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弱小氏族の次男坊に転生したら『妖精の取り替え子』認定喰らって即寒村送り全然スローライフ出来ません  作者: くろすーおーばー
幼少期編

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4/17

幼少期4:支族長の村グレンガルト・トゥア

兄上が旅立って数日後


僕もまたこのお城から旅立つことになった


里子に出されるのかと思ったけど違った、叔父上の治める村だ、村の名前は『グレンガルト』

ゲール語で『グレン』が谷で『ガルト』は開拓地や開拓集落を指す『トゥア』は方角の北。纏めると『北の谷の開拓村』といった感じだろうか。開拓を任されるくらいなのだから叔父上は信頼されているのだと思う


僕は荷馬車で叔父上は愛馬(多分)、実際一族のお荷物だから仕方ないね


まあそのお陰で兄上から貰ったメモを一人で読めるんだけどさ


メモの内容は初歩の魔法の唱え方から魔法の属性と注意点、兄上は読めるようになったらと言っていたけど、本当は前の世界で習った言語に似ていたからほぼ理解できてたりする、でも兄上の前で唱えたときに風玉が大きくなってしまった事を考えると憶測だが発音が関係しているのかもしれない、どんなにしっかりイメージできても淀みなく詠唱できないとノイズになってしまう…みたいな


できれば燃やしたくないなぁ


たった一枚のメモだけど、このメモはこの世界で初めて貰ったものだ、しかも兄上から


兄上と言えば兄上との会話で判ったことが有る


この身体の中にはもう一人居るこれも恐らくだがレテウス本人だ、会話も意思疎通も出来ないから恐らくとしか言い様がないわけだが


兄上の話を冷静に聞く自分とは別に一喜一憂して感情を高ぶらせる存在を感じた、これがレテウス君の感じている気持ちなんだろう、そのお陰か中身二十超えでも兄上と話している時は恥ずかしくもなかった


叔父上の部屋に居た時も不意に涙が溢れてきたり朝起きると泣いていたのは三歳のレテウスの感情が溢れているときなのだと思う


このままなのかそれとも将来的には互いが融合していくのか判らない、だけど身体を借りているのは俺で親子関係を壊したのも俺だ、出来る限りこの子(レテウス)の気持ちに寄り添ってあげたい


それと大人である俺からするとデイヴィッド叔父上は頼れるナイスガイなのだがレテウス君は怖いみたいで感情があまり出てこない、というかこれは引きこもってるような感じだ、いい人だと思うんだけどな


馬車に揺られて体感で二~三時間経っただろうか村に着いた、かっぽかっぽとのんびり移動しての二~三時間だからそこまで本家から離れてないのかもしれない


中世の村のイメージで言えば皆が一箇所に集まって家を立ててこじんまりとした集落を想像しがちだが実際の村は前の世界で学んだ通り一軒一軒は百メートルくらい離れている


現代の日本の農村だって密集してない地域があるのを知っていればそんなに変な話でもないのだが


先触れでも出ていたのか村人たちが集まっていた見える限りで五十人くらいだろうか、やっぱり氏族長の子供が来るというのは珍しいのかな?いじめられなければいいけど…


村の広場っぽい所で馬車が止まる自分で降りようと思ったけど三歳児には結構高かった

結局叔父上が両脇に手を入れて抱えあげてもらって降りたのだがあっという間に子どもたちに囲まれた


次々と自己紹介をしてくれて周りの大人もそれをにこやかに眺めてる


これはアレか?将来を見越して氏族長の息子に今のうちに唾つけておこうみたいな感じ?

そんな事を考えたりもしたがそれは大きな間違いだと後で知ることになる


目が回りそうな村人たちの自己紹介が終わり叔父上の肩に乗せられて家に到着すると叔父上の奥さんが家の前で待っていた


ドキドキしているのは俺かレテウス君か、多分二人とも緊張していたんだろうと思う


「レテウスと申します!今日からよろしくお願いしみゃふ!」

こういうのは最初が肝心、元気よく挨拶したつもりなんだが最後の最後でレテウス君の緊張が出てきてしまったみたいで噛んだ


「ブッ…可愛い挨拶ね、私はデイヴィッドの妻シャーナよこちらこそ今日からよろしくね」

叔母の第一印象は若い!美人!でも芯は強そう!ついでに思ったのはナイスミドルに見える叔父上って何歳なんだろう?


