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『妖精の取り替え子』認定喰らって即寒村送り!弱小氏族次男坊の独立戦争記  作者: くろすーおーばー
第一章 幼少期(グレンガルト・トゥア編)

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49/58

43:妖精の集いと月見風呂

5日連続投稿最終日

本日はこの後お昼の12:01にもう一話

『44:愛すべき家族(SIDE:アリエノール)』

を投稿しますので、そちらもお見逃し無く!


沢山の方に読んでいただきランキング入りを目指しています。

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クレェターの役職も決まり


日が沈みかけた頃下見を終えて帰路に着くが、ついつい顔が緩む


そうなのだ遂に()()が完成したのだ!


しっかりとした木組みのパーティション付きで女衆も安心して使える


『煉瓦風呂』


今は窯を使っている時だけしか使えないが、いずれは常用にしたいところだ

空を見上げれば今日は満月、まだ屋根は付けていないけど、そのおかげでこれは良い月見風呂になりそう


クシシシシ…


ヤバい変な笑いが出た、クレェターに変な顔されちまった…

だが今度は河原の石を退かして作っただけの簡易露天風呂と違って湯も熱く、パーテーションも有るのだから風邪は引くまい


上手くみんなが気に入ってくれれば村人の衛生状況も改善するし一日の癒しにもなる、あとは…


叔父上の顔を見る


「なんだ?」

「この後は鍛冶屋に向かうのですけど」


「そうなのか?そんな話はなかったと思うが」

「これはの、レテウスからのプレゼントだ、黙って受け入れろ」

マードック大叔父様とは事前に打ち合わせ済み、大叔父様はお風呂をいたく気に入ってくれていたから快く話に乗ってくれた


叔父上はこれから俺達と一緒に入浴することになっている…まあ本人は知らないわけだが


シェーナ母さんにも言われたことだが、この村の人々には風呂に入るという概念がない…むしろ嫌がるのだ


曰く、『お湯に浸かったりすれば悪いものが毛穴から入る』という言い伝えのせい


基本は濡れたリネンで身体をさっと拭くだけ


たまに桶に湯を張って入ることは有るけど、それも月に一回有れば良い方だ


でもこないだから始まった簡易風呂を見た限りでは村人達、特に子供たちの反応は悪くなかった、大人は遠慮する傾向が強いが現にマードック大叔父様は勝手に簡易風呂を利用しているとゴブ爺さんから聞いている。


ということは絶対嫌!というわけじゃなくなにかに遠慮してるのではないのだろうか?という考えが浮かんだ


考えてみれば、氏族社会は族長から農民まで同じ苗字(氏族名)を名乗る大家族社会だが、やはりどうやったって家族とは言えぬ序列は有る


村のトップの者が推奨しているか判らない行為を無視して楽しむというのは心苦しい事だろう、さらに難しくしているのは俺だ、トップが推奨してるか判らないのに幼いNo.2()が入れと勧めているという


典型的な板挟みの構造が出来上がってしまっている…


そこで村の長である叔父上自身も入ってお墨付きが出れば、村人も遠慮無く風呂に入るのではないかという考えに至ったのだ


村まで帰ってきて一度家に寄る

事情を知っているシェーナ母さんから着替えを貰って…

「ああ、ちょっと待って、ええとクェイダー?」

「クレェターでございやす、なにかやらかしてしまったでしょうか?」


間違いに気付いたシェーナ母さんは慌てて口に手を当て

「ごめんなさいクレェダー、ちがうの貴方たちの分も洗濯物乾いたから持っていって欲しいの」

シェーナ母さんが籠に入った難民の分の洗濯物を渡そうとする


「これは…あっしらの服を洗えてもらえるなんて…」

クレェターは感動しているが、衛生を考えて村の人達に難民の分も洗うようにお願いしておいたのだ


「そうだ着替えがあるならクレェターも一緒に行こうよ」

「一緒に?何がです?」


おっとここで話してしまうと叔父上にバレてしまう

「まあまあ、来れば判るからさ」

「とくにやることもねぇですし、ついては行きやすけどね」


クレェターはあまり深く考えない性格らしくて助かる、仕事はしっかりと考えてくれないと困るが…


「じゃあ、行ってらっしゃい」

「?」

シェーナお母さんの行ってらっしゃいで叔父上は不思議そうな顔をしているけど、気づいてはいないみたいでほっとする、事情を知ってるシェーナ母さんは母さんでウインクしてるし


鍛冶場に着くと煉瓦風呂の方だけでなく簡易風呂の方にもこれまた簡易的なパーテーションが出来てて良い感じに仕上がっている


「それで、何を見るんだ?」

一人…いやクレェターと二人だけ事情を知らない叔父上はまだなにか視察をするんだと思って声を掛けてきた


「完成した煉瓦風呂を是非!」


パーテーションの奥へと進めば

モルタルを固める(乾燥させる)為に焼いてできた灰は既に綺麗に取り除かれ、澄んだお湯が湯気を立ち登らせている


ご丁寧に松明で灯りまで…


あれ?松明が動いた…眼をごしごしと擦ってみたが見間違いではない


月明かりとも違う青みを帯びた蛍光灯の様な灯りがゆらりゆらりと浮いている、これって


テイネ(灯り)シー(妖精)


