上流は諦めよう。海水に近い方、海側から作業をしてくれ。」


 季節は夏だがハイランドの水はそれでも冷たい、作業は交代交代で行われた。


 気づけばグレンガルトの民だけでなく湖畔の近くに住むローデルの民まで手伝っている、通りで最初より動きが良いわけだ。


 人が良い…とも言えるが、本音は手伝った分のおこぼれに与るつもりつもりなのだろう。


 牡蠣はちょっとあげられないが、あとで何か…豆でも給料代わりに支払っておくとしよう。


 いや、ローデル家に確認は必要だが雇ってしまった方が良いのでは無いだろうか…


 潮が引けば歩けるとは言っても大人一人子供二人…時期に増やすつもりだったが地元民を雇えるのならその方がいい、レテウスは少ない人手を増やす方法を考えていた。


「おお〜い、こっちだ」

クレェターは寒い海に潜り淡水化した湖に残る海水部分へ牡蠣を誘導する。


「ヨゾ、ここの場所に浮きを、ここは嵐が来ても塩水が残ってる記録しといて」


 牡蠣を移動させながら、記録を取り続けるレテウスにクレェターは舌を巻く。


「ほらクレェターもよく覚えといて、嵐のお陰で影響を受けにくい場所が判ったんだから。」


 嵐がやってきたというのに途方に暮れるどころか、逆に牡蠣が生き残れる場所を記録してしまうのだから。

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