32:たまにはのんびりエディンバラ(精神世界)前編
あ~、スコットランド行きたい
2026/07/4日間ファンタジーランキング294位獲得しました。ありがとうございます
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お休み二日目、もう殆ど大丈夫だと思うんだけど
シェーナさんが許してくれなった、抜け出したくてもベルテがしょっちゅう来るしで脱走不可
…でもまあレテウス君も楽しそうだったし、フォークからも一番心配していた石灰の取り扱いも問題なしの報告を受けていた、惜しむらくはヨゾとマザの成長が見れないこと
その分マードック大叔父様がわざわざやって来て嬉しそうに二人の話をしてくれたんだけどね、この分だとヨゾまで連れて行かれそうでちょっと怖い、本当はマザだって連れて行かれたくなかった…俺に拒否権がなく、マザ本人の決意を聞かされたから我慢してるだけだ
(ねえ、にいに)
ん?どうしたの
(お家で動けない?)
そうだねぇ、シェーナお母さんのお許しがないとだめだねぇ
(じゃあ…)
ーー
ーーー
ーーーー
どのご本を読んでほしいのかな?
今は『にいにのせかい』の図書館の児童書コーナーでレテウス君が読みたいご本を探している所だ
レテウス君は俺の語学知識を使えるから絵本くらいなら読めると思うんだが、いつもこっちの世界では目を借りているお礼もしたい…いつも子供には難しい専門書ばかりで文字が読めても小さな子が理解できる本じゃない自分がレテウス君の歳にそんなものばかり見せられていたら発狂ものだと思う
(にいに!このご本の牛さんおうちのキタロウみたい)
まあ同じハイランドカウ…いや世界が違うから正確には同じ種じゃなかったりするのかな
レテウス君がまず興味を持ったのは『ノロウェイの黒牛』という絵本だ
読み聞かせてあげていると椅子に座って脚をプラプラ、身体を右へ左へ揺らして楽しんでる…身体が一心同体だから揺れて読みづらい
でも子供ってこんなもんだよな。子どもの行動はどれだけ大人が予想しても予想通りになんてならない事だらけ
「あるところに三人の姉妹がおりました。ある日、末の娘は冗談交じりに「私、ノロウェイの黒牛と結婚してもいいわ」口にしてしまいます。するとどうでしょう本当に怪物の黒牛が迎えに来たではありませんか。恐ろしく見えた黒牛ですが黒牛は優しく彼女をもてなします。そして夜になると黒牛はなんと美しい王子様になったではありませんか、王子様は悪い魔女の呪いに拠って黒牛に変えられ夜だけは人の姿に戻れるのです。
しかしーーー」
名前だけは知っていたけど、読んでみると結構ハードだ呪いを解いて、はい!ハッピーエンドな展開じゃないし…ヒロインの女の子も王子様におんぶに抱っこの護られるだけの女の子じゃない…
途中経過が子供向けにしてはしんどい、最後は勿論ハッピーエンドなんだけどね
「めでたしめでたし」
読み終わっても、レテウス君の反応はちょっと微妙、やっぱり重たいと感じたのかな?
「ぼくたちって、呪われてたりしないよね?」
その反応は予想してなくてぎょっとする
「どうしてそう思ったの?」
優しく聞いてみる
「だってぼくたち、何も悪いとことしてないよね?でも王子様も何もしてないのに黒牛さんに変えられちゃったでしょ…ぼくたちもお母様にお家おいだされちゃって、お母様僕たちのこと妖精だって…」
それに関しては俺のせいと言うか…申し訳ない
その後も取り留めのない言葉が続く、なんとなく思っただけで答えがあったわけじゃないんだね
「呪いか…レテウス君はやっぱり今の生活辛い?」
「う~うん、嫌いじゃないよ、にいにもシェーナお母様もデイヴィッド叔父様もヨゾもマザもみんな大好きだもん」
「良かった俺もレテウス君が好きだよ、でもそう考えると呪いじゃないんじゃないかな?」
「う~、うん?そうかも、そう!」
良かった、レテウス君から明るい声が戻ってくる
他にも何冊か読んであげたのだが飽きてきたのか大きなあくびを一つ、う~むせっかくのお休みなのだもっと楽しませてあげたい…
ーーそうだ
「レテウス君、お散歩行こうか」
「おさんぽ?」
「そう、おさんぽ!」
マーキュアン・ホールとジョージ・スクエアを抜けてまず向かったのは…
アスファルトの道路とコンクリートの歩道に対して石造りと煉瓦の歴史を感じさせる佇まいの建物が並ぶ街並みある種の風情を感じさせてくれるが、人は居ないが車やバイクといった乗り物が残されている風景は終末感が有って大人でも少し怖い
「ねえにいに、あの塔どうやって建ってるの?」
