幼少期6:兄弟と兄妹
基本的な投稿間隔ですが、毎週火曜日と金曜日を予定しています。余裕があったり筆が乗った場合は追加投稿も有るかも?
妖狼の背に乗り先を急ぐ
「後どれくらいですか?」
「もう直ぐだ、それにしてもさっきまであれだけ血気盛んだったかと思えば今度は子どもとは思えぬ言葉遣いお主のような人間は初めて見るのう」
「こっちが素です、子どもの命がかかってるんです誰だってそうなるでしょ」
「誰だってか…お前は良い父親になるであろう」
「血繋がってないんで」
「血どころか身体が繋がっておるのだろう」
そういう見方もあるのか考えたこともなかった、ん?なんかヌルヌルするなんだこれ
鉄臭い…これは月明かりに照らしてみて判った
「この血どうしたんですか?さっきの」
「お前ごときの攻撃ではないわ、追手に付けられたものだ」
「癒しの魔法で」
「我は良い、妻と子供たちにやってやってくれ」
「でも」
「我にかけて妻たちに足りなくなったらお前を噛み殺す」
「判りました…」
こんなに強いのに、追っ手は一体どんなやつなんだよ
「着いたぞあの洞穴の中だ、頼んだ」
「あなたは?」
「おれは外を見張っておく」
「はい」
火魔法を灯りに奥へ進む、すぐにキューキューという鳴き声が聴こえてきた
「誰?」
「その声はヨゾか?」
「レテウス?」
「うんマザも居るの?」
「ああ居る疲れて眠っているだけだ、大人を連れてきてくれたの?」
「いや連れてきてないけど明日には帰れるから心配しないで大丈夫」
少し火魔法を大きくして明るくすると旦那と同じ巨躯の狼が横になっていた違うとすれば真っ白な美しい毛色だろうか
「あの旦那さんに言われて来ましたどうすれば良いですか」
「かたじけない、この子達に貴方の魔力を与えてくださいますか」
「それは癒しの魔法を掛けるということでしょうか?」
「いいえ純粋に貴方の魔力を食べさせてあげていただければ」
そんな事やったとない、察してくれたのか母狼が声をかける
「人族は手で魔法を放ちますよね」
「はい」
「放つ際に何処かから魔力が抜ける感覚はありませんか」
「あります掌というか手首でしょうか」
「詠唱を唱えずにそこから魔力を絞り出す感じです」
こうかな?手首に意識を集中しすると魔力が集まっていくのが判る
「魔力の抜ける穴を想像してください」
「はい」
「レテウス?」
「しっ!集中するから今は黙って」
「う、うん」
ヨゾには悪いけどこれはイメージが重要で神経を使う乱されたくない
両の手首にしっかりと魔力の抜ける穴をイメージできた既に穴からは魔力が漏れているのを感じる
「ちゃんと出来ていますでしょうか?」
「ええ大丈夫です」
「その…魔力を見る事ができないので…」
「少しこちらに来ていただけますか」
「はい」
集中を切らさないように母狼に近づくと額を近づけてくる、これは俺も同じ様に頭を出せってことだろうか
おでこ同士をくっつけ目を閉じると何かが頭の中に入ってきた
「これでどうですか?念じれば魔力が見えるはずです」
目を開けると目まぐるしく色の変わる光が水の様に流れていた
「これが魔力…」
魔力は太くなったり細くなったりで安定しない、もしかして…糸紡ぎの要領で細く均一にするイメージを思い浮かべると魔力が安定し始めた
「凄いわすぐに覚えるのは大変なのに…」
「あのこれを?」
「子供たちに飲ませてあげて」
「はい」
赤ん坊は四匹居る、だけど見た瞬間に気づいてしまう二匹はピクリとも動かず胸も動いていない
か弱く泣く残った二匹に急いで手首を持っていく
「ごめんレテウス俺達どうすればいいのか解らなくて」
すすり泣くヨゾ
「あなた達のせいでは有りません、関係のないあなた達にこんな事を頼んだ私たちが悪いのです泣かないで」
そうか二人も魔力をあげようとしたけど出来なかったのか
両方の手首からすごい勢いで魔力が抜けていくのが判るこれ足りないかもしれないそんな不安が過った
「一つ聞きたいんですけど」
「お母さんは死んでしまうんですか」
