表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『妖精の取り替え子』認定喰らって即寒村送り!弱小氏族次男坊の独立戦争記  作者: くろすーおーばー
第二章 グレンガルト・トゥア発展編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/59

47:軽くて重い

本日は6000PV到達、総合評価100P超、ブクマ15超え記念投稿


※こちらは本日投稿『二話目』です。

まだ読んでない方は前話『倒木からの芽吹き』からお楽しみください


沢山の方に読んでいただきランキング入りを目指しています。

【ブクマ】【評価ポイント★】【リアクション】を是非ポチッとワンクリックよろしくお願いします(人´∀`o)

「こんにちは」

「………こんにちは」


 久しぶりの息子(レテウス)との再会はこうして始まった


 じっと見つめてくる息子に何と言って話し始めるべきか…

「人が来るのがそんなに珍しいか?」

 違う…そんな話がしたいのではない


「はい!行商人もあまり来ない土地なので…でも来て下さって嬉しいです!」

 そう言って笑う屈託のない笑顔につい抱きしめてやりたくなる…だが父親だとも気づいていない息子を抱きしめたりでもすればただの変なやつだ、どうにかして父であると伝えねばならぬ


 ただ名乗れば良い、それだけなのだがサーロンには出来なかった


 ただ里子に出したのならば出来たのかもしれない、だがこの子を守るためとはいえ本家ロガーディアからこの地に追いやったのは己自身


 黒髪に交じる一房の銀髪が間違いなく自らの手で追い出した息子(レテウス)だと告げてくる


「どうかされましたか?」

 開拓村には場違いなほど丁寧で子供らしくない言葉づかいが心を抉る


「いや、なんでもない」

 言葉ではそう言うものの、目は白髪を捉えて離せない


「気のせいかもしれないのですが、どこかでお会いしていませんか?」

 かすかに記憶にあるのだという安堵と父という認識はもう無いのだという失望が交じる


 これ以上耐えられない、もう言ってしまおう。言ってしまいさえすればこの状況から脱せられるのだ


「私はお前の…」

「おお!兄貴随分早かったな!」

デイヴィッドの声が私の声を遮った


「兄貴?…えっと、叔父上の?それって…」

 息子の笑顔が困惑に変わる


「あ…」

 デイヴィッドからはレテウスの姿が見えていなかったのであろう

 気づいたデイヴィッドの顔までもが引き攣り固まった


「そうだレテウス、私はお前の父サーロン・ドゥ・エヴァン」

 起きてしまったことは仕方がない開き直って息子の頭を撫でようと手を伸ばす


 ビクッ


 伸びた手に硬直するレテウスを見て伸ばす手を引っ込めた…そうか、そうだよな今更父親づらなど


「ち、違うのです!父上!父上なのに思い出せなくて…ごめんなさい…」


 思い出せないのはお前のせいではない、私がそうさせてしまったのだ


「お前は悪くない」

 今度こそためらいなく手を伸ばし息子を抱き上げる


 軽くて…重かった


「大きくなったな……息子よ」


 落ち着いてくれた息子を馬に乗せ常歩(なみあし)で村を行く


「兄貴…その、悪かったな」

 あとから付いてきたデイヴィッドが馬を近づけ呟いたが、何もかも元を正せば自分に跳ね返ってくる

「気にするな」


「あの…父上、見てもらいたいものが有るのです」

「そうか…では、そこへ向かおう」


 ------


 匠の業が光る見事な樽が一つ


「これほどの腕前とは…」


 フォーガラフ(難民)の受け入れについては事前に聞いて厄介事が舞い込んだと思っていたが


『誰の得にもならぬ悪風など吹かない』とはよく言ったものだ


 聞けばカウトールの者たちだと言うではないか、何を持ってこの様な者たちを手放したのかは図りしれぬが我が領にとっての良風この上ない


 腰を痛めた事などこちらにとっては些細なことでしか無い、指導係にでもしてしまえば良いのだ


「…レテウス何をしている」

 息子に目をやれば何故か手を上げて精霊への誓いをしている


「兄貴、レテウスはなにか言いたい時に癖でこうするんだ、もう治らないから覚えてやってくれ」

 変わった癖だな


「申してみよ」

 本来ならば小さな子供を領地の運営に関わらせるべきではないとは思っていても息子が何を言うのか聞いてみたい親心が出てしまう


「父上ありがとうございます。では…ラグナル、お前はなにか勘違いしている様だが別に数など気にする必要なない、どうしても数にこだわりたいというのなら…そうだなこれから弟子を育て上げた数に拘ってみてはどうだ?」