フェアル・ジャグラとも違ったふんわりとした光源、なんでここに居るのかは知らないけれどありがたい


「さあ、煉瓦風呂とやらが簡易風呂とやらとどう違うのか楽しませてもらおう」

さっさと服を脱ぎ風呂に入ろうとする大叔父様に待ったをかける


「大叔父様!ちょっと待って、今日は風呂に入る前にコレをお願いします」

「なんじゃこれは?…」


一枚のリネンと灰と牛脂で作った急造石鹸を手渡す。香りが良くないのが難点だけど効果は有る

「これで体を洗ってから入ると凄い気持ちいいって妖精が言ってたんです」

必殺、何でも妖精の所為


「風呂を造ったお前と妖精が言うのならさぞかし気持ち良いのだろうな」

疑いもなくかけ湯をした後に体を洗い始める大叔父様を見て


「お、叔父貴本気なのか?」

「本気も何も既に何度も簡易風呂は試して気に入っておるわ」


「だが、言い伝えでは…」

「ごちゃごちゃとうるさいのう、お前がそんなだから村人が入ってこんのじゃ!四の五の言っとらんでお前も入れ」


「いや俺はいいよ…」

それを聞いた大叔父様が両の掌を上にむけ呆れた様子でとどめを刺す


「お前がそんなだから甥孫が一生懸命造っても誰も入ってこんのだ!」


「な…俺のせいだって言いたいのか?」

「そうじゃ、聞けばレテウスは村の人間が病気に罹りにくくするためにコレ(風呂)を造ったと言うではないか、情けない叔父のせいで台無しじゃ…最も作った本人はコレで風邪を引いてしまったから本人の口からは大丈夫!とは言えぬ。察しの悪い叔父じゃ」


うぐっそれはその通りなんだけど恥ずかしいから言わないで欲しいんですけど…


「叔父貴…は、その何も起きてないのか?」

「俺を見て病気に見えるか」


「……」

「わしが嘘をついてでも入らなければならない理由は?」


「ない、無いが…」


「腹を括らんか、ハイランドの漢が聞いて呆れるぞ」

「判ったよ」


「本当に何も…」

「くどい!」


見れば、叔父と大叔父が問答を繰り広げている間に、難民のクレェターはさっさと裸になっている


「クレェターはお風呂平気なの?」


「水は水でやすからね、あっ!お湯でしたね!」

なんともすっとぼけた男である

「それに…普通なら難民に拒否権なってねえですからってなるんでしょうが、レテウス様は俺達になんも怖いことされてねぇですから」


ははは、と笑うクレェター


嬉しいこと言ってくれるじゃん

まだ風呂にも入ってないのにちょっと胸が暖かくなっちゃったじゃないか


遂に折れた叔父上が裸になりヨゾとマザも裸になって裸のお付き合いの始まった


石鹸を洗い流して湯船に浸かればあちこちから


ア~だの、ぶはぁ~~だの、あ"ぁ〜だの声が漏れ出した


見上げてみれば満天の星空と満月


最高だ!んっ?流れ星?


ではなかった青白い光を放ちながら夜空をくるくると回ったり踊ったり


あれも妖精さんたちか、他にもフェアル・ジャグラや出会ったことのない妖精まで居る


「これは凄い…」

思わず感嘆の声が漏れた

「レテウスよ、満月の夜は妖精たちがもっとも活発になる、覚えておけ」

「はい、大叔父様」


「ううむ…こうなってくるとレテウス、村人達には入浴は一人でするなと忠告しておけ」

「なぜですか?」


「それはな、満月の様な妖精の力が強い日は攫われやすい、特に子供がな…」

叔父上が大叔父様に変わって答えてくれた


「必ず守らせます。あと念のため鉄も身に着けさせますね」

「それがいい」


神秘的な光景にみな声が出ないでいると


「うひょ~、こりゃあ凄い景色ですね」

クレェターの間の抜けた声が響き和やかな空気に変わる


「これは…中々良いものだな…あとは俺がこのあと病気にならなければ…」

「心配性め…エヴァン家の者は貧弱ではないわ」


風呂を認めさせようと大叔父様がフォローしてくれてるって判ってるけど風呂で風邪を引いた俺にダメージが蓄積していく…


「レテウス様、(しば)しの別れの前にお話をしてもいいですか?」

マザだった。明日の朝にはマードック大叔父様と共にグレンガルト・トゥアを出るマザ


「勿論」


ヨゾは気を使っているのか、わざとらしく夜空を眺め話に入ってこようとしない


「俺には兄貴のような統率力は無い、でも頭の力…計算においては兄貴には絶対に負けない」


「うん」


「俺は帰ってきたら頭でレテウス様を支えます。だから貴方の片腕に相応しい村…町…都市にしておいてください」


不敵な笑みを浮かべるマザにこちらも不敵な笑みを返し


「マザから宿題出されるとは思わなかったな…いいよ!、でも大きくなりすぎたからって逃さないからね。覚悟しといて」


望むところだと胸を張って白い歯を見せて笑うマザ、なんだかんだでマザも負けず嫌いなんだよな


「マードック大叔父様、マザが成長出来る様に目一杯頭を使わせてやってくださいね。」

大叔父様の正面を向いて頭を垂れる

「おう!任せとけ」

決心したはずのマザの肩が温かい湯船だというのに悪寒で震えるのを見て笑ってしまった



翌朝大叔父様の愛馬ドゥラスの上にいるマザに

「またな」

「はい、また」

互いに短い言葉を交わし、マザは村から旅立っていった

しつこいようですがランキング入りを目指しています。

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