「どうしてそう思うのです?」
「すでに亡くなった子供たち、そして残った子供たちも人の手を借りなければいけないくらい危険な状態なんですよね、それはもうお母さんに力が残っていないという事だと思うんです」
「そうですね。そしてそれはあの人も同じです」
「お父さんもですか?」
「はい、私が身ごもった途端狙われ始めました。恐らくその時を狙っていたのでしょうね私を庇ってあの人まで…」
「密猟とかその手の類…でも貴方達は強いそんな事ができる人間なんて」
「あれは人間と呼べるのでしょうか?少なくともあの武器は人の手には余るものでした眼の前に来るまで全く感知できませんでしたから」
銃の様な武器だろうか
「どんな形の武器か見ましたか?」
「いいえ」
「ヨゾお願いがあるんだけどマザを連れて少しだけ席を外してほしい」
ヨゾは何かを言いかけたが
「判ったよ」
寝ているマザを連れて出ていった、ごめんねここから先は人には聞かせられない話なんだ
「この子達はどうするのです?」
「貴方から魔力をいただいた後は自力で生きて行ってもらわないといけませんね、それもまた運命です」
「お言葉ですがそれは…」
「判っておりますこれが私たちの我儘だと…ですが可能性があるのならば少しであってもそこに掛けるのも親なのです」
「あの…私の中にはこの身体の本当の持ち主の子供がいます」
「はい、主人から聞いております」
聞いているって、念話的な?
「私は気がついたときには理由も判らないままこの子の身体を借りていました」
「そうなのですね」
「はい、だからいつ消えてしまうのかも判りません」
「それは…」
「親とは言えませんが俺が消えてもこの子レテウスには幸せであってほしいと願ってます」
「何の話をして」
「そして俺の中にいるレテウスもあなた達の子供たちに生きてほしいと思ってる、あなた達亡き後この子達を私たちに育てさせていただけませんか」
彼女が沈黙しているとお父さんがやってきた
「今でも四苦八苦しているお前の魔力量では育てられんぞ」
流石だね結構しんどいのを見抜かれてる
「たとえそうでも可能性は有ります。どうしますか?あなた達が決めて下さい」
お互いに念話で話しているのか言葉は発しない
「おれはお前に良い父親になると言ったよな」
「はい」
「これでは絶対になってもらわなければいけなくなったではないか」
「それでは」
「「子供たちを頼む(頼みます)」」
「必ず良い父親と兄妹になってみせます」
「名前、この子達の名前はなんと言いますか?」
「名前は無い、お前達で付けてやってくれ」
名前かどうせなら伝承に基づいた名前をつけてやりたいな
腕を見るとお腹いっぱいになったのか二頭とも眠っていた、ひっくり返してお腹を見る
真っ黒な体毛の男の子と真っ白な女の子だ
「男の子はクラウ、女の子はソラスでどうでしょう?」
「名前に何か意味はあるのか?」
「光の剣という伝説の剣から名付けました。クラウは剣、ソラスは光を意味します」
「名前なぞ邪魔でしか無いと思っておったが…これは良い地下の国の土産が出来た、感謝する」
「感謝いたします」
「ではこちらからもお前に贈り物を贈らせてくれ」
「え?」
「何お前たちが親と兄妹になってくれるのだ贈り物の一つも贈らねば子供らに叱られてしまう、それにお前にとっても子供たちにとっても役に立つものだ受け取れんとは言わせん」
二頭がジリジリと近づいてきたと思ったら輝き始め彼らの最後の力が流れ込んでくる
「クラウとソラスに愛していると」
「判りました」
「短い付き合いだったがお前と出会えてよかった」
「こちらこそ」
輝きが収まると同時に二頭から力が抜けその場に崩れ落ちた
まだ目も開かぬ赤子達が力いっぱい泣いた、まるで僕たちは大丈夫だと言っているかの様に
しばらくするとヨゾとマザが戻ってきた
「俺達さ去年弟が食いもんがなくて死んじゃってさ、それからどうせ何作ってもお前たちに持ってかれるんだって思ったら何もかも嫌んなっちゃって、だから今日もお前の邪魔してやろうって」