「さあ入って、今日は村の皆が貴方のためにいろんな食材をくれたのよ」

村の皆さん唾つけておこうなんて思ってごめんなさい


支族長という実質No.2家はどんなものなのか興味津々だったけど資料で見た普通の民家と同じで感動した!タワーハウスも充分魅力的だが、それ以上に民家とは普通であるが故に残らない、レア度で言えばこっちの方が希少と見る人もいる位だ


ドアを開けると数段の下りの階段、これは地面を掘って低くすることで地熱を使うため、だから外から見るだけでも判るのだが屋根が低い


部屋は二つか三つで残りは炊事場と家畜を入れる部屋、寒い高地では家畜は生きた暖房器具だ

本家の叔父上の家にも近いがこっちは牛さんが現役で居る


「よろしくお願いします」

頭を下げて牛に挨拶をする、家畜だけど家族高地の人はそんな感覚で牛と付き合っていると聞いたからちゃんと挨拶をしておく


当の牛さんは可愛いと言うかダンディーと言うか前髪が長くてお目々が見えない日本の友達なら『目隠れ』とでもいうんだろうな


モォ~

返事が帰ってきた、オッスとかそんな感じかな

「ふふふ、牛がそんなに珍しい?これから毎日見ることになるわよ、こっちにいらっしゃい」

「うん」


奥は炊事場兼ダイニング、まあダイニングキッチンだな、既にテーブルの上には美味しそうな料理が並んでる、食べきれるかな…馬車と同じ様に抱え上げられて椅子に座れば料理が見える


この辺も()()()と同じなんだ…そう思ったのは球体のような料理『ハギス』を見つけたからだ、羊の内蔵や肝それに燕麦等をこれまた羊の腸にぎっちり詰めた伝統料理、美味い美味くないは個人の趣向だけど俺は中世の人達の生活や創意工夫を感じられて好きだ



他にもパイや野菜のスープが並んでいて手間ひまかけて掛けて作ってくれた事がわかる

奥さんのシェーナさんも座り揃った所でお祈りを捧げる


「我らの神よ海よ大地よ、この食事を祝福してください」

本家でエイリィから教えてもらっといて良かった、実を言うとこっちに来て初めて食べたときにお祈りを知らなくて後で叱られた、ベルテにはあの後会えていない…


「さあ食べて食べて」

「うん、いただきます」

一瞬二人がきょとんとした後

「いい心掛けね」

つい日本人のクセが出た気をつけよう


シェーナさんはニコニコと笑ってくれているけど本当はどう思っているんだろうか?

突然義理の兄の子供がやってきんだ、男性社会で断れないだけで本当は迷惑に思ってても言い出せないとかも有り得る


レテウス(宿主)君のためにも嫌われないように行動しよう


俺は何故この身体に居るのかも解らなければ何時この身体から消えるかも判らない、居なくなった後でこの子が困るような事態にはなって欲しくない


「美味しくなかったかい?」

考え事をしていた所為で進んでいない食事、早速不安にさせてしまった


「ううん、美味しい!」

本当に美味しいのだが何処か気分が重い、これはレテウス君の嫌いな食材でも有ったのかもしれない、まあ安心してくれ嫌いなものが有っても俺が食べてやるから


通じるか判らないが落ち着かせてやりたくて心のなかでつぶやくと幾分気分が和らいだ、これで双方向の会話はできなくとも気持ちは通じ合える事が判った


「叔父上明日はなにするのですか?」

「そうだな、本家の仕事のせいでしばらく帰ってこらなかったからな、明日は村を見て回る」

(一緒に行きたいんだけどどう?)

心のなかでレテウス(宿主)君に向けて呟いてみる

う~ん、レテウス君の気持ちがよく分からない、嬉しいような嫌そうな…村は見てみたいが叔父上が怖いのか?


