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『妖精の取り替え子』認定喰らって即寒村送り!弱小氏族次男坊の独立戦争記  作者: くろすーおーばー
第二章 グレンガルト・トゥア発展編

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50:高炉計画始動

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季節はあっという間に春を過ぎ村に来てから三度目の夏、レテウスは六歳を迎えていた。


 高台に新たに造った倉庫の中には大中小の三つの影


「ヨゾ、フォーク、いい?始めるよ」

「問題有りません。始めましょう」

「あぁ、レテウス様の歴史がここから始まるのですね。お任せください!このフォーク、レテウス様の一挙一動全てを記憶して御覧にみせましょう」


 一人なんでか知らんけど感動に打ちひしがれているけど

「僕の一挙一動はいいからしっかり在庫を照合してね」

 釘を差しておく。


 まあ、これから始まる一大事業という意味ではあながちフォークが言っていることも間違いではないか


 今日は二度目の在庫の照合、簡単に言えば棚卸しといったところ

 ヨゾが計算し、フォークが一度目の在庫と現在の在庫が一致するかを確認させる、反復させることで作業内容と何のために行うのか理解を深めてもらうことが目的


 資材の必要量に関しては『にいにのせかい』で算出済み、もっとも…現代どころか中世の計りもないド田舎グレンガルト・トゥアだからしっかりとした重量は分からないんだけどね。


「まず煉瓦から、耐火と普通が有るから間違えないように」

了解です(グ・ジェルヴ)


 煉瓦は数えやすいものだが寸法と個数に合わせて箱を作って管理、二人一組で移動させることを前提にしたので一箱に16枚で40kg程度入る計算だ。

 木工職人のコルマックが居るお陰で木箱の量産も問題なかった。やっぱベテランだけ有って弟子たちに教えるのも上手く、木箱は量産しても寸法が大きくずれるものはない


「耐火煉瓦は1000枚の予定だったけど」

「ここに有るのは65箱で予備も含めて1040枚ほどですね」


「フォーク、在庫に変動がないかしっかり確認してね」

「はい、我が君」

 なんか呼び方が仰々しくなってきてるんだけど、これ注意した方がいいのかな?でも無駄な気もするんだよな…


「え~と、普通の煉瓦は外に有るので全部?」

「ゴブ爺さんが言うにはそうですね。」

「ヨゾ、耐火煉瓦は内で普通煉瓦は外で統一、これはみんなに守らせてね」

了解(グ・ジェルヴ)


「普通の煉瓦は枚数多いから後にして、他の在庫確認しよっか、次は木炭」

「木炭。木炭は左奥の木箱ですね」

 絶対に混同しないようにとも言ってあるが…それでも起きるのがヒューマンエラー、同じ規格の箱なら尚更だ、今のところは●や▲といった目印が付けるようにしたけど、余裕ができたら箱そのものを色で分けたいところ。


「木炭は~」

 こうしてみるとヨゾも当たり前に計算できるようになったもんだ、手際良く箱を数え

「44箱ですね。石灰が6箱で加工前の牡蠣殻は樽で6です。」


 テキパキと倉庫内に有る他の資材も数え終え、残るは屋外にある通常の煉瓦と専用の風通しの良い箱に入れて乾燥させている沼鉄鉱を数えて終わりだ


 最終的に

 耐火煉瓦、六十五箱

 普通煉瓦、二百十四箱

 沼鉄鉱、二十七箱

 木炭、四十四箱

 石灰石、六箱と牡蠣殻、六樽

 耐火粘土、十三箱

 砂、十箱


「……これで全部です」

「これが一体何なのかは判りませぬが、しっかりと記憶しました。お聞き頂ければすぐにでもお答えできます。」


「フォーク、これで終わりじゃないんだ、ここから使った分を記憶してもらって残りがどれくらい残っているのか、それを覚えておくのが君の本当のお仕事、責任重大だからね」

「なんと!そんな重責をわたくしめに下さるとは!」

 責任重大だって言ってるのにプレッシャーとかないのかな…


 なんにせよ冬の間に村のみんなで集め、造った資材で有り財産だ、大切に使わせてもらおう


 レテウスが資材置き場である倉庫から背を向け振り返ると開けた視界が飛び込んでくる


 ここは村を基準とすると少々高い位置に有る、縁に立ちしたを覗き込めば川も見える


 目指すは高炉の建造


 ——なのだが、今までの村の炉の限界は鉄を叩いて()()出来る鍛造まで、炉が壊れても良いのなら鉄を溶かす()()も出来るかもしれないが、既に一度痛い目に遭っている…


 だから俺は1500度以上を安定して継続し使い捨てでは無い炉を高炉と定義した。現代の高炉とこのグレンガルト・トゥアでは定義が違う、もしかしたらこの世界にもちゃんとした定義があるのかもしれないが、少なくともわざわざこの開拓村を訪れ、それを指摘する者も居ないだろう


 要するに村のみんなにも判るように便宜上勝手に分けただけ


 そして高炉を作るのなら作るだけでは駄目、運用のしやすさも重要だと大学の資料で確認済み、立地としては水車を動力として利用しフイゴの自動化ができるように川が流れていて、山などの斜面を利用し高炉を下に配置すれば上からの資材の投入が楽になる。


 そんな場所を探したのだが…面白い場所を見つけた


 ブロッチと呼ばれるスコットランドなどで見られる円形塔の跡地が条件を満たしていたのだ


 ブロッチ自体は既に崩れていたが自分がスコットランドで見たものより遥かに大きい、一体何のためのブロッチだったのだろう?