「そっか」
知らなかった、もっと軽い気持ちで子供らしい理由でサボってたと思っていた
レテウスに罪はない、気候のせいならエヴァン家の所為でもないかもしれない、原因が判らないと何も言えない
「狼に頼まれた時は怖かったけど、狼の赤ん坊見たら弟思い出しちゃって俺達の力で助けられるってでも出来なくて…」
そうだ妖狼たちは魔法が使えない二人に魔力が有ることを見抜いたからここへ連れてきたんだ、魔法が使える人に魔力が有るんじゃなくて、魔力が有っても知らなければ使えるわけがない、なんでこんな簡単なことに気づかなかったんだろう
魔力を見れるように念じてみれば二人の体から魔力が漏れ出している俺が気づいたことを国の偉いさんが気づかないわけはない、それに洗礼で適正を見定めてるんじゃないのか
兄上は俺にメモを渡したとき誰にも見せるなと言った、覚えたら燃やせとも…
可怪しい何も知らない俺がメモ一枚で覚えられたのに、これじゃあ優秀な人間を欲しくないと言っているようなものじゃないか
向こうの世界と状況が同じならこの国は南方の国と何百年どころか千年以上争い続けてる
すごく嫌な予感がする、俺の思い過ごしという場合だって有るのだからこそ様子見するしか無い
先ずは証拠を集めなくては…
「あのレテウス様」
改まった言い方で俺の名を呼ぶヨゾ
「今更だろお前でもなんでも好きに呼んでいい、俺達同じ氏族だろ」
「あ、ああ…レテウス、お前髪が」
「髪がどした?」
「前から白い部分有ったけど、その…増えてるよ」
「は?まじで!」
二人はシンクロして首を縦に振る、さすが兄弟だな
間違いなく妖狼から力をもらった影響だろうな他に要因がない
現時点で叔父上に怒られるのは確定しているんだが髪のことを聞かれると言い訳できない、そして100%この子達の事で揉めることも解ってる、叔父上を説得しても狼を村に入れるのだから村人とも揉める…超ハードモードだねぇ
だがレテウス君が望み俺が約束したからには何としてでも貫徹するしか無い
「朝になったら木を燃やして狼煙にするから朝までは寝よ」
「見張りはどうする?」
「要らない、もう疲れたから魔法で閉じちゃおう」
土魔法で空気が通る程度に壁を作る
「「すげぇ!」」
火魔法で持ってきたカイロを再加熱、ついでに壁も炙っておく
「「すげぇ!!」」
ヨゾとマザから一枚ずつ服を剥ぎ取って狼の子供たちを包む
「「ひでぇ!!!」」
「じゃあおやすみ」
しばらくは興奮して眠れないのか俺の魔法がどうのこうの言っていたから
「魔法のことチクったら殺す」
静かになった、なんか魔王って聴こえたのは気の所為ということにしておこうレテウス君は魔王とは程遠いからな
「レテウス朝だよ」
「んあ」
ひどく長い夜が明けた
結局二回起きて魔力の授乳をしたから眠くて敵わない、これ魔力を溜められる哺乳瓶でも作んないと死ぬな
適当な生木を見つけて火魔法で焼いて狼煙にして救援が来るのを待つ
キュー、キュー!
はい授乳(魔力)
魔力を回復しては授乳で搾り取られる俺の顔色が酷いのかヨゾマザ兄弟にまで心配される始末だ
朝に狼煙を上げ始めたが太陽が昇り切っても救援は来ない、そりゃそうだ救助ヘリが在るわけでもなし狼煙を見つけてもそこから何時間かかるかわからない、最悪見つけてもらえなければ明日になる
出来れば無駄な魔力消費は控えたいが長期戦になるのなら食料確保に魔法を使わざるを得ないし…
そしてこの身体はすぐに眠くなる
ヨゾとマザは何歳だろう見た感じからして三歳のレテウス君よりは歳上なのは確かだけどまだまだ子供なのも確か
「ねえ、弟って何歳で亡くなったの?」
「二歳、いや二歳になる前に死んだ」
生きてればレテウス君と同じくらいか、自分の弟は餓死したのに本家の子供がぬくぬくと幸せそうにしてたら気に食わない気持ちはわからんでもない
「あのさ、レテウスってすげぇな俺達よりちっちぇえのに魔法は使えるし話し方は大人みてぇでかっけぇし冷静で頭もいいし」
なんだ褒め殺しか?
