42:漁師は漁師でも…
5日間連続投稿4日目
いよいよ明日で連続投稿も終わりですが、最終日は別のご家庭のお話になります
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「ここですか?」
海と聞いて弾んでいた声は実物を見てわかりやすく沈んでいた
何故なら海だった土地はいつも以上に潮が引き、今まで見てきた海とは全く違って見えた
(ねえ、にいに!お水全部なくなっちゃった!!)
どうやらこれは大潮の干潮のタイミングで来てしまったっぽい
ある程度は想定していた俺もこれには驚いた
そして今日はこの落ち込んだ男こと、漁師経験を持つクレェターを連れ
俺・ソーサ・叔父上・ヨゾマザ兄弟・マードック大叔父
勿論クラウとソラスにドゥラスも一緒に牡蠣を獲りにくるタイカン湖へ来ている
事前に、にいにの世界で調べて判ったことだが
てっきり海だとばかり思っていたここは海に繋がった汽水湖なのだそうだ
現代のスコットランドでは国家自然保護区にしていされていて牡蠣は勿論、海鳥などの狩猟は禁止されている。
まあ現代と違って、この世界ではそれよりもここを治めるローデル家の許可が絶対なわけだが…
大氏族ローデル家の傘下である我がエヴァン家が少量採っていく分には一々取り締まられることはないだろうが、こちらも産業目的。量が量になれば絶対に止められてしまうだろう。
その辺のことは政治、自分にはどうにも出来ないから現状叔父上たちにお任せするしかないのだが、ローデル家にはアンガス兄上が里子に出されていて、父もローデル家に里子に出されていたのだとか
その辺コネで上手く…行かないだろうな、そんなに甘い社会じゃないだろう
我がエヴァン家はやっぱり弱小氏族だそうだが、13世紀末スコットランドと同じと考えれば大氏族であっても資源も食料も厳しい時代の筈だろうし、懇意にしているからでなんでも通していたら何時の時代だってジリ貧になる大勢の氏族を傘下に持つ大氏族が甘いわけがない
「で、坊っちゃん…で良いんですよね?」
「そこはレテウス『様』だろ!」
ヨゾがすかさず訂正してくるが
「構わないよ」
俺としては様付けで呼べなんて一度も強制させてないのだ、むしろ二人を始めとした村の人達が勝手に呼び始めたんだから
「そんなぁ~」
がっくりと項垂れるヨゾマザ兄弟
「すいませんね。カウトールでも氏族の直系になんてお目にかかれなかったんで呼び方が分かりませんで」
他の氏族がどうしてるのか判らないがあまり仰々しくされて話が進まないのは避けたい。坊っちゃん位がちょうどいいのだ
しかし叔父上が許してくれない
「レテウス配下の言葉を無下にするもんじゃない、お前のことを慕っているからこそ年端もいかないお前を年上のヨゾたちが『様』付けで呼んでおるのだ」
「それにな、様付けされるということはそれだけでお前の格を表し、変な気を起こさせない盾でもあるのだぞ」
その辺気にしなさそうなマードック大叔父様からまで追撃が飛んできた…
「レテウス、お前が良いかどうかではない、周囲がお前をどう見るのかもっと考えるのだ」
格か…歴史で氏族社会を少々知っている気になっていたけど、どうにも現代における身分の差がないことが逆に弊害になってしまっているようだ
「判りました、様付けで構いません。ヨゾとマザもそれでいい?」
「「勿論です!!」」
少々気まずい空気にクレェターが及び腰になってしまった
「話していいよ」
声を掛けて続きを促す
「では改めましてレテウス様」
それを見てうんうんと首を縦に振る兄弟、もうこれは様付けは受け入れるしかない
「それで、あっしは何をすればいいんで?」
半ばやけっぱち気味の声で聞くクレェター
「そんなに落ち込まないでよ。今日はあくまでも下見なんだからさ、船も新造させるよ」
「新造!」
「うん、君の船」
「なんでもやりますよ!」
潮目の様に顔色がころころとよく変わる男だ、しかしこの男、漁師とは言っても湖の漁師経験がないのだ
「でも、海と湖じゃ違うと思うんだけど大丈夫?」
「何がです?水は水、やるこたぁ変わりませんよ、俺は水の上で仕事がやれると聞いたから名乗りを上げたんです海は確かに初めて見やしたが船出して、網投げを放って魚を穫る。それができりゃあどこだって同じです」
これは…
「湖でしか漁したこと無かった?」
