44:愛すべき家族(SIDE:アリエノール)
※注意 本日は2話更新
このお話の前に『43:妖精の集いと月見風呂』を投稿済みです。
話に繋がりはないのでこちらを読んでから戻っても大丈夫な様にはしてあります
7/31から始まった5日間連続投稿も今日で終わり
次回は通常通り金曜日更新予定です
沢山の方に読んでいただきランキング入りを目指しています。
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夏を迎えた王宮の庭園ではこの季節を待っていた色とりどりの花々が花の生を謳歌し
木々もまた深く鮮やかな緑を輝かせていた
「ロワルド〜、どこに行ったのかしら見つからないわ〜」
わざとらしい声色で二歳になる息子を探すアリエノール
わざとらしいのだがその声には愛と優しさが隠っていた
お付きの者たちも当然王子の居場所を判っているのだが、無粋な真似はせず親子の時間を見守っている
「可愛いわね」
「でもお父様みたいになっちゃうのかと思うとなんだか勿体無いわぁ」
「こ〜ら、迂闊なこと言わないの、また怒られても知らないわよ」
集まっていた三人の姉たちもその様子を生垣の向こうから微笑ましく見守っていた
花を咲かせた生け垣の後ろからチラチラキラキラと見える白銀の髪がのぞかせパタパタと音を立ててあっちへうろうろこっちへウロウロ
その愛らしい姿見守る者たちにとって少年の姿をした伝承の妖精王エベロフを彷彿とさせるほどだった
「ロワルド見つけた!」
「かぁたま、おかぁたま」
弾けんばかりの笑顔を見せるこの幼児の本当の名は父の名を継ぐ
『ディドロワルド二世』
ロマウバリウクの正当な後継者であり父ディドロワルド一世と母アリエノール妃の間に生まれた最期の子で在る
ディドロワルド一世とアリエノールの仲は睦まじく共に最愛の人と人目も憚らず呼び合う程の相思相愛
これまでに十六人もの息子娘を授かることができた
しかし天の悪戯は余りにも非情
後を継ぐべく生まれた息子たちを
まるで暴風が如くこの世から次々と葬り去ってしまった
生後間も無く天に還ってしまった子が三人
一年とたたず天に取り上げられてしまった子が四人
十に辿り着けなかった者が三人
愛の結晶を搾取され続けた二人に残された者は
女児が五人
男児は彼一人で有り
王位を巡って切磋琢磨する者の存在も無かった
自分のことを覚えたての言葉で呼ぶ息子をアリエノールもまた愛していた
しかし暫しの別れがやって来る
アリエノールは夫の行く場所ならば何処へでもお供した
ちょっとしたアクシデントも有ったけど誰もやったことのない二人同時に戴冠式を行い愛を誓いあった
何をするのも一緒
例えそれが戦地であろうともだ
常に夫と共に在ること、それはアリエノールにとって誇りであり愛の形だった
しかし今回ばかりは今までと事情が違った
「お父様と一緒に海の向こうへ参ります。お前はしっかりと皆の言うことを聞き立派に努めて、私とお父様が帰って来るのを待つのですよ」
息子に掛ける言葉がこんなにも心苦しいとは思わなかった
「かぁたま…どこかいっちゃう?」
山の頂が如く晴れていた表情が瞬時に曇天へと変わり…
「暫しの間だけです」
「どのくらい?」
「四年…いえお父様ならば三年で成し遂げ帰ってこられるでしょう」
努めて笑顔を振り撒くが時の長さを知らぬ筈の三歳の息子の眼には今にも溢れそうな涙
「ルード、ほら私たちと遊びましょ」
ルードとは母に気を遣って姉たちがディドロワルドを呼ぶ愛称であり、姉たちも母の応援にやって来たが間に合わない
「いや!やー」
雷鳴が轟
目からは大粒の雨が滝の様に降り出した
母とて分かっている、息子が悪いわけではないむしろ普通の反応だと
連れて行けるものなら一緒が良い
されど幼い息子を連れての船旅は命に関わる、分かって欲しいと願うしかなかった
ーーーーーー
玄関先迄やって来た娘達に見送られ
夫の手を取り馬車へ乗り込めば
乳母に抱かれ泣いている息子が眼に映る
娘達にロワルドを支えてやってほしいと祈りを込めた
ロワルドには目もくれない夫が悲しくて
つい、ぎゅっと唇を噛み締めてしまう
せめて抱きしめて「行ってくる」の一言くらい声を掛けてほしかった…
如何に愛し合っているといっても
アリエノールも齢四十四
母として女としての勘がロワルドが最後の子だと感じ取っていた
だからこそ息子をちゃんと見てあげてほしかった…
城門を抜けた先
夫がらしくないため息をひとつ
「そんなに気になるのでしたら別れの挨拶の一つでもしてあげれば良いのに…四年はもう逢えないのですよ」
「予が愛した息子達は皆死んでしまった、これは呪いだ」
珍しく信心めいた言葉を吐く夫、不躾な言葉を吐いた事を後悔する
ディドロワルド一世もまた人の親、息子が可愛くないわけがない
「出過ぎた事を申しました」
「リナよ、そんな事はない。あの子のことをお前の前で悪く口走った予が悪いのだ、ただあの子がせめて神の手の離れる歳になるまでの間はこうさせておくれ。お前の微笑みが耐えぬ為にも…その為ならばたかが四年などあっという間、二度と逢えなくなる事に比べればこんなもの辛抱にもならん」
嗚呼…夫は今も私を愛し…息子を、子供達を愛している
そんな気持ちが歳とともに弱っていく私の心を奮い立たせてくれるのだ
「貴方…」
私の方から彼の手を取れば、その大きくて優しい手が私の手を包み込んだ
7/31から始まった5日間連続投稿如何でしたか?
また連続投稿できるように執筆頑張りますのでよろしくお願いします
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