49:嫡男襲来
【ブクマ】【評価ポイント★】【リアクション】を是非ポチッとワンクリックよろしくお願いします(人´∀`o)
(にいに、僕この人嫌い)
うん、判る判るよ…でもほらソーサが悲しいお顔してるからここはお兄ちゃんとして頑張ろう、ね!
ソーサが家の影から悲しそうこっちを見ているのはソラスとクラウに念のため森に隠れてもらってる所為で会えないからだ
そのうえ俺がおもちゃにされているのも気に食わないみたいだ、現に
グリグリと頭を撫で…ちょっとは加減しろよ!痛えよ!
「ケファー様、相手は小さな子供です。加減してください」
俺に向かって申し訳なさそうな顔を向けるアンガス兄上
なんでこうなるかな、というか視察が入ると父上から聞いていたけど、この嫡男ケファー様はアンガス兄上と同い年の十五のはずなのにこうも違うの?ローデル家での兄上の苦労が忍ばれる…
「良し!次はあれだ!あれはなんなのだ説明せよ。」
勝手に指を指したかと思うとズカズカと先に行ってしまう。ただの粉挽き所なんだけどなんでそんなにテンションが高いのか…そしてその横には番犬?なのだろうか、大きな犬…仔牛ほどの大きさのワンコが付いていく。犬種的にはスコティッシュ・ディアハウンドそのものでラフコートで灰色がかった毛並みが光の当たり方に拠っては暗い緑に鈍く光っている様にも見える
あれって多分妖精だよね…大型犬といっても大きすぎるし、妖精犬じゃないかと思うがうちのクラウとソラスよりも大きいし、なんだか雰囲気も違う
(にいに!兄上とお手々繋ぎたい)
了解!なにせ約三年振りの兄上との再会なのだ、俺としてもレテウス君にも兄上にも楽しく過ごしてもらいたい、兄上の手をそっと掴めばしっかりと握り返してくれた
(やったぁ!ふんふふ~ん♪)
よほど三歳の誕生日で良くしてもらったんだな、レテウス君のご機嫌が一瞬で戻る
兄上が小声で話しかけてきた
「レテウス、普段はケファー様も中々外に出られぬ身、楽しくて堪らぬだけなんだ。あと二日で帰るからもうちょっとだけ我慢してやってくれ。」
そうなのだ、父上の訪問によりローデル家は我が領に視察を決めた、確かに急に牡蠣養殖を始めたいなどと言えばエヴァン家に怪しい動きがないか気になるのも判る。そしてケファー様と兄上がエヴァン家に来たのだが、視察期間中ほぼ本家であるロガーディアで過ごしたらしい。
まあこんな開拓村に怪しい奴が居るとは思わないもんな、ほぼほぼ空振りになりかけた視察、ダメ元で兄上がこのグレンガルト・トゥアへも行ってみようと言うことになったらしい…というか兄上がレテウス君に逢いたかっただけなのでは?と思わなくもない
あと二日の我慢…レテウス君はどうしたい?何が一番嫌?
(べたべた触られるのと力強くて痛いの嫌、他は我慢できる…)
そりゃそうだよね…
「兄上、痛いのが嫌なのです。兄上守ってくれる?」
こう言っておけば兄上ならば放っておかないでくれるだろう
「判った。それならこうしようか」
しゃがみ込んだ兄上、これはもしかして
(にいに?これはどうするの)
「兄上良いの?」
振り向いて微笑む兄上を見て肩を跨ぐ、肩車だ
(わ、わわ)
高さで言えば馬の方が高いのだけど、兄上の肩車が嬉しいのだ俺も年甲斐もなく嬉しい、中身的には二十歳超え、普通に生きていればもう肩車なんて出来ない歳なものだから童心に帰ってしまったのだ。
「兄上、ケファー様のお付きの犬…様?って特別?」
「良く判ったな。あれはクー・シー様といってローデル家と絆を結んだ精霊様だ。大氏族と呼ばれる家にはそれぞれ精霊様がいらっしゃることが大いお前を覚えておくと良い」
「でも兄上、クー・シーは種族名では?お名前は?」
それを聞いた兄上が苦笑いを浮かべ小声で教えてくれる
「ケファー様には絶対にそんな事聞くんじゃないぞ。個別の名前は妖精や精霊様に認めてもらわねば名付けたとて無視されるだけなんだ」
「そっかケファー様はまだ認めてもらえてないんだね」
「しーっ!」
クラウとソラスは普通に名付けたのだけど…そう言えば目は相手無くとも聞こえていたと言ってたっけ二人は最初から受け入れてくれたってこと?
