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『妖精の取り替え子』認定喰らって即寒村送り!弱小氏族次男坊の独立戦争記  作者: くろすーおーばー
第二章 グレンガルト・トゥア発展編

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51:レテウスの弱点

沢山の方に読んでいただきランキング入りを目指しています。

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コーン、コーン、斧の音が森にこだまする。


 いつも通りの曇り空の元、木こりたちは精を出していた。

「うぉぉい、この木はどうだ~」

「これはヤマナラシだからコルマックさんとこ行きですね~」


 村の木こり衆はこうやって若いブローガスの知識を試す。というのもブローガスは木を切る力は大したものだが、仲の悪いエヴァン家とカウトール家では交流が無いせいで木の名前がカウトールとは違っていて覚え直しが必須になったせいだ。


 建材に向いているもの、箱や編み物に向いたものなど、カウトールに居たころもやってはいたがグレンガルト・トゥアでは兎角細かいのだが、これは昔からではなくブローガスを始めとした入植組が来てからだと聞いてブローガスも驚いた。


 ナラ(オーク)は建材への使用を禁止して現在ラグナルの樽専用、資材を入れる箱作りと建材にはスコッツパイン(アカマツ)、小物にはナナカマドといった具合に厳命されていて木の役割がはっきりとしている。切る場所に関しても同じく細かく厳命されていて今日はレテウス様肝煎りの高炉とやらを立てる周辺の木を切っていた。


 休憩時間に高炉とやらを傾斜の上から覗いてみる。自分には分からない世界だが間近に立って作業を見守るレテウス様を見ればこれが相当重要なものなのだということはブローガスにも判った


 ——————


 基礎の出来上がった土台上に煉瓦を敷き詰め、その上から耐火煉瓦を更に慎重に敷き詰めていく。

 

 炉の中でも高温且つ溶融した銑鉄を受ける重要な部分である炉床が完成した。


 ここから先も油断は禁物だが一番デリケートな部分が終わったことで一安心できた。


 外では木炭の精製のために炭焼小屋も稼働しているが問題がないわけではない。

 家庭用の燃料には引き続きピート(泥炭)を使うが鉄を作るとなれば大量の木炭が必要になる、どこかでスイッチしないと待っている問題は将来的にスコットランドと同じになる。


 妖精たちもいつまでも待ってはくれないだろう。しかし今は譲れない、解決策は模索するがこのまま行く。


 そしていま目の前で別の問題が起きている。


「凄い重いです…」


「そうそう、岩の下に鋼鉄の爪を入れて、自分の身体に重りがくっ付いてる感じで」


 ハミッシュの眼の前には、自分の身長ほどの大きな岩。彼は岩に手をかざし歯を食いしばって居るが岩はカタカタと音を立てるだけで一向に持ち上がる様子は見えない。


 今指導しているのは難民の中で一番重体だったハミッシュ、体力が回復した彼に魔法を教えているのだが上手く行かない


 ハミッシュに教える気になったのには自分と同等かそれ以上の魔力量、量は申し分ない…のだが魔法の発動に至らない


 サンヴィル先生に魔法を教えたときはすんなりと教えられた所為で勘違いしたのだ


 先生に教えた風魔法は自然であり強い風も弱い風も想像がしやすい。

 そよ風から、季節を知る風に、暴風までどれも生きていれば感じるものでしか無い。


 だがハミッシュが教えてほしいしと願ったのはブロッチ建設で俺が使った岩を運ぶ魔法、大人でも辛く危険な仕事を魔法でこなせれば子供でも大人以上の働き手になる、ヨゾたちには教えなかった魔法だが王女の死まで三年を切った今となっては贅沢を言っている余裕もなかったのだ。


 面白いことにこの世界の魔法は、太陽・空・海・大地が大きな属性でその中から選び要素を抜き出して使うものだが、癒しの魔法は全ての属性を選択し大量の魔力を用いないと使えない


 おそらくだが癒しは全ての要素が必要なのだろう。これを応用して全てのカテゴリーを含めてイメージすれば自分自身をフォークリフトに出来る…正確には違うな、フォークリフトの力だけを利用できる。


 そう、この世界にないものでも力を借りることができるのだ。


 要は想像できて魔力さえ足りれば核弾頭ですら理論上では出来てしまう気がする。もっともこの世界にあるものとは桁違いに魔力量を多く使用するためイメージできたとて不可能なものも多いだろう。


 現代を生きた俺は重いものを運ぶ様々な物を知っている。フォークリフト・爪付き油圧ジャッキから門型クレーンまで、イメージが出来てしまう。


 だがハミッシュは見たこともなければ想像することも出来ないのだから難しい。例えばだ、フォークリフトならカウンターウェイトという重りが付いている。小さく見えても軽自動車よりも遥かに重いのだ。


 そしてそれを自分とは別の物だと切り離してイメージできるが、ハミッシュは自分の体自体に重りが付いていると想像してしまう。そうすると自分も重くなって今度は動けなくなってしまい重いものを持ったまま動くという同時コントロールができない。


 高炉の建設はヨゾとゴブじいさんをメインに据え、補佐をしながらハミッシュの魔法を鍛えているのだが…


 ドスンッ

 

 また失敗、岩が地面に落ちて驚いたみんなの目が一斉にこちらを向く。

 なんだろう…なにかが間違っている、ハミッシュの苦しげな顔がそう告げる。


 イメージが違うのだ


 フォークを見たことのなければフォークの爪もカウンターウェイトも見た事のない子供にイメージさせること自体が間違っているんだ。考えてみれば、何故俺はこの子にフォークリフトの仕組みで教えているのか?


 ——俺がそれを楽だと思ったからだが…

 

 それがこの子にも楽だと言う保証なんて無いじゃないか、こんな簡単なことに今更気づくなんて馬鹿だ、 


 ハミッシュが落とした岩を魔法で拾い上げ外壁になるブロッチへと積み上げる。


 ハミッシュが悪いのではなく、これは教え方の問題だ。どうすれば上手く伝えられるのか…


「レテウス様、何故爪なのですか?」

「それは…」

 痛い所を突かれる


「紐で結んで持ち上げるイメージではいけないのですか?」

「それでも良いんだけど、しんどくない?」


 ハミッシュは何故?と首を傾げる。


「よし、ハミッシュ。それじゃあ自分の思うイメージで試しにやってみようか」

本人が楽だと思うものから始めて、工夫してみることに気持ちを切り替える。


 悲しいかな自分が教えたやり方よりも軽々と岩が持ち上がるではないか…自分の常識がボロボロと崩れ落ちる。

「ハミッシュ、今は何を選択してる?」

「空を使って浮かぶイメージです。」


ハミッシュの魔法は俺が全ての属性を選ぶよりも空だけを選んだハミッシュの方が魔力の効率がいいじゃないか…


「その方法でいい。そこからどうすれば強く楽に扱えるようになるのかを一緒に考えて行こう。」

「はい!」


 現代の知識が役に立たなかったのは事実だが知識や技術が悪いんじゃない、俺が使えるのは俺の居た世界が人に合わせて柔軟な機械を生み出してくれていた積み重ねのお陰だと思い知らされた


 だが同時に魔法にはこうでなければいけないという縛りもない自由なものだとも気づけた。

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