「俺達も父ちゃんや母ちゃんや村の人の役に立ちてえ、どうやったらそんなふうになれるんだ?」
これは特殊な状況だから成れないんだが、頑張りたいと思ってる人間のやる気も削ぎたくない
「う~ん、僕は家庭教師が付いてたから」
嘘です。中身ただの大学生です
「家庭教師?ってなんだ」
「おうちで勉強教えてくれる人のこと」
「そんな人この村に居ねえよ…」
目に見えてがっかりしているけど、ここまでは想定済み
「僕が教わったことなら教えてあげられるよ」
「本当か!なら俺達に」
「たーだーしー」
「なんだ?金とんのかよ金なんて無いぞ、うち税だって鶏で払ってるんだぞ」
「お金なんて取らないよ、その代わり約束を守ってもらうよ」
「約束?」
ヨゾの脇腹をマザが肘で突付く
「ヨゾにぃ、相手魔王だよ…とんでもない約束させられるかも」
マザ君…小声のつもりだろうけどちゃんと聴こえてるからね
「農作業をサボらないこと」
「は?そんだけ?簡単じゃん」
「その簡単な事から逃げまくってたのは誰だっけ」
「うっ…わかったよ、わかったけどちょっとだけ待って」
なんか兄弟で相談してるけど素直なヨゾとひねくれたマザって感じだな
「そんなに信じられないならお望み通り約束を足してあげてもいいけど」
「いいです!このままがいいです!」
凄い慌ててる…全く人を何だと思ってるんだか
キュー キュー
はい授乳でちゅね~
おーい、誰か居るのかー
「レテウス!」
聴こえたのは俺だけじゃないみたいだ、良かった
おーい!こっち!こっちだよー
三人で大声を張り上げて呼ぶ
大人の姿が見えた時は三人で抱き合った
「心配かけさせやがって」
「このバカ息子どもが!」
「次やったら助けてやらんからな!」
大人たちは怒っていたけどその顔には安堵が見てとれる
「デイヴィッドこっちだ」
叔父上も来た…レテウス君が緊張しているのが判る
「レテウスこっちにおいで」
「はい」
クラウとソラスを離し叔父上の元へ行く
大きく振りかぶった手が頬を叩いた
一回、二回、三回
涙が溢れて止まらない
「おい、デイヴィッドやりすぎだ」
安堵に包まれていたはずの場が凍りつく
ズボンを下げられて今度は尻を叩かれる
「もう止めてやれって、レテウスはこいつらを助けようとしたんだ」
眼の前のヨゾとマザはガクガクと震え自分たちがされているわけでもないのに泣いてしまっていた
すっげえ痛えけど俺は耐えられる、それでも泣いてしまうのは痛みの感覚がないはずのレテウス君の感情が溢れているからだろう
「家に帰ったら説明しろ」
ズボンを戻した俺は叔父上の眼をしっかりと見る、レテウス君我慢してね
「いいえ、叔父上今聞いてもらいたい事があります」
口の中が切れてしまったのだろう喋るたびに染みる
「なんだ」
そう言って手を振り上げる叔父上を見てレテウス君の気持ちがぎゅっと萎縮するのを感じる、三歳児には酷かもしれないけど自分で決めた事だろうが流されてやった事だろうが行いには責任を伴う
「僕はフェイル・クー・シーの番からこの子達を託されました」
叔父上の眼が見開かれる
男衆の中からざわめきが広がる
「ヨゾ、マザこの話は本当か?」
睨まれた二人だが
「本当です!妖狼様達は人語が喋れるんです。俺達は外からレテウスが託されるのを見てました」
そう言って洞穴を指さすと叔父上がモルトおじさんに目をやりおじさんが洞穴へと向かう
「そのあと妖狼様達が光ったと思ったら倒れちゃって」
覗いてたんだ…まあフォローしようとしてくれてるんだから怒らないけど
「デイヴィッド!」
モルトおじさんが走ってきて叔父上に耳打ちする、亡骸を見つけたのだろう
「そうか」
「どうする?」
「丁重に弔わねばなるまい、だが今は子供たちを家に帰すのが先だ、依ってこの件は先送りにする帰るぞ」
こうして俺とレテウス君の初めての冒険が終わったのだった
閲覧数は日に日に増えているのですがマイリスト登録は頂けていない状況でして、励みになりますのでマイリスト登録と★評価よろしくお願いします