ぱっと顔を前に向ければクー・シー様がこちらを見ている。大氏族の妖精様、無礼に当たらない様ちゃんと挨拶をしておこう、肩車されたままだがペコリと頭を下げれば軽く会釈?を返してくれた
見た目より優しい性格なのかもしれない
「おい、そこのチビ早くこっちに来て教えろ」
飼い主と違ってね…
「は~い、今行きます。兄上」
「よし、行こう」
その後もレテウス君はケファー様が絡まない限りは上機嫌、クー・シー様も吠えたり威嚇することもなく無事に終わるかと思われたのだが…
「おい!あそこから出てる煙はなんだ?」
あ~…
「あれは我が村の鍛冶屋でございます。」
「にしては煙が多くないか?さては何か隠しているのではないだろうな」
ちっ…湯けむりに気づいたか、流石は大氏族の倅、簡単には騙されてくれないか出来ればブラックハウス窯は見せたくなかったんだけど
「おい!行くぞ」
言うことを聞いてくれる筈もなく鍛冶屋へ向かうケファー様
まあいいけどさ…もうフェアル・ジャラグは春になって『常若の国』に帰ってるし窯の秘密もバレることはないし
「なんだこれは!」
ブラックハウス窯ではなくケファー様が目を奪われたのは湯船、兄上もびっくりしてる
「え~っと、それは領民が入る風呂にございます。窯で出た熱を無駄にせぬ様に考えられておりまして」
「なんで村人ごときが風呂になんぞ入るのだ。子氏族のくせにずるいぞ」
ずるいってなんだ、ずるいって!村のみんなと一生懸命作り上げたんだぞガキンチョめ!…ふぅーーー、落ち着け俺、ムカつくけどこの時代ならこんなものと言い聞かせる
(やっぱりこのひと…)
レテウス君も抑えて抑えて!
「ではどうされますか?入っていかれますか」
(こんな奴入れなくていいのに!)
みんなで作り上げたお風呂を馬鹿にされたままでいいの?
(ん……それは…いや…、兄上には入ってほしいけど…)
徹底的に嫌われてんなケファー様
「レテウスよ、これは我らも入ってよいのか?」
「はい勿論です。これを使うようになってから、みな風邪を引かなくなりました、兄上にも元気でいてほしいです。」
「そこは主らの長であるローデル家の我だろう!」
知るか
「私はもてなしに感謝して入りますが、ケファー様はそこでお待ちになるということで」
「入らんとは言ってないぞ」
兄上、ケファー様の扱いに慣れてるな
こうして二人が煉瓦風呂に入ることとなり、風呂番よろしく二人の体を洗う役を承った。
「これは石鹸か?それにしては臭いな」
黙れ金持ち…いや牛持ちと言った方が…どうでもいいか
「ケファー様、開拓村では上出来ですよ」
「そんなものか」
「そんなもんです」
これ兄上居なかったらキレてそう
「終わりました。湯船にどうぞ」
「ありがとうレテウス」
(にいに!兄上がありがとうって)
そうだね頑張った甲斐があるね。兄上からは感謝の言葉が出たが、ケファー様には当たり前なのだろう労いの言葉はない
そんなもの、身分社会ではそんなもの、そんなもの、そんなもの…生殺与奪を堂々と行使できるお立場なんだからこれはぬるい方ぬるい方
「ふぁぁ~、気持ちがいいな」
(兄上気持ちいいって)
湯船を楽しむ兄上、やはり叔父上がちょっと神経質なだけでお風呂は別に変じゃないのではなかろうか?
「ケファー様はいかがですか?」
「………少し熱くないか…」
「レテウスこれは少しぬるく出来る物なのか?」
「出来ますよ兄上」
「ケファー様には熱かったようだ。では少し温度を」
「大丈夫だ。これくらいどうということはない」
「そうですか?下げられますよ」
「問題ないと言っている」
「ケファー様、無理をなされなくても」
「してなどいない!」
いや、めっちゃ赤い…ゆでダコ一歩手前じゃん。
「ケファー様?」
「……平気だ」
「あのお顔が…」
「………」
全然平気じゃないし責任問題になっても困るんですけど…俺は樋を切り替えて川の水を少しづつ湯船に引き込んだ
まったく我慢比べは自分ちでやってくれよ。
クー・シー様が吠えたり慌ててないから大丈夫なんだろうけど、呆れてるようにも見えた…気のせいだよね。
結局のぼせたケファー様を兄上と二人で引っ張り上げて身体を冷やす。ほんとめんどくさい人だ
「これは、気持ちが良いな…」
お湯なのか冷ましているのがなのかどっちが気持ちいいのかわからんが、有ってほしくないけど次回が有るのならぬるめにしよう
(もっと熱くても)
やめなさい。これ以上は死んじゃうから
(は~い)
もうほんとにこの人、帰って欲しいんですけど…
結局視察は一日増え、合計三日になった
「視察が足りませんでしたか?」
「そうだ」
そんな事言いやがったくせに、禄に視察もせずに湯船の眼の前に有るブラックハウス窯に気づくこともなくケファー様は残りの二日も銭湯を楽しんで帰っていった。勿論湯船はぬるめにした
これ視察の意味有ったんだろうか?
挙句、村のみんなからはケファー様の所為で風呂に入れなかった事を愚痴られた…
俺の所為じぇねえし
【ブクマ】【評価ポイント★】【リアクション】を是非ポチッとワンクリックよろしくお願いします(人´∀`o)