食べ終わると同時に眠気がやってくる、子供の体ということも有るがアルコールも入っているのだから当然といえば当然か


叔父上に抱えられベッドに運ばれる


健やかな成長を考えるとできれば安全な水が飲めるようになると良いんだが…時代に合わないことをして悪目立ちもしたくないんだよなぁ


眠りに落ちるまで横になってとりとめもなくこれからのことを考える


例えばだ、安全な水を魔法に限らず何らかの形で作れたとする

村人もそれを飲めるようにすればどんなに口止めをしてもいずれは外に漏れ、俺の予想ではこの世界にも居るであろう吟遊詩人がそれを各地で喧伝すれば後はなし崩し的に広まって行って…


レテウス君が望もうが望まざろうが国に取り立てられてしまうかもしれない、たとえ本人が望んだとしても水や土地から家畜に至るまで争いの火種になるのが中世、相手が良いもの持ってれば力ずくでも奪う世界位の気持ちで居たほうが良い、兄上にも言われたことでは有るが魔法の使い道は慎重にしよう


他には時代かな…今のところ魔法が有る時点で確実に別の世界だがそれを除けば留学先の文化にそっくりだ、建物の形や間取りから中世レベルだとは思うが正確なところが判ってない


一つの過程だが見た限り俺が学んでいた(留学先)の中世にそっくり過ぎた、建物も馬車から見た橋の建築法も人々が着ている衣類も今日見た牛ですら元いた世界ではその国の固有種だった


異世界と言うよりパラレルワールドとでも言うべきか、パラレルワールドだと仮定して今まで見てきたものから過去だと考えているわけだが


具体的に時代が分かればもっと自分の知識を活かせるんだけど…


考えることは沢山あるが先ずは明日の…



「レテウス起きて、ついて行くんでしょ」

「ごめんなさい起きます」

飛び起きて叔父上を探す

「待って、着替えないとね」


身ぐるみ剥がされてあっという間に着替えさせられる、このドレスみたいな服やっぱり恥ずかしい


早くズボンが履ける歳に…でも大人になったらなったでキルトか今のうちに慣れておいたほうが良いのかな、キルトって傍から見る分には格好いいんだけど…


「お待たせしました叔父上」

「…うむ」

両脇を抱えられ馬に乗る、俺自身は馬に乗った経験は無いから少し緊張、でもレテウス君がわくわくしているのが伝わってくる、馬が好きなんだな


少し確かめてみようか

「えっと、叔父上この子の名前は何というのですか?」

「こいつか?こいつはオワールだ」

「よろしくねオワール」

やっぱりだ、オワールの意味は『くすんだ色』や『灰色』を示す、留学先の古代語で中世の人々は名前にその馬の色を名前につける文化が有った、そしてその名の通りオワールは日本で言うところの芦毛の馬だ


首をそっと撫でてやれば少し首が伸びたこれは嬉しいのかな?まるで自分とレテウス君の様な関係だな、直接会話は出来ないけど気持ちは察せる所がそんな気にさせる


「おはようデイヴィッド」

本日の第一村人発見!というか発見された


「おう」

「この坊が兄貴んとこの?」

「ああ」

叔父上、口数少ないなぁ


叔父上をつんつんと突付く

「なんだ?」

「このおじ…お兄さんの名前」

「ああこいつはモルト」


「モルトさんはじめまして!おはようございます」

「かぁ~流石本家のお坊ちゃん、行儀が良いな」

カッカッと笑うモルトおじさん

「俺も本家の人間なんだが」

「なんでだろうな?お前からそう感じたことねぇや」

またカッカッと無遠慮に笑う、だけど叔父上の様子からしてこれがデフォの関係っぽい


「俺の居ない間になにか変わったことは?」

「そうさなぁ~トッドの(せがれ)が狼を見たと言っていたが見つかってない、家畜たちにも被害は出ていないな」

「見間違いか?」

「おそらくな、それと結婚の立ち会いをして欲しいって家が二件。あと麦はいいが春植えの豆があんま穫れなかった」


同じ領内なら問題ないが嫁として他領に嫁ぐのなら働き手が減るから税を取られるんだったな、この場合は立ち会いだけみたいだし領内かな


「そうか、立ち会いは問題ないが豆は心配だな」

「ブラウニーがまた減るな」


「兄貴には伝えておくからあまり心配するな」

「頼りにしてるぜ、報告することはこれくらいだな」

「判った」


モルトおじさんとの会話を切り上げて村を行く見えてきたのはそれぞれの家から牛を連れて出てくる人々、放牧に向かっているのかな


そう言えばさっきモルトおじさんが狼の話しをしていたけど、前の世界では十八世紀には絶滅していた事を考えるとここはそれ以前の時代と仮定できる、熊は十一世紀には全滅だからもし居たらそれ以前の時代ってな感じ…