 まさか自分が考えていたことを息子がズバリ言ってのけた…少々子供らしさがないことにもショックを受けたが…


 見事な人誑しっぷりに助言も出ない、だがここは当主として…


「よし。ではこの樽エヴァン家で買わせてもらおう」


「族長様が私の樽を?」

「違うエヴァン家が買うと言ったのだ」


 一端(いっぱし)の職人ならばこの言葉の意味がわかるはずだ


 彼の顔を見れば伝う一筋の涙、やる気になったようだな

 だが良い手土産が出来た、この先行くことになるローデル家は格好の売り込み先だ、となると…


「おい、職人樽に装飾を施せるか?」

「装飾でございますか?」


「そうだ」

 家紋は外せない

------


 湖に向かう道すがら


 こっくりこっくりと馬の上で船を漕ぐ息子


 自分から次は湖を見て欲しいと言っておいて


「眠ってしまった」

「緊張してたからな」

「あれで?」

 クスクスと笑う弟


「堂々としたものに見えたが…」

「違う、緊張していたのは兄貴が居たからだよ」


「俺が居たから?」

「そりゃそうだ、父親に初めて自分を見せる場面で緊張しない子なんか居ないだろう」


 そうか…初めてか


 落ちないように片手で抱き寄せる


 「いつもは、その…どうなんだ?」

 自分の息子だというのに、弟に聞いている…情けない


「大丈夫だ兄貴、この子は割と激情型だからな気に入らなかったり本当に拒絶するときは、う~んなんて言えば良いのか難しいな」


「マードックの叔父貴みたいな感じか?」

「叔父貴とも違うな、叔父貴は怒るだけ怒ってもあとはすっきりだが、レテウスの場合は死ぬまで許さん」


「氏族の鑑だな」

 冗談めかしていってみたが胸は晴れない。


「だから兄貴は大丈夫だ、本当に恨んでいるならこの子はそんな態度じゃ済まないさ、ただどう接していいかまだ判らないだけだろうよ。ほら湖が見えてきた、そろそろ起こしてやってくれ」


「…そうか」


 思い返せばアンガスもそうだった。


 ローデルの先代に勧められるままに結婚し、生まれたあの子をまともに接するまもなく里子という名の人質としてローデル家に取り上げられた。


 自分自身もローデル家に里子に出された俺には血の繋がった親子というものが判らない


 俺に読み書きを教えてくれたローデル家


 そのお陰で現当主であるドナルドとの絆も出来た、妻イザべレノアとも出逢えた


 その代わりに失ったアンガス、妻も病で亡くなった


 俺は氏族長だ…氏族長としてすべき選択を選んできたつもりだった


 だが、今この手に伝わる温もりを感じていると判らなくなるのだ


「レテウス、起きなさい」


 小さくて軽い身体、軽く肩を揺すったつもりでも大きく揺れてしまう身体


「…ふぁ~い」

 大きく伸びをして目をこする息子、何をしていても言葉にできないものが込み上げてくるのを抑えきることは出来なかった


------


「養殖…とはなんだ?」


 先程までの幼い態度は消え、今度は知らない事を当たり前に話し始めるレテウス


「ん~、簡単に言うと作物の様に海のものを育てると言いましょうか」


 知らないどころか常識外れの言葉だった。

 養殖という言葉は知らなかったが、そういった類のことをしようとして森を枯らし漁場を死に追いやった話ならいくらでも転がっている。


「それは自然や精霊に対する冒涜ではないのか?」

 それを聞いて不思議そうな顔をするレテウス、これは判っていない顔だ


「レテウス…それはやってはいけないことなのだ」

「兄貴、それは」

 止めに入った弟を制し

「デイヴィッドは黙っておれ、今は大切な話をしている」


「よいか?自然は人の手には余るものなのだ、人ごときの矮小な存在がそれを好き勝手出来るなどとは思ってはいかんのだ一度失った海や大地の恵みは返ってこないのだ」


 幾度となく土地を豊かにしようとして躓いた自分の経験を息子に伝える


 レテウスの顔も真剣なものに変わり真面目に聞いている、本当に賢い子だ


「父上のお話、しかと胸に刻みます」

「そうか、判ってくれるか」

 理解してくれた息子に胸を撫で下ろ…


「ですから養殖なのです」

「なにを言っている」


「父上のお言葉どおり、採ってしまえば恵みは減るのです」

「ならば何故」


「私は恵みをこの自然に、精霊様にお返ししたいのです」

 自然に…返す?


「減ると言っておきながら返すとはどういう事だ」


「ご説明をちゃんといたします」

 レテウスの顔には迷いはなかった


「我々人は自然や精霊様に対して矮小なるものでございます。ですが食わねば生きていけない、ですから作物を育て自然から命をいただき感謝しながら生きているのでございますね?」


 問うた筈が問い返される

「その通りだ、木々も動物も元々自然は我らのものではない」


「自然を傷つけたくないから養殖をしたいのです。自然を一時的にお借りして自分たちで増やし、本来の自然を傷つけること無く増えた分だけを頂きたい。それが私の考える理想の養殖でございます。」


「それは…」

 考えが揺らぐ


「しかしそんな事が…出来るのか?現に聞いた話では…」

 息子を認めてやりたい自分と教えを護りたい自分には答えが出ない


「父上のおっしゃる通りなのだと思います。自然に逆らわず精霊様の御心に沿わねば成し得ぬことだと自戒いたします」


 そこまで考えて…やるというのかこの子は…


 

 ならば父として私がすべきことは一つだ

挙手について


日本でなら発言を求める時や採決で普通に見かける挙手ですが13世紀スコットランドでは挙手は宣誓(神への誓いなど)でしか使われることはなかったそうです。なのでサーロンが変な癖だというのはこの時代においては普通でした


しつこいようですがランキング入りを目指しています。

【ブクマ】【評価ポイント★】【リアクション】を是非ポチッとワンクリックよろしくお願いします(人´∀`o)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