「海は初めてですねぇ、でもお任せください船さえありゃあチョチョイのちょいですぁ!」
駄目だこりゃ
考えが甘かった、なんで考えが及ばなかったのか
この時代は今回のことや戦争でも起こらなきゃ、一生村を出ない方が圧倒的に多いのだ
どうしたものか…しかしこうなると船の操舵だって難しいぞ
「あの先に見える海で漁をすりゃあいいんでしょ?」
完全に間違っている、しかし湖しか見たことがないのならしょうがないというか
そういった反応になって当然だ
「違うよここ!」
俺は眼の前の砂地を指さした
「レテウス様、冗談言っちゃいけませんよ!ここは海どころか水すりゃねえじゃねえですか」
これは自分の目で見てもらわないと無理だ
「叔父上、大叔父様、この者に海を知ってほしいので暫くの間ここに居てもよいですか?」
「お前の肝いりの計画なのだろ、だったら別に構わんが何時までだ」
「せめて潮が満ちるのを見てもらわないと話になりそうにないので…」
「ならば俺と叔父貴は牡蠣でも採ってこよう、その方がこの者への説明もしやすいだろう」
ほんと理解が早くて助かります
あっしそんな変なこと言いました?みたいな顔をしていたクレェターも時が立つ毎に眼の前で満ちていく潮を眼にして顔色がどんどんと曇っていった
「こりゃあとんでもねえ…」
やっと事態を理解してくれて俺は嬉しいよ…前途多難すぎるけど
「クレェターには明日からここへ来てまずは潮の満ち引きを覚えること、ヨゾお前は護衛兼見張り、それとヨゾ自身も満ち引きや潮道を覚えてほしい」
「はっ」
「ヨゾは計算が出来るからな頼りにしてるよ」
「お任せください!」
なぜそんなにも嬉しそうなのか…
ヨゾは弟のマザにドヤ顔までしてるし、マザはマザで少し悔しそう、なんでなのさ?
「あのぅ~、レテウス様、この満ち引きってやつは毎日起こるんですかい?」
クレェターはどうやら自分の目で見たものが信じられないらしい
「毎日起こるし時期によっても度合いが違うよ」
叔父上の顔を見つめれば叔父上も頷いた、その辺も地球と同じらしい
「どうする?今ならまだ船も作り始めてないし、他の人に変わってもらってもいいけど…」
「くぅぅぅ!やります!やっと船に乗れるのにそいつを他の誰かに取られるのはまっぴらごめんだぁ」
よほど漁業が好きなのか、それとも農業が嫌なのか、出来れば前者であってほしいところである
しかしいくら大潮の干潮とは言えこれを見ただけで覚えろというのも酷な話だ
せめて潮位を覚えるための何かを用意してあげたいが
(にいに、ご本には杭を立てると良いって)
レテウス君偉い!
(あとねぇ、木板に毎日棒線を引くでしょぉ~)
次々とご本に書いてある事を教えてくれる。見た目が子どもだから賢く見える俺と違いやっぱりこの子は本当に頭が良い
「よし!クレェターこれから毎日ここから一直線に杭を打ってって」
「杭?ですかい」
「ああ、それを見て今どれくらい潮位が有って、後どれくらいで潮が引くか満ちるか覚えるんだ、目で見える分わかりやすいでしょ」
「?よくわかんねぇですが、やってみます」
今はまだイメージ出来ていないんだろうが、出来上がって経験を詰めば確実に覚えるだろう
「レテウス様、こんだけ水嵩が変わっちまうんなら船はどこに置きやすか?下手すりゃ潮で勝手に流されちゃいやすよ…」
「それは高い位置に船着き場を作れば問題なかろう」
代わりに答えてくれたのは叔父上
「ありがとうごぜえやす。でも場所を決めるのは、もうちっと待ってくれやせんか?出来るだけ潮の流れ?ってやつでしたかそれにやられねぇ場所に船を置きてぇです」
ぽつりぽつりとクレェターから質問が出始めた。これはやる気はある証拠と見ても良いのかな
あ…そういえば肝心なことをクレェターに言ってなかった
「言ってなかったけど、穫るのは魚じゃなくて牡蠣ね」
「牡蠣ぃ~!なんでです!俺は食ったこたぁねえが聞いた話によると牡蠣なんてそこらから剥がして食うもんじゃねえんですか?」
そうか牡蠣も食べたことないのか、海産物を内陸の人が食べられるって幸せだったんだな…
「今はそうだけど、いずれそれだけじゃ足りなくなる。だから人の手で増やす…」
「人の手で?魚の?」
「だから違うってば、牡蠣の養殖を始めるのさ。」
しつこいようですがランキング入りを目指しています。
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