あれ?兄上が俺を助ける時に倒したのって熊だったよな、じゃあ十一世紀以前なのか?とりあえず暫定で十~十一世紀ごろだということにしておこうか


豆が育っていない…これは観葉植物程度しか育てたことのない俺ではお役に立てないだろうな祈るしか無い、ブラウニーは何だったっけ?どこかで聞いたはずだけど思い出せない


聞いて回ると言うよりは叔父上を見つけた村人が話しかけてくるって感じで村を見て回る、村の景色にも慣れ始め山に目を向ける、思ったより木々が生い茂っている、何世紀にも及ぶ伐採で向こうの世界では山肌がむき出しの山が多かった事を知っているだけに新鮮な気分だ


見回りは話を聞きながらで二時間くらいだったからそんなに大きい村じゃなさそうだけど三歳児にはきつすぎるあまり家の傍から離れないようにしないとな


家の前に帰ってくると同時にお腹が鳴る、早くご飯が食べたい


叔父上の腕に乗せられたまま家に入ればシェーンさんとは別にもう一人女性が居た

「しばらくぶりでございます坊ちゃま」

ベルテだった、唐突に胸に暑いものがこみ上げる今のレテウス君の気持ちだ駆け寄り彼女の足にしがみつく

「あらあら困りましたね」

涙と鼻水でぐちゃぐちゃになってもベルテから離れない、やっと本当の意味で自分がしでかしたことを理解した


最低だ…子どもの身体を乗っ取り好き勝手して俺は母親とベルテをこの子から奪ったんだ

怖かっただろう、恐ろしかっただろう、俺を恨んでも仕方がないはずだ


それなのに今この子から俺に対する憎悪は感じられない

寄り添うだの慎重に動こうだのそんな生易しい想いでは足りない


レテウスを自分の存在が消えて無くなるまで護りきってみせる!これは誓いだ



レテウス君が落ち着くまで皆で待ってからベルテを加えて四人での朝食、相当嬉しかったのだろう俺は意識していないのに顔が緩みっぱなしだけどそのままにしておこう、正直ここまで彼の気持ちが身体に影響を及ぼしたのは今日が初めてなのだから


「坊っちゃん今日からまたよろしくお願いしますね」

「うん!」

ベルテは詳細をはぐらかしたがお母様の怒りを買ってお暇に出されてしまっていた所を叔父上が再雇用してくれたのだと判った


昨日の食事に有った緊張は今日はない

「良かった…ベルテ改めてこれからよろしくね」

流石に中身まではバレてないだろうが子供らしくない余所余所しい振る舞いを緊張だとシェーナさんは受け取っていたのかもしれない


ベルテを前にしたレテウス君の子供らしさが見れてほっとしたんだろう


和やかな空気に包まれ食事が進む、そうだ忘れる前に聞いておこう

「叔父上、ブラウニーって?」

モルトおじさんが言っていたブラウニーなるものについて聞いてみる

「そうかまだ知らなかったのか」

「ありがたいゴブリンの事よ」

ニコニコ顔でそう教えてくれたのはシェーナさん


「私たちが寝ているときや見ていない間にお掃除をしてくれたりしてくれると言われているわ」

「言われている?どんな姿なの?」

「それは判らないわだって私たちが見ていないときにしてくれているんですもの、夜ふかしして見ようとか思っちゃ駄目よ、怒って出ていっちゃうから」

なんか日本にもそんな妖怪居そうだな

「じゃあ豆が穫れないとなんでブラウニーが減っちゃうの?」

シェーナさんは質問がというよりは会話が楽しいのかもしれない、昨日から優しかったけど今日はもっと自然な感じがする


「それはブラウニーにあげる報酬が減るからよ、それから報酬も判るようにあげちゃ駄目、感謝の気持を伝えても駄目よ、あくまでもさり気なく食べ残しとか片付けし忘れたと装わないといけないから」

居ると認知されると出ていっちゃうのか、なんかプライドが高いというか天邪鬼な性格というか…


昨日とは打って変わって大いに盛り上がる食卓、因みにブラウニーはゴブリンで妖精にカテゴリーされるそうだ


妖精って何ていうかちっちゃくて羽が生えたのを想像していたけどここでは大抵の怪異は妖精か精霊になるっぽい、まあ日本でも妖怪って言ったり(あやかし)って言ったり実は神の使いだったりで微妙にカテゴリーが曖昧な怪異とか居るしそんなものなのかもしれない

閲覧数は日に日に増えているのですがマイリスト登録は頂けていない状況でして、励みになりますのでマイリスト登録と★評価よろしくお願いします

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