指を指したのは、歴史を感じる石造りの荘厳な町中でも一際目立つ、一面ハニーゴルドで円形の外壁と
幾何学模様のモダンな塔、モチーフにされているのは古代の円形要塞「ブロッホ」だったな
「これからここを見物するのさ、あ、そこ右に曲がって」
懐かしいな留学当初は何度も来たっけ、お陰で展示物に関しては結構詳しくなった
階段の上に三つの扉が並ぶスコットランド国立博物館の入口に着く
三つの扉…ではなくその下にある自動ドアのボタンを押し中に入る
「お邪魔しま~す」
「おじゃましま~す」
誰も居ないとはいえ、ついつい申し訳なさが口から出てしまう
エスカレーターに乗って上がると1階へ行くと白亜の吹き抜けグランドギャラリーが目に飛び込んでくる
「すごーい!ひろーい!」
既に大興奮のレテウス君はあっちへこっちへ見たことのないもの全てを吸収するように行ったりきたり
でもレテウス君が最も興味を持ちそうなエリアは次だと俺は踏んでいる
「わぁっ!」
やっぱりね自然ギャラリーエリアでまずお出迎えしてくれたのはT-rex、ティラノサウルス愛称はワケンレックスもしくは発見者の名から来たスタンだ
「にいに、これはなんのお骨?」
「そうだよ肉食の恐竜ですっごい強かったんだって」
「にくしょく?」
これでもかというくらい見上げてティラノサウルスの顔を見るレテウス君
「うん、お肉を食べるって意味だね」
「じゃあ、じゃあこの恐竜さんは偉いんだね!」
「まあ、偉いと言うか強かったというか」
「おなじ、お肉食べて良いんだもん、村のみんなはお肉は干し肉しか食べさせてもらえないもん」
「そうだね、恐竜の王様だね」
あ~、お肉は偉い人しか食べちゃだめだって教えたからレテウス君の中ではT-rexは王か、はたまた氏族長か貴族にランクアップしたのか
キリンやゾウにホッキョクグマにライオン、空中には吊るされたサメたちやダイオウイカまで、世界中から総力を掛けて集められたであろう展示品が並ぶ、当然一つとして見たことのないレテウス君のボルテージは最高潮、宇宙コーナーは少し難しかったみたいだけど世界文化コーナーは気に入ったみたいだった
最後のコーナーのスコットランドエリアに入れば
「にいに!これフォークの楽器!」
吟遊詩人のクラルサッハか、残念ながらフォークが持っているのはそんな高価なものではなく小型の竪琴でリラと呼ばれるものだけど…
否定するのはレテウス君の夢も壊しそうだし、フォークにも悪いような気がして
「そうだねぇフォークの楽器だね」
とだけ言っておいてあげた
「にいにのせかいの人たちすごい!」
ふぅーふぅーと鼻息荒く語るレテウス君
「そうだね、スコットランドの人達が色んな物を大切にしてくれたからこうやって楽しみながらお勉強できるね」
「お勉強?」
「そう楽しいでしょ?レテウス君嫌々勉強するのと楽しいのどっちが好き?」
「楽しい方だよ!」
「でしょ。だから今ここに居るのは僕たち二人だけだけど、作ってくれた人達に感謝しようね」
「わかった!ありがとうございましたぁー」
誰も居ない博物館にレテウス君の感謝の声が響き渡る
屋上の上がりエディンバラの景色を一望する
「レテウス君、レテウス君あそこ、お城が在るよ」
「おっきいねぇ、山みたい」
視界に入ったのはエディンバラ城だ
「今日はあのお城まで行くんだよ」
「ええ!道判んないよ~」
気が進まないと言うよりは知らない遠いところへ行くのが怖いみたい、そういうことなら…
「お任せ下さいお坊ちゃま!道案内はお手のものでございます」
「ほんとにぃ?」
そもそも人が居ないのだから交通事故の心配もないし精神世界なのだから現実よりも遥かに安全、強いて言えば迷子か転倒くらいだろうか
ジョージ四世橋…と言っても傍から見ると普通の道路なんだけど実は結構な高低差が有って橋の必要性が解ったりする。ここを北に向かって途中からS字に曲がるビクトリアストリートに入れば
道の左右には雑貨屋からレストランにファッション、チーズ専門店、スコティッシュ・パブ、果ては某大ヒット映画の公式ライセンスショップまでカラフルな外装のこじんまりとした個性的な店がびっしりと並ぶ
「おっ!」
「なあに?にいに」
…スイーツのお店が目に入った、目に入ったんだけど~、精神世界だし現実の誰かが困るわけじゃないと頭で解っていても博物館でもそうだったが、居ないから勝手に取って良いと思いたくない日本人です。
でもここは…
「ねえねえレテウス君ちょっと寄り道していこうか?」
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