 

 以前は見張所や防衛拠点と思われたブロッチだが近年の研究では領主の権力を見せつけるステータスシンボルだった、別荘だった、要塞型住居だったなど様々な見解が上がっていたことを考えると見張所ではなかったのではないかと思う。だって後ろは山でブロッチがなくとも周囲を見渡せるから…


(ねえねえ、囲んじゃえば見えない?)

 ん?どういう事?


(にいには高炉?周りから見えない方がいいんでしょ。人がたくさん住めるくらい大きいのならブロッチ作り直して中に入れちゃえばいいんじゃないかなって)


 う~ん、想像してみると煙の問題は有るが確かに剥き出しよりは良い、今ある資材を使えばもっと強固なものも造れるだろう…ただし、高炉作り用の資源が減るし人手も掛かる、どうしたものか


 それにこんな見渡しの良い高い場所にブロッチを建ててグレンガルト・トゥアの人間はアホだと思われないかも心配…


 待てよ…アホだバカだと思われていた方が都合が良くないだろうか?こそこそと見えない所に作るとローデル家に目をつけられかねないし、ここはいっそのことちゃんと許可を取って…

(やっぱり駄目?)

 

 違う違う、カモフラージュという意味では良い案だと思う。今は先々のことを考えてるだけだから

(先々のこと?)


 うん、今は人手かな、それとローデル家に怒られない様にちゃんと許可を取ろうかなって

(ごめんねにいに、僕そんなに大変になるなんて思ってなくて)

 いや、レテウス君はそれでいい、今まで通り思いついたら教えてほしい

(いいの?にいに大変じゃないの?)


 大変なことの責任を取るのが父上や叔父上の様な長の仕事、いずれはレテウス君もそういう時がやって来ると思うけど、今はその時のためのお勉強の時間だからどんどん考えてほしい。それまでは俺が頑張るからさ。


 出来るか出来ないか、やって見なくちゃ分からない…と言うのは簡単だ、だけどその先の事まで見通せなければ長としての資質は問われることになるのは当たり前だと俺は思ってる。責任を取ると言ったところで結局苦しむのは民だからだ


 こうして俺()は建設地を決め、叔父上には高炉造りを約束通り新たな鍛冶屋建設計画とを報告した


…嘘は言ってない。高炉は鍛冶屋の炉だからな。


 叔父上は説明役としてフォークを伴って本家の父上に報告、領内のことは基本父上がお決めになるが防衛拠点とみなされかねないブロッチの建設ということで今年二度目のローデル家に行き説明


 簡単に決められると思っていた俺とレテウス君は夏まで待つこととなり、これだけの根回しが必要なのだと思い知らされたのだった


 だが悪いことばかりじゃない、その間にカウトールからやってきた難民たちもラグナルやコルマック達の働きに拠って順調に村へと入植し働き手も増えた。純粋な働き手として大人が五名、手伝いをする子供たちが五名、牡蠣を使った土壌改良も進んでいる。


 夏収穫の豆類の結果も好調、燕麦の成長も明らかに昨年よりも勢いがある


 現時点で一番心配しているのは牡蠣の養殖、クレェターの人選が悪いわけじゃない、彼なりに努力もしているし、どの場所に牡蠣殻を撒けば牡蠣の稚貝の定着が良いのかも研究している


 先日牡蠣の放卵と放精が始まり海が白く濁ったとの報告を受け村人総出で牡蠣殻を撒きにも行った…


 だがここから先は牡蠣の赤ちゃん次第…自然に委ねるしかない、結果が解るのは三週間から一ヶ月後の予定だ

(あ~!にいに牡蠣の事かんがえてる。また「どうせ一ヶ月後には判るか…」でおちつくんだからむだなの!今は高炉なの!)


 そうなのだ、牡蠣のことばかり気になって、こうやってレテウス君に怒られるのがデフォになりつつある


 ごめんごめん、そうだね集中しないとね


 許可を待っている内に土地の計測といった下準備は済ませてある


「早く許可が降りないかな~」

(ね~)


 二人で完成予想図を共有しニヤついた


 本家から許可を伝える使者がやってきたのはその三日後だった

※ブロッチ(ブロッホ):現代でもグレートブリテン及び周辺の諸島に残る遺構・遺跡です。表記はブロッホでもいいかなと思いましたがロッホ=湖や入江なのでブロッチに落ち着きました


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